東洋医学では、気が不足すると、やる気が出ないなど、意欲が低下すると考えます。この状態が続くと気分も沈みがちになったりと、いわゆる「抑うつ状態」になり、手足の先も冷えるようになります。気が十分に巡るようになれば不眠症だけでなく、さまざまな不調も改善されていくでしょう。今回は、熟睡のための気功の中から、呼吸に特化したものを紹介します。【解説】酒谷薫(医療法人社団醫光会理事長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

酒谷薫(さかたに・かおる)

医療法人社団醫光会理事長。医学博士、工学博士、東京大学大学院新領域創成科学研究科共同研究員(前特任教授)、日本中医薬学会理事長。81年、大阪医科大学医学部医学科卒業。87年、同大学院医学研究科修了(医学博士)。脳神経医学の第一人者として活躍する一方、北京日中友好病院への赴任中に東洋医学と出合って以降、専門の脳神経外科とともに東洋医学の研究も行う。最新刊『自分でできる! 熟睡脳のコツ』(ビジネス社)が発売中。

腹式呼吸で気の流れを整える

東洋医学の養生法は、お金も手間もかからないものがほとんどなので、普段の生活に手軽に取り入れることができます。

代表的な養生法が、生命エネルギーである「気」の流れをよくする「気功」です。気は全身を巡るので、もし気が不足したり、気の流れが滞ったりすると、不眠症など、さまざまな体の不調が起こります。

東洋医学では、気が不足すると、やる気が出ないなど、意欲が低下すると考えます。この状態が続くと、ネガティブになったり、気分も沈みがちになったりと、いわゆる「抑うつ状態」になり、手足の先も冷えるようになります。

私が実践している気功は、体の中の気の巡りを、呼吸のしかたや、体を動かすことによって、自らの力でよくするものです(内気功)。

気が十分に巡るようになれば不眠症から解放されます。不眠症だけでなく、さまざまな不調も改善されていくでしょう。

今回は、熟睡のための気功の中から、呼吸に特化したものを紹介します。

ポイントは腹式呼吸で、臍下丹田(せいかたんでん)(へそのすぐ下にあり、心身の力が集まる所と考えられている)を意識します。

まず、口からゆっくりと息を吐きながら、臍下丹田を中心とした下腹に力を入れていきます。息を吐き切ったら、自然と鼻から空気が入ってくるので、それに任せて、鼻で息を吸い込みます。このとき、臍下丹田を中心に下腹をゆっくりと膨らませるようにしましょう。

また、呼吸に集中して、できるだけ雑念が浮かばないようにすることも大切です。「雑念を取り払う」というのは、言葉では簡単ですが、いざ実行すると難しいものです。

集中するために数えながら呼吸する

そこで、「数息観(すそくかん)」を行って、呼吸に集中しましょう。これは、息を吐くときに、頭の中で「ひと~つ」「ふた~つ」と数えていくもので、「十(とお)」まで来たら、また「ひと~つ」から数え直します。

呼吸に集中することは、心を整えることにつながります。心の雑念が払われた状態になると、よく眠れます。ベッドや布団の上で横になったときに、ぜひ試してください。

さらに、新しい呼吸法として「4・7・8呼吸法」というものもあります。

まず、口からゆっくりと息を吐き切りましょう。次に、4つ数えながら、鼻から息を吸い込みます。そして、7つ数える間、息を止めます。それから、8つ数えながら、ゆっくりと口から息を吐き切ります。これをくり返すうちに、心も体も落ち着いてくるでしょう。

この4・7・8呼吸法は、呼吸のリズムがわかりやすいので、数息観がちょっと難しいと感じる人は、こちらを試してみるといいでしょう。

不眠撃退に役立つ2種類の呼吸法

「数息観」「4・7・8呼吸法」とも、寝る前に行ってもいい。頭の中で数を数えながら、鼻から息を吸い、口から息を吐き切る。

数息観

画像: 数息観

頭の中で呼吸の数を数えながらゆっくり腹式呼吸を行う。口から息を吐き切り、鼻から息を吸う。
息を吐くときに、頭の中で「ひと~つ」「ふた~つ」と数えていき、「十(とお)」まで来たら、また「ひと~つ」から数え直す。

4・7・8呼吸法

画像: 4・7・8呼吸法

リラックスした状態で、口からゆっくりと息を吐き切る。
4つ数えながら、鼻から息を吸い込む。
7つ数える間、息を止める。
8つ数えながら、ゆっくりと口から息を吐き切る。これをくり返す。

画像: この記事は『安心』2022年9月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年9月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

This article is a sponsored article by
''.