犬や猫たちも、食べる物で体の状態が決まるといっても過言ではありません。市販のペットフードを選ぶ場合には、主となる原材料が動物性たんぱく質であることを必ず確認してください。「粗たんぱく質」と書いてある物もありますが、測定方法の都合の表記なので気にする必要はありません。【解説】林美彩(chicoどうぶつ診療所代表・獣医師)

解説者のプロフィール

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林美彩(はやし・みさえ)

獣医師。動物病院の娘として生まれ、幼いころから動物と過ごす。大学卒業後は代替療法・西洋医学両方の動物病院や、サプリメント会社での勤務を経て、chicoどうぶつ診療所を開業。毎日食べる物で体がつくられている、日々の過ごす環境や過ごし方が体にも影響を与えているという考えのもと、多くのペットやその飼い主の心のケアに努める。著書に、『獣医師が考案した長生き猫ごはん』(世界文化社)など。

犬や猫は自分で食べる物を選択することができない

私たちが健康を維持するために重要なことの1つが、質のよい食生活です。それは犬や猫たちも同じで、食べる物で体の状態が決まるといっても過言ではありません。

しかしペットたちは、自分で食べる物を選択できません。ですから、飼い主が何を与えるかが、とても重要です

犬は肉食寄りの雑食性動物、猫は完全な肉食性動物です。かといって、肉以外を与えてはいけないわけではありませんし、特別な物を与える必要もありません。

犬や猫にとっても、たいせつなのは人間と同じく「たんぱく質」「炭水化物(糖質・食物繊維)」「ビタミン」「脂質」「ミネラル」の5大栄養素だからです。

5大栄養素には、以下のような役割があります。

まず、たんぱく質は毛や皮膚、爪、腱、靱帯、軟骨などを作るアミノ酸を供給します。また、ホルモンや免疫物質生成の材料にもなります。

犬や猫は、植物が持つ細胞壁を分解することができないので、肉や魚で動物性たんぱく質を摂取できるように心がけましょう

植物を与える場合は、煮込んだり刻んだりしてからにすると、細胞壁が破壊されて、消化しやすくなります。

次に炭水化物ですが、この栄養素は即効性のエネルギー源です。このエネルギーが不足すると疲れやすくなります。逆にとり過ぎると、肥満を招き、さまざまな病気につながることもあります。

代表的な炭水化物というと米ですが、特に完全な肉食動物の猫にとっては、負担になります。食事全体に炭水化物が40%以上含まれると、下痢や嘔吐のほか、おなかにガスがたまってしまうこともあるので注意しましょう。

ビタミンには、水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンがあります。気をつけていただきたいのが、ビタミンAやD、E、Kの脂溶性ビタミンです。とり過ぎると体内に蓄積されて、中毒や副作用を生じることがあります。

脂質は熱源となり、体温維持に役立ちます。

ミネラルには、体調を整える役割があります。とはいえ必要量は極めて微量で、とり過ぎると害になることもあります。

犬は30%、猫は35%がたんぱく質量の目安

このように犬や猫の健康を考えた食事とは、私たち人間の食事とあまり変わりません。ですから、私たちが食べる食事を「おすそ分け」する感覚もよいと思います。

調味料を入れる前に取り分けたり、ペットが食べてはいけない食品を取り除いてあげるだけで、ペット用の「手作りごはん」になります。

市販のペットフードを選ぶ場合には、主となる原材料が動物性たんぱく質であることを必ず確認してください。なおかつ原材料名の表示欄に、「鶏肉」や「豚肉」といった、動物名がきちんと明記された物を選びましょう。

栄養成分の表示には、たんぱく質ではなく、「粗たんぱく質」と書いてある物もあります。これは、測定方法の都合で、アミノ酸やアミン類も含まれたものです。ペットフードの表記としては一般的で、そこまで「粗」の一文字を気にする必要はありません。

ドライのドッグフードなら30%以上、キャットフードなら35%以上のたんぱく質が含まれている物がお勧めです。実際は多少の水分が含まれていることも考慮して、これより数%少なくても差し支えありません。

画像: 原材料とたんぱく質量は要確認

原材料とたんぱく質量は要確認

ペットフードの安全性に不安のあるかたは、ペットフードメーカーのホームページを参考にするとよいと思います。安全性を強くうたっていたり、人間の食べられる物を使用している(ヒューマングレード)と明記していたりすれば、おおむね心配ないでしょう。それに加えて、そのペットフードに対する思い入れなどが書いてあれば、よい物だろうと推測できます。

また、私たちが毎日同じメニューの食事では飽きてくるように、ペットも同じフードばかりでは食欲が落ちる場合があります。2〜3種類のフードを、順番に与えると食に対する楽しみも増えて、よく食べてくれるようになるでしょう。この際、違うメーカーのフードを選ぶと、栄養や品質に偏りが出ることも防ぐことができます。

犬や猫も人間と同じ動物です。その立場で考えると、何をどのように与えたらいいのか、おのずとわかってくるのではないでしょうか。

画像: この記事は『壮快』2022年10月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年10月号に掲載されています。

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