健康維持のためにも、脊柱管狭窄症を改善するためにも、特に足の筋肉を鍛えることを心がけるうち、衰えていた脚力が徐々に強化され、回復してきたようです。足のしびれはまだ残っていますが、腰の痛みはほとんど消えました。なにより、この年齢になっても筋力をつけることができたのがうれしく、大きな自信になりました。【体験談】鳥居ユキ(ファッションデザイナー)

解説者のプロフィール

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鳥居ユキ(とりい・ゆき)

1943年、祖母のミツ・母の君子と3代にわたるデザイナーの家に生まれる。文化学院卒業後、62年にコレクションデビュー、ファッションブランド「YUKI TORII」のデザイナーとして活動。60年代半ばより、テレビや舞台において歌手や俳優の衣装を担当する。75年にフランス・パリで初コレクションを開催。現在まで途絶えることなく新作を発表し、21年には通算120回目のコレクション発表を行う。受賞多数。女性のリアルライフに寄り添いながら、着心地がよくシンプルでエレガントなモダンスタイルを提案している。日本を代表するファッションデザイナーの一人。

腰痛に両足のしびれ、間欠性跛行もあった

19歳のとき、母のファッションショーで初めて自分の作品を発表しました。以来60年の間、デザイナーとして走り続けてきました。

デザインという仕事は、長時間座り続けて作業することが多いため、どうしても腰に負担がかかります。けれども不思議なことに、5年ほど前に「脊柱管狭窄症」を発症するまで、腰痛に悩まされたことは、ほとんどありませんでした。

それも、最初は自覚症状がなく、なにかの折にレントゲンを撮ったところ、医師から「腰の部分で脊柱管が狭くなっている」と指摘を受けたのです。

そこで念のため、いくつかの整形外科にかかり、診てもらいました。すると、どこも診断は同じ「脊柱管狭窄症」。しかも複数の医師から、手術を勧められました。レントゲンを見た限りでは、それほど軽症というわけでもなかったようです。

医師の説明や手術を経験されたかたがたの話によると、症状がよくなることもあれば、悪化する場合もあるとのこと。そうと聞いたら、とても手術を受ける気にはなれませんでした。

けれどもそのうち、ときどき腰が痛むようになりました。さらに、長く立ったり歩いたりすると、足にしびれが出ることが日常的になりました。これは脊柱管狭窄症に特徴的な「間欠性跛行」という症状だそうです。徐々に、両足ともにしびれが現れるようになり、ひどいときには100mも歩けません。

そこで、これらの症状を少しでもよくできないかと、自分なりに調べました。定期的に通っている治療院の先生からは、脊柱管狭窄症について直接的な治療をしていただいたわけではありませんが、歩き方や座り方、姿勢などにさまざまなアドバイスをいただいたので、生活に取り入れるようにしました。

腰痛はほとんど消失!歩くスピードもアップ

私の1日は、朝の5時からスタートします。

窓を開けて部屋に風を通したら、ベランダの花々を見ながら腕回しなどの体操をします。それから、ヨガや呼吸法、体幹を鍛えるストレッチを40分。ここまでは、もう長いこと、毎日の習慣になっています。

それに加えて最近、フィットネスバイクに乗ることも取り入れました。室内に置いているマシンに乗って、自転車こぎ運動をするのです。健康維持のためにも、脊柱管狭窄症を改善するためにも、特に足の筋肉を鍛えることが重要だと気づいたことから、新たに始めました。

自宅は6階ですが、朝はエレベーターを使わず、階段を下りてオフィスへ出勤。無理のない範囲で歩くよう、1日4000歩を目標にしました。

こうして足を鍛えることを心がけるうち、衰えていた脚力が徐々に強化され、回復してきたようです。足のしびれはまだ残っていますが、腰の痛みはほとんど消えました。

思えば、以前は歩き方もヨタヨタとしていました。それが今は、しっかりと足を踏み出し、指で地面をつかむようにして前に進むことができます。歩くスピードも、速くなりました。

自転車こぎの時間も、以前より延びています。初めのころはせいぜい10分でしたが、今では調子がよければ20分、ときには30分こぐこともあるほどです。

姿勢にも気をつけています。自宅では、鏡を見てチェック。仕事場ではスタッフが見てくれるので、そのつどアドバイスをもらいます。

食事を変えたのも、好影響だったかもしれません。もともと魚と野菜が中心で「小鳥のエサほどしか食べない」といわれるほどでした。

けれども、筋肉を維持するには、たんぱく質が足りないと気づき、今は鶏肉や豚肉を意識してとるようにしています。

なにより、この年齢になっても筋力をつけることができたのがうれしく、大きな自信になりました。同年代のかたに、「まだまだ、やればできる!」とお伝えしたいですね。

私には次のショーが待っていますから、立ち止まってはいられません。生きがいであるデザイナーの仕事を続けるために、これからも体のメンテナンスを続けていきます。

背骨の安定と血流の改善が奏効した
慶應義塾大学医学部整形外科学教室准教授 渡辺航太

狭窄している神経の通りのみならず、その周辺の血流が悪いこと、そして背骨が不安定だったことも症状悪化の一因だったのでしょう。鳥居さんの場合、運動療法に励まれたことで、体幹の筋力がつき、血流も改善したことが奏効したと思われます。

筋トレのなかでも自転車こぎ運動は、前かがみの姿勢で行うため痛みやしびれを感じづらく脊柱管狭窄症の人向きです。

画像: この記事は『壮快』2022年10月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年10月号に掲載されています。

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