解説者のプロフィール

平松育子(ひらまつ・いくこ)
ふくふく動物病院院長。京都府生まれ。山口大学農学部獣医学科卒業。複数の動物病院の勤務を経て、2006年に山口市にてふくふく動物病院を開院。獣医がん学会、獣医皮膚科学会所属。飼い主とペットがいつまでも笑顔で過ごせることを目指し、最良の統合医療の提供するかたわら、専門学校の講師やメディアでの執筆や監修など幅広く活躍している。
外飼いの犬は特に注意!日陰を作って対策を
ペットを飼っていると、夏の暑さが心配というかたも多いことでしょう。
よく受けるのが、「留守中もエアコンはつけっぱなしにしたほうがよいのでしょうか?」という質問です。
室内犬の場合は、必ずエアコンをつけてください。25〜26度が犬にとって適温です。犬は人間よりも体温が高く、そして暑さに弱い動物です。27度以上のところにずっといると、確実に夏バテを起こします。
暑さ対策に扇風機を使うかたもいらっしゃいます。扇風機は体にかいた汗を蒸発させて、その気化熱で体温を下げる仕組みです。ですから、汗をかかない犬や猫には、残念ながら効果がありません。
ふだん外飼いをしていても、暑い季節は、可能な限り涼しい屋内に入れてあげてください。
「自分で穴を掘って、冷たい土におなかをつけているから大丈夫」というかたもいらっしゃいますが、上からは強い日ざしが当たっています。涼しいところにつないでいると思っていても、日中、留守にしている間は日が照りつけているかもしれません。犬のいる場所にどのくらい日が当たるか、一度確認してみることをお勧めします。
屋内に入れられない事情があるかたもいらっしゃると思います。その場合は、サンシェードなどで日陰を作ってあげると、いくらかは違うと思います。
また外飼いの場合は、水を多めにあげてください。日が当たってお湯になってしまうこともあるので、何ヵ所かに分けておいたり、小まめに替えてあげたりしてください。
一方、猫はエジプトが起源なだけあって、比較的暑さに強い動物です。犬と違って、暑がるということがあまりありません。
また、部屋のドアを開くようにしておけば、涼しいところを探して移動するので、暑さに対してはそれほど神経質にならなくても大丈夫でしょう。とはいえ、涼しい場所がないというのは問題です。家全体が蒸し風呂状態というのは避けましょう。
暑さ対策としてサマーカットもありますが、デメリットがあることも覚えておきましょう。
犬の皮膚は薄いので、地肌が見えるほどカットしてしまうと、直射日光が皮膚に悪影響を与えますし、寄生虫がつきやすくなります。
例えばポメラニアンなどは、皮膚が見えるほどカットしてしまうと、毛が生えてこなくなる子もいます。治しようがないので、サマーカットはほどほどにしておきましょう。
もう一点注意してほしいのは、バリカンの刃による低温ヤケドです。使っているうちに刃が熱くなるので、ぬれたタオルでときどき冷やしながらカットしてください。
夏は寄生虫にも要注意正しい予防法を取ろう

散歩も暑さ対策が必要です。朝なら6時台以前、夕方なら日が沈んで暗くなってから行くと、体への負担が少なくてすみます。
保冷剤を使うという方法もあります。首回りには太い血管が通っているので、ここを冷やすと体温が下がります。ペット用の服やハーネス(胴輪)には、保冷剤を入れるポケットがついている物もあります。ただし、おなかを冷やし過ぎると下痢をします。また、誤飲することもあるので、散歩が終わったら保冷剤ははずしてください。
夏の散歩では、茂みや草むらに、思いもよらない虫や動物が潜んでいることがあります。生い茂った草むらに鼻を突っ込んで、ハチやムカデに刺されて治療を受けに来る子は少なくありません。なかには、ヘビに咬まれたという子もいました。
ノミやダニも感染ピークは夏ですが、冬も暖房で室内が暖かい日本では、通年で予防しなければならない害虫です。
また、動物の体から跳んで、家の中で繁殖して家中がノミだらけになった、という話もあります。
ペットショップなどでもノミ・ダニ除けの薬は買えますが、なかには効果が1ヵ月と書いてあっても、実際にはそれ以下の物があります。また、ノミ・ダニ除けの首輪は、首回りしか効果がありません。「薬を使っていたのに予防できなかった」ということもあるので、できれば動物病院で購入されることをお勧めします。
さらに、蚊の活動する季節に気をつけなければいけないのが「フィラリア症」です。
フィラリア症は蚊に刺されて感染する病気です。フィラリアという寄生虫が、犬の肺動脈や心臓に寄生することによって、元気がなくなり、呼吸困難やセキ、食欲不振などさまざまな症状が出ます。また、心臓内の成虫が増えると死に至ります。
フィラリアは薬で予防できます。最近ではインターネットなどでも購入できますが、すでに感染してしまっている状態で薬を与えると、弱ったフィラリアが細い血管で詰まり、ショック状態を起こします。病院で検査したうえで、処方してもらいましょう。

この記事は『壮快』2022年10月号に掲載されています。
www.makino-g.jp