解説者のプロフィール

田中勝(たなか・まさる)
田中鍼灸指圧治療院院長。北海道生まれ。治療のかたわら、鍼温灸と経絡あん摩、関節運動法講習会を開催するなど、精力的に活動。『高い血圧を下げ、低い血圧を上げることができる逆捻転 DVD』(もみも出版)好評発売中。
押すと一気に症状が改善する場合も
膵臓が、インスリンを分泌して血糖値を下げる役割を持っている臓器なのは、皆さんもご存じでしょう。
この膵臓は、中医学において「脾」に属しています。ですから、この脾の経絡に属するツボ刺激が、糖尿病には有効なのです。
多くの鍼灸指圧師が糖尿病対策に活用しているツボは、脾経の「陰陵泉(いんりょうせん)」ではないでしょうか。しかし私は、今回紹介する「地機(ちき)」のほうが、結果を出しやすいことを発見しました。その効果は、陰陵泉をしのぎます。
なぜ地機が有効なのかを解説する前に、私がツボ指圧において、痛みを重要視していることをお話しします。
押して痛いツボは、皮下の筋肉に硬くなっている部分があるということです。その硬い部分が押されると、痛覚神経が刺激されて、痛みが生じます。そこは、気血の巡りが特に悪い位置でもあります。なので、押すと痛いツボを1ヵ所押すだけで、たちどころに気血の巡りがよくなり、症状が一気に改善することもあります。
そして、ツボ指圧において、痛みの感覚を得やすいのが地機で、実際に高血糖の改善に多くの実績があります。
地機のツボの見つけ方
【こんな症状に】
●高めの血糖値 ●糖尿病 ●不正出血 ●むくみ など
【場所】
片足のひざを曲げる。足の内側の、ふくらはぎと太もものシワの延長線上にあるボコッとした骨を探す。ボコッとした骨の下に、反対の手の人さし指の付け根側面を当てて指を閉じる。小指の付け根が当たるところが地機。押すとゴリゴリとすじ張っていることもある。

地機のツボの押し方
・両手の親指を、地機に当てて垂直方向に10秒押す。その際、上下左右に動かしながら、グリグリと押すようにし、いったん力を抜く。もう一度同じ押し方で押す。

・3分間くり返し、反対の足でも同様に行って1セット。毎日2セットを目安に行う。
・いすに腰かけて、押す方の足を反対の太ももの上に乗せるとやりやすい。
症例:血糖値がわずか数分で15も下がった!
最新の症例を紹介しましょう。40代の女性Bさんは、血糖値が高めでした。
ある日、地機の指圧前後に、血糖値を測ってみたのですが、開始前は129/dlだった血糖値が、数分指圧しただけで114mg/dlにまで降下したのです。(※血糖値の基準値は110mg/dl未満)これは、一時的な効果ですが、普段から指圧を続ければ血糖値が上昇しなくなるでしょう。
ちなみに、前項の「こんな症状に」に当てはまる不調がある方は、地機を押すと痛いだけでなく、ゴリゴリとすじ張っていることもあります。そういった方は、症状が現れる前から念入りに押すことで、症状を和らげることができます。
■イラスト/藤井昌子

この記事は『安心』2022年9月号に掲載されています。
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