僕も頭痛持ちで、小学校低学年で、小児用バファリン®を飲んでいた記憶があります。頭痛でつらいときは、吐いていました。7~8年前、「血圧が高い」と指摘されて降圧剤を飲み始めてから、吐き気を催すほどの頭痛はなくなりました。ということは、血圧のせいだったのかもしれませんが、ほんとうのところはわかりません。頭痛の原因って、たぶん1個じゃないんですよね。【体験談】万城目学(作家)

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万城目学(まきめ・まなぶ)

1976年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。2006年に『鴨川ホルモー』でデビュー。『鹿男あをによし』、『プリンセス・トヨトミ』など、奇想天外なファンタジーを生み出す作風は「万城目ワールド」とも呼ばれる。エッセイ最新刊の『万感のおもい』(夏葉社)は、頭痛や尿路結石にまつわるエッセイも収載。小説の最新刊として『あの子とQ』(新潮社)がある。

頭痛の原因は たぶん1個じゃない

『三国志』の曹操は、「自殺したいほどの頭痛持ち」で、最後は頭痛で苦しみながら死んだという話があります。曹操はヒール(悪役)のイメージが強いですが、頭痛持ちの話を聞いちゃうと、もう俄然同情しますね。

僕も頭痛持ちで、小学校低学年で、小児用バファリン®を飲んでいた記憶があります。頭痛でつらいときは、吐いていました。吐くと痛みが消えるんです。

実家の母は、新刊のエッセイ(『万感のおもい』収載「頭痛のはなし」)で初めて知ったようで、「気づかなかったなんて、私、親失格!」なんていってましたが、吐くと痛みが消えてケロッとするので、親には伝えてなかったんです。

大人になってからは、激しい運動をしたときとお酒を飲んだときに、頭痛が起こりました。

例えば、フットサルをやると、1セットめで頭痛が出て、吐いて楽になり、2セットめは快調に。かと思えば、フットサルを終えて帰宅後、頭が痛くなって夜中に吐いて治まるということもありました。

お酒も、月に1回くらいしか飲まないのに、飲むと必ず頭痛が起こる。飲んでいるときは平気で、家に帰ると頭が痛くなり、吐くと痛みが消えてスッキリ眠れる、という感じです。

30歳くらいのとき、一度、脳神経外科に行きました。小説家になってずっと机に向かう生活で、頭痛もひどかったんです。

毎日鎮痛剤を飲んで、その薬もだんだん強くなっていくのに、それでも毎日痛い。ところが、診断は「異常なし」。単に姿勢の問題や、パソコンの見過ぎということらしいです。

「予防的に頭痛薬を飲みましょう」といわれましたが、薬が嫌いなので、いつもギリギリまで我慢して吐いていました。

それが7~8年前、「血圧が高い」と指摘されて降圧剤を飲み始めてから、吐き気を催すほどの頭痛はなくなりました。ということは、血圧のせいだったのかもしれませんが、ほんとうのところはわかりません。

頭痛の原因って、たぶん1個じゃないんですよね。

ウォーキングをしたりメガネを使い分けたり

今も月に1~2回は鎮痛剤を飲みますが、自分でも工夫や努力をして、頭痛はずいぶん軽減してきました。

まず、週に1回整体に行き、肩と首をほぐしてもらっています。あと、ウォーキングすると頭痛が減ります。要は、血が巡ると楽になる。その方法が、人にもんでもらうか、自分で動くか、ということですよね。

僕はたぶん、すごく血流が悪いんです。たまにジョギングをすると、わき腹や腕が猛烈にかゆくなる。これは皮膚表面の毛細血管にバーッと血が巡ることによるかゆさだと思うんです。内側からのかゆみなので、皮膚をかいても治まらない。ふだんから血流をよくしておけば、かゆくならないんですかね。

以前、作家の津村記久子さんと頭痛の話をしたときに、「度の弱いパソコン用メガネと、ふだん用メガネの2個を使い分けている」と聞いたんです。それで、視力0.5くらいになる弱いメガネでパソコンを見るようにしたら、肩と首のコリがだいぶ楽になりました。

作家の森見登美彦さんは肩こり知らずなんですが、すごく姿勢がいい。僕や津村さんはネコ背なので、肩こりや頭痛はそのせいでしょうか。

もちろん、ストレスも関係あります。締め切り前は精神面への負荷に加え、長時間座りっぱなしで仕事をするので頭痛が起こりやすい。それに、じっとパソコンに向かっていると、「ああ痛い、やっぱり痛い」と、自分の感覚を反芻して、ますます痛くなる気がします。

天気との関係でいうと、僕の場合、雨が降る24時間前から頭が痛くなりますが、気圧と連動するかというと、そうでもない。気圧の変化を知らせてくれるアプリを試したことがありますが、僕の頭痛との相関はなかった。もっと遠いところの、よくわからない物が関係しているのかもしれません。

2年ほど前、目の奥がパーンと破裂するような痛みがきて、頭痛外来を受診しました。やっぱり脳には全く問題なかったのですが、そのとき先生に「頭痛のとき、どうしてます?」と聞かれました。

「いろいろ試した結果、自分にいちばん効くとわかった市販薬を飲みます」と答えたら、「そうやって、頭痛とのつきあい方が確立できているなら大丈夫。こちらから薬を出す必要もありません」といわれたんです。

頭痛って、みんなそれぞれ違うんだと思います。例えば、整形外科の待合室は高齢者やスポーツ少年が多いとか、傾向みたいなものがあるじゃないですか。でも、頭痛外来は、ほんとうにランダムな老若男女。「こういう人は頭が痛くなる」という共通点が、全くわからない。

だから、頭痛外来の先生は、自分の状況を把握するために日記を勧めるんでしょうね。僕はつけたことないですけど、頭痛とのつきあい方を確立できているので、よしとしています。

画像: この記事は『壮快』2022年10月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年10月号に掲載されています。

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