現役の先生に、「最も優れていると思うツボ」を聞く本企画。今回は中国伝統医学の推拿の普及指導も行う、孫維良先生おすすめの「人中(じんちゅう)」です。ツボって、どこをどう押せばいいかわからない……という方、ぜひご覧ください。【解説】孫維良(東京中医学研究所所長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

孫維良(そん・いりょう)

東京中医学研究所所長。天津中医薬大学客員助教授。来日後は、推拿を実践しながら、臨床中医推拿塾を開講。推拿の普及を目指し、治療家の育成にも励んでいる。

頭がスッキリする覚醒のツボ

日本で「人中(じんちゅう)」はマイナーではありますが、ツボの本場・中国では〝救急救命のツボ〟として広く知られていて、事故や熱中症などによって意識不明に陥った人の応急処置として使われています。脳梗塞の後遺症を治す際に、使われることもあります。

人中は、脳の血管を広げ、血流をよくする「覚醒」のツボで、頭をスッキリさせてくれます。試すとわかりますが、強い刺激を感じるので、押していると目が潤むかもしれません。でも、頭がクリアになって、目覚めたての朝のようにスッキリとするはずです。仕事や運転中に疲れや眠気を覚えたときにも活用できます。

ちなみに、人中の位置は、上くちびると鼻の中間という文献もありますが、私は鼻の付け根と捉えています。ここを、鼻の奥に向かって、人さし指でえぐるように押すのが最も効果的だと考えています。

人中のツボの見つけ方

【こんな症状に】
●意識不明の応急処置 ●疲れ ●眠気 など

【場所】
左右の鼻の穴の中間地点(鼻柱)のつけ根の奥。

画像: 人中のツボの見つけ方

人中のツボの押し方

人中に人さし指の先を当てて、つむじ方向に向かって強く押す。鼻の奥を、えぐるように押すイメージ。涙目になるほどの痛みを伴うが、がまんできる程度の力加減でも構わない。

画像: 人中のツボの押し方

眠気などの対象症状が現れたときに、1回5~10秒ほど押し続ける。

症例:人中を押したら意識が戻った!

実は私自身、このツボで人を救ったことがあります。

スキーに行った際に、転倒して頭を強く打った方がいました。意識を失っており、呼びかけにも反応がありません。お互いに分厚いスキーウェアを着込んでいたので、できる治療は限られていました。そこで、とっさに人中を指でギューッと押したのです。

すると、押してから5秒も経たないうちに、意識が回復。その後、すぐに救助隊を呼びました。おかげで事なきを得たわけですが、意識不明のまま倒れていたら、低体温症など、さらなるアクシデントを招いていたかもしれません。

私は、仕事や運転中に眠気に襲われてウトウトしたら、人中を押すようにしています。たちどころに眠気が吹き飛ぶだけでなく、頭がスッキリします。個人的に、エナジードリンクよりも人中の方が即効性があると思います。

■イラスト/藤井昌子

画像: この記事は『安心』2022年9月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年9月号に掲載されています。

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