解説者のプロフィール

野口歩(のぐち・あゆむ)
鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師。日本体育協会公認アスレティックトレーナー。ミセスグローバルアース東京2022大会ビューティトレーニング講師。人生100時代を自分の脚で歩き、笑顔で過ごすために活動中。姿勢矯正、美容鍼・小顔矯正の施術経験を、延べ3万件以上持つ。
姿勢の悪さが首のシワの原因になる!
最近私の整体院では、「首のシワ」についての相談が増えています。皆さん「目立つ場所だから気になる」とおっしゃいます。
首のシワについては、もともと中高年のかたから、よく相談を受けていました。ところが最近は、若いかたからの訴えも増えているのです。これには、スマホやパソコンを長時間使う、近年のライフスタイルが関連していると考えられます。
もちろん、シワは加齢によってできやすくなります。それに加えて、シワを作る原因になるのが、「姿勢の悪さ」です。
多くのかたは、スマホやパソコンを使うとき、背中が丸くネコ背になり、頭が前に出て、首も前方に突き出ます。姿勢がとても悪くなるのです。
長時間この姿勢を取ると、首に大きな負担がかかります。私たちの頭部の重さは、4~6kgもあります。この重たい頭を支えるために、背骨はS字状にカーブを描き、頭が背骨の真上にきたとき、その重量をうまく分散できる構造になっています。
ところがネコ背になり、首が前に突き出されると、背骨の上にまっすぐ重量がかからず、その重さを分散させることができません。前に突き出された首に頭の重量がまともにかかってしまうため、首の筋肉が強く緊張するのです。
この影響は、さまざまなところに及びます。首が前方に突き出た姿勢が長く続くと、首の本来のカーブが消え、ストレートネックになります。首や肩の筋肉はひどくこわばって、痛みやコリが生じます。ネコ背は、腰にも負担をかけるので、腰痛に悩まされる人も出てきます。
こうした悪影響の1つとして、首のシワができやすくなります。首の筋肉がこわばるということは、筋肉にギュッと力が入り、絞られているような状態です。筋肉が絞られると、その筋肉の表層を覆っている皮膚も寄せられて、シワができてしまいます。
パソコンやスマホの使用中に、悪い姿勢を取っている時間が長くなればなるほど、寄せられたシワが固まって形状記憶されやすくなり、首を伸ばしたときにも、シワになって残ってしまうのです。
首の筋肉をほぐし緩める2つのセルフケア
では、シワができるのを防いだり、今あるシワを改善したりするためには、どうしたらいいでしょうか。
重要なのは、首のこわばった筋肉の緊張を解き、緩めることです。これにより、姿勢が改善でき、シワを作る根本原因の1つを取り除けます。
そこで私は、首の筋肉のなかでも重要な役割を果たす胸鎖乳突筋と、広頚筋をほぐすセルフケアを、患者さんに勧めています。それぞれ詳しく説明しましょう。

❶胸鎖乳突筋ほぐし
鎖乳突筋は、後頭部から鎖骨にかけてつながっている太い筋肉です。首を支えるために重要な役割を果たしています。
前かがみの姿勢になると、頭を支えるため、この筋肉が強く緊張します。ネコ背やストレートネックを解消するためにも、まず、この筋肉のこわばりを解きましょう。
やり方は、下項のとおりです。強く刺激すると痛みがあるので、やさしく押すとよいでしょう。
❷広頚筋ストレッチ
頚筋は、首の前面を幅広く覆う筋肉です。シワができやすい場所ですので、この筋肉の緊張をストレッチでほぐし、柔軟性を取り戻してあげることが、シワの解消につながります。
広頚筋がきちんと機能するようになると、ほおがリフトアップされ、ほおのたるみや二重あごの改善効果も期待できます。(やり方は下項)
これらのセルフケアは、2種類をセットにして、朝昼晩の1日3回行ってください。
朝はむくみやすいので、むくみ取りの効果も兼ねて行います。午前の終わりには、パソコン作業などでかたまった首をほぐすために。そして夜は入浴後リラックスして、1日の緊張をほぐすために行うことをお勧めします。
なお、ストレッチ中は、息を止めないようにしましょう。息を止めると、交感神経が優位となり、筋肉が緊張してしまうからです。
胸鎖乳突筋ほぐしのやり方
※「広頚筋ストレッチ」とセットにして、1日3回(朝、昼、晩)行う。

顔を軽く右に向け、胸鎖乳突筋を出す。耳のすぐ下から鎖骨まで、指で少しずつつまんでほぐす。反対側も同様に行う。1ヵ所につき5秒程度を目安にする。

広頚筋ストレッチのやり方
※❶、❷のマッサージの目的は、広頚筋のスタート地点とゴール地点を緩めること。十分緩んだ状態で❸のストレッチを行うことで、効果が高まる。
※「胸鎖乳突筋ほぐし」とセットにして、1日3回(朝、昼、晩)行う。
❶鎖骨の下のマッサージ

右手の人指し指と中指の2本で、右の鎖骨の始まり(胸の中心)の下部を強く押して、左右に揺らすようにマッサージをする。場所を少しずらしながら、鎖骨の終わり(腕のつけ根)まで行う。左側の鎖骨も左手の指で同様に行う。
❷あご下のマッサージ

両手で軽く握りこぶしを作り、親指を立ててあごの裏側に当て、強く押してマッサージする。両手の親指をそれぞれ左右に少しずつずらしながら、輪郭に沿って耳の下までマッサージする。
❸広頚筋を伸ばす

左手の人指し指と中指、薬指の3本を左側の鎖骨にかけ、下にグッと引っ張る。右ひじを天井に向け右手を顔の前に持ってくる。右手で左のあごのやや上をひっぱる。この状態で30秒キープする。反対側も同様に行う。

この記事は『壮快』2022年11月号に掲載されています。
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