解説者のプロフィール

高橋徳(たかはし・とく)
統合医療「クリニック徳」院長。1977年、神戸大学医学部卒業。関西の病院で消化器外科を10年間専攻した後、渡米。ミシガン大学助手、デューク大学教授、ウィスコンシン医科大学教授を歴任。米国時代の主な研究テーマは「鍼の作用機序」と「オキシトシンの生理作用」。2016年、名古屋市に統合医療「クリニック徳」をオープン 。ウィスコンシン医科大学名誉教授。著書に『8つのツボで30の病気を治す本』『人のために祈ると超健康になる』(いずれもマキノ出版)などがある。
科学的に証明された自律神経を整える効果
私は「足の三里(あしのさんり)」さえ正確に指圧できれば、それだけで十分病気や痛みに対応できると確信を持ってお勧めしています。〝万能ツボ〟と言っても過言ではないでしょう。
私は米国の大学教授時代に、「足の三里」の効果を証明しました。ラットの足の三里に該当する部位に刺激を行い、脳からの分泌物や、神経や臓器がどういった反応をするかを調べ、以下の効果が認められました。
①自律神経の調整 足の三里に鍼を打つたび、ラットの胃が収縮していることを確認。これは、副交感神経が優位になるためです。
現代人は交感神経が興奮しやすく、それが高血圧やアレルギー性疾患など、さまざまな病気を招いています。自律神経のバランスが整うと、こういった病気の改善が期待できます。
②鎮痛効果 足の三里への刺激が中脳に伝わると、鎮痛効果のある脳内物質「オピオイド」が分泌されることを発見。オピオイドの効果は、医療用の鎮痛薬に匹敵するほどで、あらゆる痛みの緩和に役立ちます。
③抗ストレス効果 脳内で「オキシトシン」の分泌が促されることを確認。オキシトシンは、ストレスや不安を軽くし、精神を安定させるので、うつなど心の症状に効きます。
足の三里のツボの見つけ方
【こんな症状に】
●胃腸の疾患全般 ●腰痛、ひざ通、頭痛など痛み全般 ●アレルギー性疾患 ●高血圧 ●冷え症 ●ストレスの緩和 ●うつ ●頻尿 ●むくみ など
【場所】
すねの骨(脛骨)の外側とひざのお皿が交わるところに、足と同じ側の手の人さし指のつけ根を当てたとき、小指のつけ根が当たるところ。足の三里は押すとズーンと足先まで響くので、それを目印にすると見つけやすい。

足の三里のツボの押し方
・人さし指の第二関節を足の三里に当てたら、できるだけ皮膚に対して垂直にグーっと押し込む。3秒キープしたら、離す。これを5回くり返す。

・反対の足でも同様に行って1セット。朝と夜に1セットずつ行う。
・鎮痛効果を期待するときは、この押し方をくり返す。
症例:薬でも効果がなかった線維筋痛症から回復
90代の男性Iさんに、足の三里の指圧を続けてもらうと、170mmHgもあった上の血圧が、140mmHgを切り、降圧剤を止めることができました。(※高血圧の基準値は上が140㎜Hg以上)
41歳女性のHさんは、全身に痛みがあって、線維筋痛症の診断も受けていました。薬を飲んでもなかなかよくならなかったので、足の三里のツボ指圧をお勧めしました。すると、痛みは消え、体調も順調に回復したのです。
この2名は、鍼治療も並行したのですが、ご自身による足の三里の指圧が効いたことは明らかです。
■イラスト/藤井昌子

この記事は『安心』2022年9月号に掲載されています。
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