解説者のプロフィール

平澤芳恵(ひらさわ・よしえ)
東京労災病院治療就労両立支援センター管理栄養士。治療と仕事の両立支援として、同センターで食事のとり方などの面から健康を支援。著書に、『カラダにやさしいコンビニごはん100』(小学館)がある。また、今年9月よりセブンイレブンのお届けサービス『セブンミール』にて、健康に配慮した日替りおかずセットの開発にも携わるなど、多方面に活動している。
コンビニの便利さは高齢者こそ享受できる
私は、東京労災病院治療就労両立支援センターの予防医療部において、管理栄養士として、さまざまな職種の人たちに対する健康診断や栄養指導を行ってきました。
昨今、加齢や生活環境の影響を受けて、高齢者の食事内容に問題が生じているケースが非常に多く見受けられます。
そもそも年を取ると、食欲が落ちてきます。日常の活動量も少なくなりますから、当然おなかが空きません。若いころのようにたくさん食べられなくなります。摂取量が少ないだけに、食が偏ると、その影響が如実に現れてしまうのです。
独り暮らしの場合、一人で簡単に作って食べられるものとなると、食事内容が限られてきます。老夫婦お二人の場合にしても、この問題はほとんど変わらないでしょう。たくさん食材を買っても食べ切れませんし、使い切れずに捨てるのももったいないということで、料理がめんどうになってしまうのです。
結果として、食事内容が偏ったものになりがちです。最も多いパターンは炭水化物中心。ご飯を食べればまだいいほうで、菓子パンやカステラを食べて、食事が終了というかたも少なからずいらっしゃるのです。
このような食事を続ければ、体を支えるのに必要なたんぱく質やビタミン、ミネラルも不足します。そして、体が低栄養状態に陥り、それが体力低下や心身の機能低下、老化の進行へとつながっていくことが危惧されます。
こうした事態を回避するために、うまく活用していただきたいのが、「コンビニ食」です。
近年、コンビニ食は健康志向の高まりを受けて、品ぞろえが変わりつつあります。一人用の食材やレシピがそろってきたので、少ない分量の物を自分で選ぶことができるのです。
また、特定の栄養素を強化したレシピも出ています。それにそもそもコンビニは、「近くにあり、購入しやすい」ので、便利なことはいうまでもありません。

食べ切れる食材を上手に利用しよう
多品目をとれるメニューもコンビニには多くある
では、コンビニ食を活用する際のポイントをいくつか挙げておきましょう。
①たんぱく質をしっかりとる
糖質中心の食事になると、不足しがちなのがたんぱく質です。たんぱく質は筋肉を作るのに欠かせない栄養素なので、意識的に摂取していく必要があります。
たんぱく質摂取には、不足しがちな魚がとれる缶詰も便利ですが、お勧めなのが、チルドタイプの魚の切り身です。サケやサバなどいろいろな種類があり、一人では料理しにくい魚料理を、余らない分量で食べられるので重宝します。
ツナのスパゲティや、そぼろ弁当など、たんぱく質が摂取しやすいメニューもありますので、それらも活用するとよいでしょう。
1食の食事量が減っている場合、4~5回と食事の回数を増やしたり、足りない分をチーズや乳製品で意識的にとったりして補っていくと、なおよいでしょう。
②塩分に気をつける
高齢になると、高血圧や糖尿病をお持ちのかたが多くいますが、こうしたかたは、塩分のとり過ぎを避けることが大原則です。とはいえ、各料理、各食材の塩分量をいちいち計算しながら食べ続けられるかたは少ないでしょう。
そこで、次善の策として、「お弁当や揚げ物、サラダについているソース、ドレッシングなどは使わない」「麺類のスープはできるだけ飲まずに残す」といった点を心がけておくといいでしょう。
また、カリウムなどのミネラル豊富な野菜や海藻類、食物繊維たっぷりの大麦やもち麦なども、意識してとるようにするといいでしょう。
③多品目を意識する
高齢者は、食が細くなっているので、たくさんは食べられません。そこで、1品で多くの品目が食べられるメニューを選ぶというのも、有効な方法です。
例えば、スモークサーモンのパスタサラダなら、たんぱく質+糖質+野菜がとれますし、ビビンバや中華丼なども野菜摂取に役立つでしょう。
ゴーヤチャンプルー、ニラレバといった総菜類も多品目の具材がとれるため、お勧めです。それでも野菜が足りない感じがあるなら、野菜スティックなども合わせてとるといいでしょう。
コンビニには文字どおり、多彩なメニューがそろっていますので、チョイスを楽しみながら、できるだけ体にいいものを選んでいきましょう。

この記事は『壮快』2022年11月号に掲載されています。
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