犬は雑食性で、なかでも日本原産の犬種はお米にも慣れ親しんでいますが、猫は穀類が苦手です。みそ汁をかけた「猫まんま」は猫にはありがたくないごはんなのです。乳製品は与えても問題ありませんが、犬や猫は乳糖を分解するのが苦手です。与える場合は、少量に留めましょう。【解説】林美彩(chicoどうぶつ診療所代表・獣医師)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

林美彩(はやし・みさえ)

獣医師。動物病院の娘として生まれ、幼いころから動物と過ごす。大学卒業後は代替療法・西洋医学両方の動物病院や、サプリメント会社での勤務を経て、chicoどうぶつ診療所を開業。毎日食べる物で体がつくられている、日々の過ごす環境や過ごし方が体にも影響を与えているという考えのもと、多くのペットやその飼い主の心のケアに努める。著書に、『獣医師が考案した長生き猫ごはん』(世界文化社)など。

[別記事:手作りごはんは災害時やアレルギー対策に有用!人間の食事を取り分けるのが◎→

犬猫に食材を与える際のポイントを知っておこう

人間に推奨できる食べ物は動物にもよい物が多くありますが、もちろん例外もあります。

まず、ほぼ世界中で人間の主食となっている穀類は、動物のごはんにもよく使われる食材です。しかし別記事でも述べたように、猫は穀類が苦手です。

猫のごはんといえば「猫まんま」(みそ汁をかけた米飯)と思うかたもいらっしゃるかと思いますが、実は猫にはありがたくないごはんなのです。

一方、オオカミを祖先とする犬は雑食性で、植物も肉も食べられます。なかでも日本原産の犬種は、お米を食べて育ってきたという歴史があるので、お米にも慣れ親しんでいます。

手作りごはんも犬に限っていえば、忙しいときには「猫まんま」でもかまわないと思います。その場合は塩分を調整するために、みその量をふだんの半分にしてください。

また最近では、「グルテンフリー」と書かれているペットフードも増えています。グルテンフリーとは、グルテンを含まないという意味です。

グルテンは、小麦や大麦、ライ麦などに含まれるたんぱく質で、腸の粘膜を傷つけたり、アレルギーを起こしたりする原因となることがわかっています。

小麦を使っているペット用のおやつもありますが、毎日ではなく、たまにあげるのであれば、「食べる楽しみ」としてよいのではないでしょうか。

また穀類に分類される豆には、レクチンというたんぱく質が多く含まれています。レクチンの作用で、心臓の働きに重要なタウリンが不足するという報告もあるので、手作りごはんに豆を多く使ったり、豆が多く含まれたりするペットフードは避けたほうがよいでしょう。

また、猫は体内でタウリンを作ることができないので、タウリンを多く含む加熱したアサリやカキなどの二枚貝を細かく刻んでごはんに加えたり、サプリメントを使ったりして補給しましょう。

一方、犬は体内でタウリンを作れますが、加齢によってその能力は低下していきます。特に心臓疾患にかかりやすいキャバリアやチワワ、大型犬は不足しないように注意しましょう。

乳製品は与えても問題ありませんが、犬や猫は乳糖を分解するのが苦手です。与える場合は、少量に留めましょう。

エゴマ油やアマニ油などに多く含まれるαリノレン酸は、体内でEPAやDHAといった「オメガ3脂肪酸」に変化して、血流改善やコレステロール値の低下、アレルギー抑制、認知症の予防などに役立ちます。

こうした働きは、犬や猫にも有効ですが、犬と猫はαリノレン酸をオメガ3に変換する酵素をほとんど持っていません。ですから、オメガ3の働きを期待するのであれば、油ではなく、青魚やサプリメントでとることをお勧めします。

旬の野菜や魚を与えるのは犬猫にとっても有用

どんなにいい食材を使ったごはんでも、食べてくれないという悩みを多くの人が抱えています。

動物の場合、嗅覚で食欲が湧くので、人肌くらいの温かさにすると、よく食べてくれることがあります。ドライフードの場合でも、器を電子レンジで軽く温めるといった方法は有効です。

残ったごはんをいつまでも出したままにしておくと、脂肪分が酸化しますし、季節によっては腐敗することもあるので、長くても30分くらいで下げるようにしてください。ごはんを与えて留守にするときには、空調に気をつけて、悪くならないように気をつけましょう。

また、ペットフードの保存方法自体も、なるべく密封容器に入れるなどして、酸化に注意しておくことが重要です。

吐いてしまう子の場合、胃の容量が小さいことが考えられます。1回にあげる量を減らして、回数を増やすといったことをしてみましょう。それでも吐くようなら、獣医師に相談することをお勧めします。

冒頭でも述べましたが、犬や猫にとっていい食材とは、基本的に人間にとってもいい食材です。一般的に体にいいとされている食材を下にまとめているので、参考にしてください。

私たちが旬の野菜や魚をおいしいと感じるように、動物たちもおいしいと感じているはずです。また、旬の物は栄養価が高いので、養生食としても最高です。ぜひいっしょに、旬の物を召し上がってください。

食材別のポイント

発酵食品(甘酒、ヨーグルト、納豆など)
犬・猫にとっても良い。ただし通常のヨーグルトは乳糖が含まれているので、豆乳ヨーグルトがお勧め。

ハチミツ
殺菌作用があるため口腔ケアにお勧め。与え過ぎによる肥満に注意。

おから
ダイエットにお勧め。与え過ぎると胃が膨張するためリバウンドの原因になるため注意。

サバ缶・イワシ缶
塩分に気をつければ与えてOK。油もいっしょに与えて問題ない。

梅干し
少量なら与えてOK。クエン酸が疲労回復に効果的。


結石対策にお勧め。ただし犬・猫は酸味が苦手。

キノコ
便秘対策にお勧め。消化しづらいので、ミキサーを使ってペースト状にするのがよい。与え過ぎに注意。

ショウガ
犬・猫は汗をかけないので、夏は特に控えたほうが無難。

犬・猫に与えてはいけない食品

×チョコレートなどカカオが入っている物
×タマネギ・ネギ・ニラ・ラッキョウ・ニンニク
×生の甲殻類や貝類・イカ・タコ
×ブドウ・レーズン・アボカド・イチジク
×ナッツ類
×アルコール
×キシリトール
など

画像: この記事は『壮快』2022年10月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年10月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

This article is a sponsored article by
''.