解説者のプロフィール

CHIHIRO(ちひろ)
美容鍼・鍼灸・オイルトリートメントサロン「CALISTA」「C by CALISTA」総院長。はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の資格を保有。セミナー講師や講演会を精力的に行うほか、著書の執筆、雑誌や書籍の監修を多数手掛ける。近著は『ココロとカラダかがやく 美人のツボ』(三才ブックス)
レンジで温めたタオルを袋に入れるだけ!
私たちの鍼灸サロンには、30代~50代の女性が多く来院されます。治療に際して、さまざまな体のお悩みを聞きますが、なかでも頭痛は、多くのかたから相談を受ける症状の1つです。
一般的に、頭痛は大きく片頭痛と緊張型頭痛、群発頭痛に分けられます。
片頭痛は、なんらかの原因で血管が拡張することによって起こる頭痛です。吐き気などを伴い、日常生活に支障が出るような強い痛みが起こることも少なくありません。
緊張型頭痛は、肩や首の筋肉が緊張し、コリが生じることによって起こる頭痛で、頭全体が締めつけられるように痛みます。
群発頭痛は男性に多く、目の奥をえぐるような痛みを伴います。激しい痛みのため、まずは病院の受診をお勧めします。
これらのなかでも、片頭痛は生理と連動して起こることも多く、多くの女性の悩みの種です。しかし、実際に私たちのサロンで片頭痛の相談を受けることは意外に少ないのです。というのも、片頭痛で苦しむかたは既に病院で治療を受けていたり、ご自身なりの対処法を考えていたりする場合が多いためです。
むしろ多いのは、緊張型頭痛の相談です。
緊張型頭痛は、片頭痛のような吐き気などは生じませんし、日常生活に大きな支障をきたすわけではありません。しかし慢性化し、毎日続くことも珍しくありません。我慢できないほどではなくても、毎日頭痛が続けば、厄介です。
そんな緊張型頭痛にお悩みのかたにお勧めして、たいへん好評を博しているセルフケアが、今回ご紹介する「タオル灸」です。
やり方は、下項をご覧ください。保存袋に温めたタオルを入れ、首もとを温めるだけ。痛みのあるときに行えば、頭痛の改善になりますし、痛みのないときに行えば、予防につがります。
真夏であっても、オフィスや電車内の冷房などで、体が冷えてしまい、それが頭痛につながっている、というかたもいます。冷えや肩のコリを感じ、頭痛が起こりそうなときは、ぜひタオル灸を試してください。
アイマスクのように目の上に乗せるのも◎
なぜ、タオル灸が緊張型頭痛の予防・改善に効果的なのでしょうか。
東洋医学の考えでは、私たちの健康は「気・血・水」という3要素が滞りなく体を巡ることで保たれています。気は一種の生命エネルギー、血は体に栄養を行き渡らせる血液など、水は生命活動を支える体液全般を指します。
東洋医学では、気や血の巡りが悪くなることで、首のコリが起こり、ひいては緊張型頭痛が引き起こされると考えます。タオル灸で首を温めると、滞っていた気や血の流れがよくなり、首のコリがほぐれていきます。それが、緊張型頭痛の予防・改善に役立つのです。
温める場所は、首そのものというより、首と背中の境の辺りです。頭を前傾させたとき出っ張る首の骨の下に、「大椎(だいつい)」というツボがあります。ここを中心に温めてください。
大椎は血行促進の特効ツボといってもよい場所で、ここを温めると、全身の血行が促されます。
カゼをひきかけたとき、頭が痛くなることがあります。大椎へのタオル灸は、こうしたカゼのひき始めの頭痛の改善にも有効です。
頻繁に緊張型頭痛が起こるかたは、就寝前や、起床時にタオル灸を行う習慣をつけるのもお勧めです。継続すれば、全身の血行がよくなり、頭痛予防に効力を発揮するでしょう。
またタオル灸は、大椎だけでなく、アイマスクのように目の上に乗せるのもお勧めです。というのも、眼精疲労が起こると、それが頭痛を引き起こす原因にもなるためです。
「目が疲れてきたな」と感じたら、パソコン作業の合い間などに、タオル灸を閉じた目の上に乗せ、しばし目を休ませましょう。それが頭痛予防にもつながります。
このセルフケアは、もっぱら緊張型頭痛に悩むかたのためのものです。片頭痛のかたは行わないでください。片頭痛は、温まり血流がよくなると、かえって症状が悪化するおそれがあります。
タオル灸のやり方
用意するもの
ハンドタオル…1枚
チャックつき保存袋(ビニール袋でもよい)…1つ

❶タオルを水でぬらし、軽くしぼる。
❷①のタオルを電子レンジ(500w)で50秒~1分加熱する。
❸②を袋に入れてチャックを閉じ、首のつけ根(大椎)にのせて温める。

※ビニール袋を使う場合は、②のタオルを入れ、口を縛り密閉する。
※1回3分ほどが目安。1日何度行ってもよい。タオルが冷えてきたらやめる。
※熱過ぎる場合は少しタオルを冷ましてから行う。電子レンジは様子を見ながら少しずつ加熱してもよい。

この記事は『壮快』2022年10月号に掲載されています。
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