目の筋肉に疲労がたまる疲れ目から、さらに目を酷使すると、頭痛や吐き気、肩や首のコリや痛み、よく眠れない、イライラしやすいといった症状も現れます。このような状態が眼精疲労です。眼精疲労はストレスと密接に関係しているため、目を酷使する人だけでなく、不安やプレッシャーを抱えている人も眼精疲労になりやすいといえるでしょう。【解説】赤岩聡(赤岩治療院院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

赤岩聡(あかいわ・さとる)

1974年生まれ。埼玉県出身。2005年、早稲田医療専門学校を卒業、鍼灸師免許取得。おくど総合診療所で理学療法・作業療法などを学び、介護付き有料老人ホームで機能訓練指導員として勤務したほか、コナミスポーツクラブ内併設の治療院でスポーツ障害の臨床経験などを経て、12年、赤岩治療院を開院。15年に眼精疲労専門としてリニューアル。

眼精疲労は自律神経と大いに関係している

手にはさまざまなツボがあります。そして一見、部位が離れていて関係なさそうな「眼精疲労」に有効なツボもあります。

そこで、眼精疲労専門の治療を行っている私が、眼精疲労に効く手のツボと、お勧めの刺激方法をご紹介しましょう。

まずは、眼精疲労について解説します。

眼精疲労は疲れ目とは異なります。パソコンやスマホなどで目を酷使すると、目の筋肉に疲労がたまります。その結果、目のピントが合わなくなったり、目がかすんだりする症状が、疲れ目です。

この状態から、さらに目を酷使すると、前述の目の症状に加えて頭痛や吐き気、肩や首のコリや痛み、よく眠れない、イライラしやすいといった症状も現れます。このような状態が眼精疲労です。

眼精疲労はストレスと密接に関係しています自律神経(意志とは無関係に働き、内臓や血管をコントロールする神経)のバランスの乱れが、眼精疲労を招いているのです。

ですので、目を酷使する人だけでなく、不安やプレッシャーを抱えている人も眼精疲労になりやすいといえるでしょう。

しかし、目の疲れにとらわれて、ストレスに気づかないことが多々あります。目の周りのコリや緊張を緩めるほかに、自律神経のバランスを整えることも重要なのです。

眼精疲労に効く手のツボ

こうしたことを踏まえると、特に次の①~④が、眼精疲労にお勧めな手のツボとして挙げられます。

画像: 眼精疲労に効く手のツボ

合谷
【場所】親指と人差し指を閉じたときにできるシワの先。

合谷は古くから「面目は合谷に収める」といわれ、頭や顔にになんらかのトラブルが生じたときは、真っ先に刺激されてきた万能のツボです。

目の疲れのほかにも、頭や顔面の症状に効果があります。脳内ホルモンのエンドルフィンの分泌を促して、痛みの緩和効果も期待できます。強く押し過ぎると目がさえるので、寝る前に行うときは、力を入れ過ぎないようにしましょう。

後谿
【場所】小指のつけ根にある骨の出っ張りの下。手を握ったときにできるシワの先端。

頭や目の奥が痛む人、首や肩にコリがある人は、後谿の刺激が適しているでしょう。こうした痛みやコリは、首の後ろの筋肉のこわばりが原因のことが多いものです。後谿を刺激すると、首の筋肉がほぐれます。

労宮
【場所】手のひらの真ん中。中指と薬指を折り曲げたときの間に位置する。

気分の落ち込みや不安、心配事などがあるときは、労宮がお勧めです。自律神経のバランスの乱れを整えて、こうした心の状態を改善します。

少衝少沢
【場所】少衝は小指の爪の内側のつけ根。少沢は小指の爪の外側のつけ根。

少衝と少沢は、頭の熱を冷ます作用があります。自律神経のバランスの乱れを整えて、ストレスや緊張、動悸や頭痛などを改善します。この2つのツボは併せて刺激するのがお勧めです。

これらは、自分に対応する症状のツボを押しもむだけでもOKです。眼精疲労を少しでも早く改善したい人は、ぜひすべてのツボを刺激してください。

眼精疲労に効くツボ押しのやり方

1日3セットを目安に、仕事の合間や症状が気になるとき、以下のすべてのツボ押しを行う。自分の症状に対応したツボ押しだけでもよい。各ツボの場所は前項の図を参照。

どんな人にもお勧めの万能ツボ
合谷

画像: どんな人にもお勧めの万能ツボ 合谷

❶左手の合谷を右手の親指で、気持ちがいいと感じる力加減で5秒押してゆっくり離す。これを5回くり返す。
❷左右の手を入れ替えて①と同様に押す。

頭や目の奥に痛みがある、首や肩にコリがあるとき
後谿

画像: 頭や目の奥に痛みがある、首や肩にコリがあるとき 後谿

❶左手を軽く握って右手の親指でグリグリと動かしながら 30 秒押す。
❷左右の手を入れ替えて①と同様に押す。

気分の落ち込みや不安、心配事などがあるとき
労宮

画像: 気分の落ち込みや不安、心配事などがあるとき 労宮

◎上の「合谷」と同様に押す。

頭がほてっている、ストレスを感じるとき
少衝少沢

画像: 頭がほてっている、ストレスを感じるとき 少衝と少沢

❶右手の親指と人差し指で左手の少衝と少沢をつまむ。「1、2、3」と数えながら3 度押すのを5回くり返す。少し強い刺激を感じる力加減で行う。
❷左右の手を入れ替えて①と同様に押す。

目の疲れが改善!疲労感もだいぶ減少した

患者さんにこれらのツボ押しをセルフケアとして行っていただくと、多くのかたは1週間ほどで効果を感じられています。その症例をご紹介しましょう。

Aさん(40代男性)は、「目の疲れ」「後頭部のコリ」「目の充血」「頭が熱い」「焦りやイライラを感じる」「眠りにつきにくい」といった症状を訴えて来院されました。

Aさんは長時間、目を酷使する仕事をしていました。本人は目を使い過ぎたことが原因だと思われていましたが、考えることが多過ぎて、頭に血が上っているようでした。コロナ禍での不安もあり、精神的なストレスが大きくて、体調もくずされていたとのことです。

ですので、Aさんの眼精疲労は、自律神経のバランスが乱れていることも影響していると考えられました。そこで、前述のツボ押しを紹介したところ、2週間後に来院されたとき、次のような報告をいただきました。

「ツボ押しは、風呂上りのテレビを観ているときや、寝る前に行いました。仕事の合間に、気づくと刺激していたこともあります。その結果、目の疲れが改善して、仕事が終わったあとの疲労感がだいぶ減りました。押しているうちに、仕事の焦りやイライラが落ち着いてくるのも感じました。

以前はなかなか寝つけずにイライラして、つい横になったままスマホを見ることが多かったのですが、目を閉じてツボを押しているうちに、気持ちが落ち着いて、そのまま眠ってしまうこともあります」

このように自律神経のバランスを整えると、精神状態とともに眼精疲労は改善していくことでしょう。眼精疲労に悩んでいるかたは、ぜひ紹介したツボ押しを実践してください。

画像: この記事は『壮快』2022年9月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年9月号に掲載されています。

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