解説者のプロフィール

関学(せき・まなぶ)
まみや接骨院院長。柔道整復師、柔道整復師専科教員。地球環境問題医療者会議会員。構造医学基幹技能研修会会員。2004年から08年まで中央医療学園専門学校の講師を、05年から14年まで日本医学柔整鍼灸専門学校の講師を務める。11年間の教員生活で、教え子の数は1000 人を超える。12年にまみや接骨院を開院し、現在に至る。生体潤滑理論に基づいた、患者の体に負担をかけない治療に定評がある。
骨盤のゆがみを正して予防にも治療にも役立つ
痛みの症状は、腰や股関節、ひざなど、体のさまざまな部位に現れますが、ほとんどの場合その原因は、骨格のゆがみやズレにあります。
ヒトは、重力に抗って重い頭を上にしながら、二足歩行をする生き物です。立っているときの重心は腰部の骨盤にあるのが正しい状態であり、その安定した姿勢を保てている限り、骨盤の骨格にゆがみは生じません。
けれども、誤った姿勢を長く続けるうちに、骨盤にゆがみが生じます。骨盤は人体の骨格において要であり、ここがゆがむと、全身の骨や関節にズレが波及します。例えばそれが、上に向かえば頭痛や肩こりに、下に向かえば股関節痛やひざ痛を発症するというわけです。
脊柱管狭窄症の発症原因の一つは、背骨の椎骨周辺の、骨格のゆがみやズレです。
本来であれば、重心を正しい位置にキープして歩くだけで、それが予防法にも、痛みを緩和する治療法にもなります。
けれども、姿勢や歩き方というのは長年の習慣であり、これを変えるのはなかなか難しい。根気と時間が必要です。
そこで私が、脊柱管狭窄症をはじめとした、痛みの症状を抱える多くの患者さんに勧めているのが、親指を立てた「いいね!」のポーズをして行う「骨盤スクワット」です(やり方は下項参照)。
骨盤のゆがみを正す効果があるので、脊柱管狭窄症のみならず、腰痛や股関節痛、ひざ痛にも有効です。
筋力のない人でもバランスを取りやすい!
私は生体潤滑理論を学び、その考え方を患者さんの治療に生かしてきました。生体潤滑理論では、重力の影響を考慮した体の使い方を実践的に学習し、全身のバランスを整えます。
痛みのある部位の関節では、たいてい骨と骨の間が狭くなりぶつかったり、こすれたりしています。
骨格を正しい位置に戻したうえで、圧をかけながら緩やかに体を動かすと、関節液(関節の内部にある粘り気のある液体)が、潤滑油としてきちんと働くようになります。
スクワットは足腰の筋肉を鍛えるのに最適なので、よい姿勢をサポートする筋力がつき、血流の促進も手伝って、症状が改善に向かうというわけです。
このポーズを取りながらスクワットを行う理由は、2つあります。
1つは、指先に送られた血液が、親指を立てることで、心臓へ戻りやすくなると期待できること。もう1つは、腕を前方に伸ばすことで、正しいフォームでスクワットを行いやすくなることです。
スクワットは比較的よく知られている筋トレですが、正しいフォームで行わないと、かえって腰やひざを傷めるおそれがあります。
正しいフォームのなかでも、ポイントとなるのが「ひざをつま先より前に出さない」というところ。けれどもこの姿勢は重心が後方に偏るため、筋力のない人が行うと、誤った形で覚えてしまったり、尻もちをついてケガをしてしまったりする可能性も否定できません。
そんな不安定な姿勢でも、あら不思議。親指を立てて両腕を前に伸ばすと、バランスが取りやすくなります。筋力のない人でも正しいフォームを身につけることができ、ひざや腰に負担をかけずに骨盤のゆがみを整えることができます。
足腰の痛みやしびれに悩むかたは、骨盤スクワットを、ぜひ習慣にしてみてください。
骨盤スクワットのやり方
※1日に最低1セット行う。いつ、何セット行ってもよい。
❶つま先をまっすぐ正面に向けて、肩幅程度に足を広げる。両手の親指を立てて、両腕を前へ肩の高さでまっすぐ伸ばす。

❷口で息を吐きながら、なるべくゆっくり腰を下ろす。両腕は伸ばしたまま斜め下に傾けてバランスを取る。腰を下ろしきったら、鼻から大きく息を吸う。
▶︎ひざがつま先より前に出ないようにする
▶︎ひざの中心が、足の第2趾(人差し指)の外側に来るようにする(ひざを内側に入れない)。

❸口で息を吐きながら、なるべくゆっくり腰を上げる。両腕は伸ばしたまま傾きを調整しながらバランスを取る。腰を上げきったら、鼻から大きく息を吸う。

❹②、③を5回くり返し、1セットとする。

この記事は『壮快』2022年10月号に掲載されています。
www.makino-g.jp