解説者のプロフィール

酒谷薫(さかたに・かおる)
医療法人社団醫光会理事長。医学博士、工学博士、東京大学大学院新領域創成科学研究科共同研究員(前特任教授)、日本中医薬学会理事長。81年、大阪医科大学医学部医学科卒業。87年、同大学院医学研究科修了(医学博士)。脳神経医学の第一人者として活躍する一方、北京日中友好病院への赴任中に東洋医学と出合って以降、専門の脳神経外科とともに東洋医学の研究も行う。最新刊『自分でできる! 熟睡脳のコツ』(ビジネス社)が発売中。
[別記事:不眠体質を熟睡体質に変えるために知っておきたい!東洋医学のしくみと基本→]
肝鬱化火チェックリスト
□寝付きが悪い
□ストレス過多の生活である
□常に怒りっぽい、イライラする
□血圧が高めである
□のどが渇きやすい
□気分が落ち込むことがよくある
□手のひらに冷や汗をかきやすい
□頭痛がちである、肩がよくこる
□めまいを起こすことがある
当てはまる項目が3つ以上ある場合は、「肝鬱化火(かんうつかか)」の状態であると判断できます。
肝鬱化火とは?
ストレスが原因の不眠症。常にイライラしているが不安感も強い

「肝鬱化火」は、気を巡らせる働きをしている五臓の肝で、気が滞ってしまったために(鬱)、火がついたような状態(化火)を表しています。布団に入っても寝付けない「入眠障害」が多いのが特徴です。
舌の状態は、表面の色が赤っぽくなっていて、舌苔は薄い黄色であることがよくあります。
血圧が高くて汗をかきやすく、のどが渇いて口臭が強くなることもあり、進行すると、耳鳴りやめまいが起こります。
西洋医学でいえば、自律神経系の交感神経が活発になっている状態。仕事が忙しく、過労気味で、人間関係にも問題がある人に肝鬱化火が多いようです。
脳神経外科の外来には、肝鬱化火の患者さんがよく来られます。主な症状は頭痛やめまいで、脳の病気を心配されているのですが、話を聞くと、人間関係や職場で問題があり、それがストレスになっているようです。しかし、患者さん自身は、ストレスが原因だとは気づいていません。
眠れないことに悩んでいる人は、症状が始まる前にストレスの原因になることがあったかどうか、振り返ってみましょう。
肝鬱化火にはこんな食事を
肝鬱化火に対しては、過剰に働き過ぎた肝の機能を抑えて、怒りを鎮める対策をします。言わば、オーバーヒートしたエンジンを冷やすようなものです。
この作用がある食材は、苦味のある野菜。セロリ、セリ、ミント、緑茶、ニガウリ(ゴーヤ)などで、味付けは、酸っぱくすることをお勧めします。
なお、カレーやキムチなどの辛い食べ物、そしてショウガやニンニク、ラッキョウ、タマネギなど体を温める食べ物は避けてください。

この記事は『安心』2022年9月号に掲載されています。
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