めまいや耳鳴りが発症しているときは、本来は内臓を巡っているはずの気が、頭に上って滞っている状態です。このような状態を改善するには、頭部の気や血液、リンパ液の滞りを解消して、流れをよくすることがたいせつ。液門と中渚は、私がこれまで治療を行ってきたなかでも、劇的な効果が現れて驚いたツボです。【解説】鈴木康玄(康鍼治療院院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

鈴木康玄(すずき・やすはる)

1973年東京生まれ。鍼灸師、日本古来の脈診と鍼灸技法による経絡治療家。 2004年に康鍼治療院開業。生き方が病をつくるという視点で東洋医学をとらえ、「康塾」を全国各地、米国のニューヨークなどで開催。また、13年より薬日本堂・漢方スクールにて講師も務める。著書に『不調にすぐ効く顔つぼストレッチ』『東洋医学式 体内時刻を制すれば痛みが消える!不調がなくなる!』(ともに産業編集センター)がある。

十数秒で効いて驚いた!セルフケアでも効果あり

液門(えきもん)中渚(ちゅうしょ)は、私がこれまで治療を行ってきたなかでも、劇的な効果が現れて驚いたツボです。その具体的な症例をご紹介しましょう。

Aさん(50代女性)は、娘さんの治療の同伴で当院にいらっしゃいました。そのときにめまいが起こって、しゃがみこんでしまいました。ソファに座っているのもつらそうです。

私は娘さんの治療中だったので、取り急ぎAさんの中渚に鍼を打ち、楽な姿勢で休んでもらいました。そのたった十数秒後に、Aさんから「大丈夫になりました」と声をかけられたのです。こんな短時間で効くのだと、びっくりしました。

Bさん(40代女性)のケースも、お子さんの治療の同伴でいらっしゃったときのことです。出産後から耳が聞こえにくくなったとのこと。耳に薄い膜がかかっている感じがして、静かな空間だとピーッという耳鳴りがするそうです。

このように話されたのは、ちょうどBさんが帰ろうとしていたときのことでした。治療をする時間的な余裕がなかったので、「薬指と小指の間(水かき)を、グリグリと指でもむといいですよ」とアドバイスをしました。ここに液門があるのです。

その2日後、Bさんから「症状がなくなった」という報告がありました。鍼を打たなくても、自分で刺激するだけで効果があったのです。

大学生のCさん(20代男性)は、キーンと響く耳鳴りがするということで、治療を受けに来られました。Cさんは気(生命エネルギーの一種)のバランスが大きくくずれていたため、全身の治療を行い、中渚にも鍼を打ちました。それから1週間ほど経ったころ、症状が軽くなってきたと連絡がありました。

頭部の気や血液、リンパ液の流れが改善

こうした症例のように液門や中渚は、めまいや耳鳴り、耳閉感などに有効とされています。その理由を解説しましょう。

前述の症状が発症しているときは、本来は内臓、特に下腹を巡っているはずの気が、頭に上って滞っている状態です。

これは、食いしばりという症状として現れることもあります。食いしばりは側頭部にある筋肉が緊張して太くなります。血液やリンパ液が流れにくくなり、めまいや難聴、耳閉感が起こりやすくなるともいえるでしょう。

このような状態を改善するには、頭部の気や血液、リンパ液の滞りを解消して、流れをよくすることがたいせつです。

液門と中渚は、「三焦経(さんしょうけい)」という経絡(気の通り道)にあります。三焦経は、両手の薬指から手の甲、腕の外側、肩の上部、首の側面、耳周りを通ってまゆ尻へつながっています。

ですので、液門や中渚を刺激すると三焦経の循環がよくなり、頭部の気や血液、リンパ液の滞り、ひいては耳の不調の解消に役立つというわけです。

画像: 三焦経の分布図

三焦経の分布図

液門と中渚を刺激する方法として、私は「グーパーほぐし」をお勧めしています。やり方は下項をご参照ください。

このセルフケアは、三焦経上にあるツボへの刺激によって経絡をほぐして、滞りを解消するものです。ツボを押さえながらグーパーと握ったり開いたり、最後に首や肩を回したりすることで、速やかに気が動きだし、血液やリンパ液が流れます。

めまいの解消には、両手のツボを刺激しましょう。耳鳴りや耳閉感には、症状が現れているほうの手、つまり右耳のときには右手の、左耳のときは左手のツボを刺激してください。

グーパーほぐしは起床時と就眠前に行うと、気の巡りが促されて予防にも役立ちます。ちょうど症状が現れていて余裕がないときは、液門と中渚を押しもむだけでもかまいません。

液門と中渚を探すコツは、手を握ること。こぶしに盛り上がった関節より指先側に液門が、手首側に中渚があります。

ただし、この位置は目安です。実際に刺激するときは、薬指と小指の間を手首の方向に押したときに、「ズンと響く」「ここはほかと違う」と感じるところを探してください。

めまいや耳鳴り、耳閉感の改善には、しっかりと睡眠を取って、気を養うことも重要です。また、三焦経は夜の9~11時に働きが活発になります。生活をガラッと変えるのは難しいものですが、せめて症状に悩んでいる期間は、早め(夜9~11時)に寝ることを心がけましょう。

グーパーほぐしのやり方

・朝起きたときと、夜9~11時の寝る前に行う。仕事や家事などの合間に行ってもよい。
・耳鳴りや耳閉感などがあるときは、症状のある側のみ行う。
・めまいがあるときは、手順④を行わずに両手に①~③まで行う。
・症状が現れたときに行うと、緩和に役立つ。

液門や中渚の周辺に、反対の手の指を当てる。軽く押しながら、特に痛みや違和感があるところ、効きそうだと感じるところを探す。

画像1: グーパーほぐしのやり方

①の場所に反対の手の親指や人差し指を引っかけるようにしてつまみ、痛気持ちいい力かげんで押さえる。症状のあるほうの手を握って開く。これを10回くり返して、手を少し休める。

【液門】

画像2: グーパーほぐしのやり方

【中渚】

画像3: グーパーほぐしのやり方

②は以下のいずれかでもOK!

画像1: 【めまいと耳鳴りのツボ】劇的効果!手のツボを簡単確実に刺激できる「グーパーほぐし」のやり方

反対の親指と人差し指で軽くつまんで揺らす

画像2: 【めまいと耳鳴りのツボ】劇的効果!手のツボを簡単確実に刺激できる「グーパーほぐし」のやり方

親指以外の4本の指を液門や中渚周辺に押し当てて、骨に沿って小刻みに揺らすのもお勧め

②をさらに2セット行う。

つまんだ指を離して、肩を外回りと内回りで2~3周ずつ回す。その後、②の場所をつまみながら、首を同様に回す。
※症状が現れて余裕がないときは、ゆっくり呼吸をしながら①の場所を押しもむだけでもOK。

画像4: グーパーほぐしのやり方
画像: この記事は『壮快』2022年9月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年9月号に掲載されています。

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