逆流性食道炎の人は、横隔膜がかたくなっていて、あまり動かないことが多いものです。そして、意外に思われるかもしれませんが、横隔膜はひじの関節周辺の筋肉とつながっています。ひじの詰まりを緩めると、ひじとつながっている横隔膜も連動してやわらかく、よく動くようになり、逆流性食道炎の症状の改善につながる、というわけです。【解説】竹内岳登(はりきゅうルーム岳代表・鍼灸師)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

竹内岳登(たけうち・がくと)

1988年、東京都生まれ。2011年、日本工学院八王子専門学校鍼灸科卒業。デイサービスや薬局、鍼灸院などに勤めた後、2017年にはりきゅうルーム岳を開院。活法研究会(現整動協会)の整動鍼セミナー初代講師にも就任し、14 〜17年には北海道から鹿児島まで延べ600人以上の鍼灸師に鍼灸の技術を指導。現在は後進の育成に励んでおり、培ってきた経験や講師時代に身につけた力で指導に当たっている。

即効性が非常に高い!すぐに効果を実感できる

逆流性食道炎には横隔膜が深くかかわっていることは、広く知られているかと思います。一方で、「ひじ」とも関連があることをご存じでしょうか。

横隔膜は、呼吸するときに動くドーム状の筋肉です。この筋肉がやわらかくてよく動いている人は、胃の活動も活発です。

逆流性食道炎の人は、横隔膜がかたくなっていて、あまり動かないことが多いものです。それに伴い、胃の働きが低下したり、胃酸が逆流しやすくなったりします。

意外に思われるかもしれませんが、横隔膜はひじの関節周辺の筋肉とつながっています。横隔膜があまり動いていない人のひじは、関節を形成する骨と骨の間がギュッと詰まっていて、ゆとりがない状態です。

ひじの詰まりを緩めると、ひじとつながっている横隔膜も連動してやわらかくなり、よく動くようになります。そして、逆流性食道炎の症状の改善につながる、というわけです。

そこで私は、ひじの詰まりを緩める「腕振り下ろし」を逆流性食道炎の人にお勧めしています。やり方は下項をご参照ください。とてもシンプルな方法で、いつでも簡単にできます。

腕振り下ろしを行うと、腕を振り下ろしたときにひじの関節がぐっと広がります。こうしてひじの詰まりを緩めることで、横隔膜がよく動くようになり、逆流性食道炎の症状も改善していくことでしょう。

腕振り下ろしは、私が長く研究している、日本最古の整体法である「活法(かっぽう)」の技をもとに考案しました。活法はもともと戦場で負傷した兵士をその場で治療して、またすぐに戦えるようにするための整体法です。

ですから、腕振り下ろしも即効性が非常に高いのが特長です。胃もたれやむかつき、胸やけ、胃がスッキリしない、胃酸が逆流してくる、といった症状に、すぐに効果を実感できるでしょう。

残念ながら、胃の痛みに対しては「即効性は」期待できません。ただし、継続して行うことで、しだいに胃の痛みが現れなくなるでしょう。毎食前に実践すれば、1ヵ月ほどで改善が期待できます。

鍼治療と併行して腕振り下ろしを行った患者さんのなかには、1週間ほどで症状が消失した人もいます。

腕振り下ろしのやり方

※ 立って行う。手が物にぶつからないように、周囲に気をつけて広い場所で行う。
※ たまに発症する人は、症状が現れたときに行う。よく症状が現れる人や予防したい人、胃痛があ
る人は、毎食前に1セット(1日3セット)行う。
※ うまくできると、ひじの関節がぐっと開く感覚がある。

両腕を自然に下ろしてまっすぐ立つ。右の手のひらを正面に向けて、右手の指先が右肩に着くくらいまでひじを自然に曲げる。ひじは高く上げたり横に広げたりしない。
※ 左手の向きはどちらでもよい。

画像1: 腕振り下ろしのやり方

肩の力を抜いて、手のひらが正面を向くように、右の前腕を勢いよく真下へ振り下ろす。ひじの位置をなるべくずらさない。①~②を3回くり返す。

画像2: 腕振り下ろしのやり方

右の手の甲を正面に向けて両腕を下ろした状態から、前腕だけひねるようにして右ひじを曲げる。① と同様に指先が右肩に着くくらいまで自然に曲げる。

画像3: 腕振り下ろしのやり方

肩の力を抜いて、手の甲が正面を向くように、右の前腕を勢いよく真下へ振り下ろす。ひじの位置をなるべくずらさない。③~④を3回くり返す。

画像4: 腕振り下ろしのやり方

左腕で①~④を行う。

画像5: 腕振り下ろしのやり方

ひじを反対側の手で押さえながら行ってもよい

画像6: 腕振り下ろしのやり方

逆流性食道炎がのどの痛みを招くことは多い

当院は耳鼻科専門鍼灸院ですので、のどの痛みに悩んで来院される人が多くいます。痛みの原因が別の場所にあるというのはよくあることです。そこで、施術前には全身の状態や不調について問診します。

「頻繁にのどが痛くなる」「のどがヒリヒリする」と訴える患者さんの話をよく聞くと、胃や横隔膜と関連する不調を抱えている人がいます。このような人は逆流性食道炎の疑いがあります。のどの痛みや上咽頭炎は逆流性食道炎が原因だった、ということは多いものです。

こうした患者さんや、逆流性食道炎の悩みを打ち明けられた患者さんに、私は腕振り下ろしをお伝えしています。その代表的な症例をご紹介しましょう。

Aさん(50代・女性)は、逆流性食道炎の薬を服用していたものの、いっこうによくならずあきらめていました。そこで、毎食前に腕振り下ろしを行うようにアドバイスしました。

その後、のどに何かこみ上がるような感じがするときや、胃がむかついて吐き気がしたときに腕振り下ろしを実践したら、すぐに症状がスーッと引いたという喜びの報告がありました。

Bさん(70代・女性)は、若いころから食後に気持ち悪くなっていたそうです。実際に触診すると、横隔膜がパンパンに張ってかたくなっていました。

そこで毎食前に腕振り下ろしを続けるようにお伝えしたところ、症状が解消するとともに食欲が増え、体重が増加して元気になりました。歩くのもおぼつかないほどでしたが、「一人で通院できる」といえるほど回復したのです。

このほかにも、のどの詰まりや食後の吐き気などの症状があるのに逆流性食道炎の自覚がない人が、腕振り下ろしで症状が改善したといった例が、たくさんあります。

腕振り下ろしは、長い間薬を飲んでいるのに、逆流性食道炎がなかなかよくならない、というかたに最適の体操です。ぜひ毎日の習慣にしてください。

画像: この記事は『壮快』2022年11月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年11月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

This article is a sponsored article by
''.