私は、週合計18時間以上の透析を行う「長時間透析」をお勧めしています。私はいつも患者さんに「しっかり食べて、しっかり透析すれば、元気で長生きができます」とお伝えしています。老廃物をきちんと取り除きさえすれば、食べることで、患者さんの体調はぐんとよくなります。ぜひ、工夫しながら、できるだけ透析時間を伸ばしてほしいのです。【解説】菅沼信也(腎内科クリニック世田谷院長)

解説者のプロフィール

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菅沼信也(すがぬま・しんや)

国立旭川医科大学卒業と同時に東京女子医科大学病院腎臓内科に入局し腎臓病及び透析医療に一貫して携わる。東京女子医科大学病院での研修後、新宿石川病院内科、東京女子医科大学病院腎臓病総合医療センター、東日本循環器病院(現海老名総合病院)腎・膠原病センター勤務を経て2008年、腎内科クリニック世田谷を開院。臨床腎臓病学を専門とし、特に慢性腎不全の治療を得意分野とする。

長時間透析ならしっかり食べられ元気になる!

腎機能が著しく低下し、クレアチニン値が8mg/dl以上になると、透析治療が検討されます。

日本では、約34万人の透析患者さんがいますが、そのうち多くのかたが、時間でいえば週3回、1回4~5時間(週12~15時間)の透析を受けています。

しかし私は患者さんの体の負担を軽減するため、週合計18時間以上の透析を行う「長時間透析をお勧めしています。この場合、1日の透析時間は、週3回の透析なら1回6時間、隔日の透析なら1回5時間です。

長時間透析を行えば、老廃物がしっかり排出され、時間をかけてじゅうぶんな除水(体にたまった水分を取り除くこと)も行われます。ゆっくりと透析をすることで、透析中の血圧の急降下も起こりにくく、体の負担を減らせます。

また、厳しい食事制限をしなくてすみます。

私はいつも患者さんに「しっかり食べて、しっかり透析すれば、元気で長生きができます」とお伝えしています。老廃物をきちんと取り除きさえすれば、食べてもいいのです。食べることで、患者さんの体調はぐんとよくなります。

透析をしていて「体調がすぐれない」という悩みを持つかたが、長時間透析を行うことですっかり元気になる、という例を私は多く見てきました。実際、長時間透析では透析患者さんの死亡リスクが低いことも、明らかになっています。

ぜひ、工夫しながら、できるだけ透析時間を伸ばしてほしいのです。

また、先述のように長時間透析の定義は週18時間以上の透析です。週3回6時間の透析でももちろんよいのですが、私としては、透析をしない日が2日間続かないよう、できるだけ隔日での透析をお勧めしています。

しかしこの場合、1つ問題点があります。それは、保険適用の回数です。現在の日本の医療保険制度で認められている血液透析の保険適用は、月14回。毎週隔日で透析をしていくと、保険を適用できない日が出てしまいます。

この場合、必ずしも毎週隔日の透析を行わなくてもいいので、月のどこかに週4回めの透析日を設けてください。これにより、非透析日が2日連続してしまうことによる体への負担を減らすことができます。

生活の自由度が上がる在宅透析

さて、透析時間を延ばせる利点もあり、私がお勧めしているのが「在宅血液透析」です。

これは、透析施設と同じ機器を自宅に設置し、患者さんご自身で透析を行うもの。自宅であれば、いつでも好きな時間に透析をすることができます。

仕事のスケジュールに合わせて透析の時間を調整することもできるので、ライフスタイルを維持しやすいのがメリット。また、在宅血液透析の場合、保険適用において時間も回数も制限がありません。何回でも透析が受けられます。

在宅血液透析を行うには、患者さんおよび、介助者が医療施設においてじゅうぶんなトレーニングを行う必要があります。

機器の準備から自己穿刺(血管内に針を入れること)、透析中の機器や体調の管理、透析後の片づけなど、透析施設が行うことをすべて自分で行う必要があります。

また、実施には介助者か同居の家族がいることが必須なこと、光熱費が自己負担であることなど、いくつかハードルはありますが、生活の自由度は格段に上がります。

このほかにも、おなかに管を挿入して透析液を出し入れし、血液中の老廃物や余分な水分を除去し腎臓を長持ちさせる「腹膜透析」と「血液透析」を組み合わせる在宅透析や、透析施設で睡眠中に8時間透析を行う「オーバーナイト透析」など、透析時間を増やす方法は多くあります。

実施しているクリニックが限られているのも現実ですが、どんな透析治療を選ぶかで、患者さんの生活の質、満足度や体への負担は大きく変わります。主治医や周りのかたに相談し、自分に合った方法を探し、選んでください。

画像: この記事は『壮快』2022年9月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年9月号に掲載されています。

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