毎日長時間座り続けたり、運動不足が続いたりすると、大腰筋が衰えてかたくこわばり、短くなってきます。骨盤が前傾し、股関節の可動域も小さくなることから、脊柱管狭窄症をはじめ、腰痛や股関節痛、座骨神経痛、ひざ痛などを引き起こす要因となるのです。そこで私は、大腰筋を強化する「足振り体操」を勧めています。【解説】内田泰文(豊中愛整骨院院長)

解説者のプロフィール

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内田泰文(うちだ・やすふみ)

2010年、豊中愛整骨院を開業。柔道整復師。筋骨格系・内臓に関する豊富な知識を生かし症状の原因を分析、的確なアプローチに定評がある。プライマリーウォーキング®やオーソモレキュラーを取り入れたカスタムメイドの治療によりあらゆる不調に対応。一過性の改善ではなく、根本からの治癒を実現する。わかりやすい説明と親しみやすい人柄も人気を博し、他院で改善が見られない多くの患者が県外からも集まっている。

大腰筋の衰えは多くの症状を引き起こす!

脊柱管狭窄症は、背骨の中の、神経が通っている脊柱管という管が狭くなる病気です。原因は、加齢や、慢性化した悪い姿勢にあるとされます。

この疾患に悩むかたは、私の患者さんにも、おおぜいいらっしゃいます。お話を伺うと、医師から「すぐに手術をしたほうがいい」と勧められたケースも少なくありません。

私は長年にわたり、脊柱管狭窄症の治療に当たるうち、患者さんに共通する、あることに気づきました。それは、背中から腰周りの筋肉が緊張して、かたくなっていることです。

腰痛や股関節痛、座骨神経痛、ひざ痛などを患っている人にも、ある程度、同じ傾向が見られます。

そこで私は、脊柱管狭窄症をはじめ、上に挙げたような症状のあるかたに、大腰筋を強化する「足振り体操」を勧めています(やり方は下項を参照)。

大腰筋は、体幹を保持するインナーマッスル(深部の筋肉)の1つです。上半身と下半身をつなぎ、姿勢を保つのに大きな役割を果たしています。

同じ姿勢のまま、毎日長時間座り続けたり、運動不足が続いたりすると、大腰筋が衰えて、かたくこわばり、短くなってきます。これにより、どういったことが起こるでしょう。

短くなった大腰筋に引っ張られるようにして、骨盤が倒れてしまい、姿勢が悪くなります。すると、背中や腰に大きな負担がかかり、腰痛が起こりやすくなります。

また、骨盤が前傾すると下腹が前に出て、体重が前側にかかりやすくなり、ひざ痛の原因となります。

大腰筋が短くなると、股関節の可動域も小さくなることから股関節痛の一因になります。

つまり、大腰筋の衰えは、腰から下に現れる多くの症状を引き起こす要因となるのです。ここを強化することで、よい姿勢を維持できるようになり、脊柱管狭窄症をはじめとした症状を予防・改善できます。

むくみや冷え、O脚、下腹ポッコリにも有効

実際に足振り体操を行うに当たり、注意すべきポイントがいくつかあります。

まず、立った状態で、足の親指のつけ根(母趾球)に、しっかりと体重を乗せること。かかと重心になっていると、大腰筋に力が入りません。

次に、体の力を抜き、リラックスして行うことです。足に力を入れて振り回すのはNG。足の重さは、体重の約15%もあります。この重さを利用し、かかとを後ろに上げてから、ブンッと振り下ろすだけで、自然と負荷がかかります。

さらに、こわばって短く縮こまった大腰筋は、刺激が入りにくく、ほぐれにくくなっています。大腰筋を刺激するため、腰を使って足を振るようにイメージしてください。

これらの注意点を押さえつつ足振り体操を行うことで、大腰筋を効果的に鍛えられます。

高齢のかたは、片足で立つとバランスを取るのが難しい場合もあるでしょう。転倒防止のため、片手を壁やイスの背について行うと安全です。

足振り体操は腰痛があるときでも、激痛でないかぎり、行ってかまいません。脱力して足を振るだけなので、力を加減すれば、症状を悪化させることはないでしょう。

ただし、人工股関節のかたや、急性期の変形性股関節症で痛みが出ているときは控えてください

腰から下への血流が大幅に改善することで、脊柱管狭窄症の改善にも役立ちます。足のむくみや冷え症にも、効果的です。体幹が鍛えられてくると姿勢がよくなるので、転倒しなくなったり、O脚が改善したり、下腹ポッコリが解消したりといった効果も期待できます。

症状や程度にもよりますが、2週間ほど実践すると、なんらかの変化を実感できるはずです。気負わずに、まずは始めてみることをお勧めします。

足振り体操のやり方

人工股関節のかたや、急性期の変形性股関節症で痛みが出ているときは控えてください。

※転倒に注意する。壁やイスなど、何かにつかまって行ってもよい。
※母趾球に体重を乗せることを意識する。
※①~②を1セットとし、1日3セット、朝昼晩に分けて行う。

画像: 足振り体操のやり方

左足のかかとが左手の指先に触れるくらいまで、後ろ側に上げる。
足の重さを利用して、自然に前方へ振る。10回振ったら、右足も同様に行う。

画像: 壁やイスなど、何かにつかまって行ってもよい。

壁やイスなど、何かにつかまって行ってもよい。

画像: この記事は『壮快』2022年10月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年10月号に掲載されています。

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