定年を迎え家にいると心がふさいだ
私は現在71歳。週5日、10~17時までの6時間、ファストフード店の「モスバーガー恵比寿東店」で、パートとして働いています。
仕事の内容は、レジでの接客や商品提供、清掃、バックヤードでの簡単な仕込み作業です。基本的に立ち仕事なので、よく「大変そう」といわれますが、全然そんなことはありません!毎日楽しく、あっという間に時間が過ぎていきます。
私は若いころは専業主婦で、家事や子育てに専念していました。
子供がある程度大きくなった40代半ばごろ、靴のメーカーで事務職として働き始め、65歳の定年まで勤めました。
定年後はぽっかり時間が空いてしまい、毎日家でやることもなく、ぼーっと過ごす日々がしばらく続きました。子供も独立していますし、家に一人でいる時間も長く、なんとなく心がふさぎがちになっていました。
そこで、「これではいけない。体が動くうちは、また外で働こう!」と考えたのです。
最初は、長く行っていた事務の仕事を、と思っていたのですが、あるときたまたま、「モスバーガー」の求人広告を見て、やってみよう! とひらめきました。
結婚式場で短期間働いたことはあったのですが、いわゆる接客は初めて。覚えることも多そうなので「私にできるかしら」と少し不安もありました。その不安に負けないよう、3ヵ月の通勤定期券を買い、「3ヵ月は絶対辞めない!」と決意して、お店に飛び込んだのです。66歳のときでした。
なんと、それ以来5年近くも、この店で働き続けています。

店頭に立つ遠藤さん
初めは、レジの操作方法や接客用語などを覚えることからスタート。時間をかけて教わっていきました。迷惑をかけたくないと思い、家で復習し、自分なりに練習もしたおかげか、思ったよりもスムーズに覚えることができました。
教えてくれたのは、自分の子供くらいの年齢の若い社員さんや、大学や専門学校に通うアルバイトの子たち。ここでは私が新人ですから、できていない点を彼らから指摘されても、特に嫌だとは思いませんでした。
子供が小さいとき、よく「何事も一生懸命やりなさい」とか、「人と仲よく」などと教えてきました。それをそのまま、自分でも実行することをイメージしています。そのためか、お店の人間関係にもスムーズになじむことができました。
当時、お店は地下1階から2階までの3フロアありました。ハンバーガーやドリンクをトレーにのせて運ぶのですが、初めはそれが体力的にきつい、と感じたものです。
救いだったのは、運ぶ物が軽かったこと。それでなんとかついていけた面もあります。今では階段の上り下りもすっかり慣れて、体がきついとは思いません。
以前、事務職をやっていたときは、1日7時間近く座りっぱなし。ですから、運動不足を感じて、休みの日に運動を心がけていました。
ところが今では働きながら筋トレをしているようなもの(笑)。高齢になるにつれ、筋力は衰えるものですが、私は今のところ心配なさそうです。
お店は一つのチーム!貢献できるのがうれしい
仕事を始めてすぐに、「この仕事、自分に向いているな」と気がつきました。
人が好きなので、接客も楽しいし、お店の仲間といっしょにがんばれるのも楽しいのです。定年後に、自分に向いた仕事が見つかるというのもおもしろい話です。
接客は、「丁寧に、心を込めて」を心がけています。もしかしたら、私の接客スピードはちょっと遅いかもしれないのですが、早くて雑な接客よりもいいと割り切っています。モスのお客さまは皆さんやさしいので、接客していても楽しく、自然と笑顔が出るようです。
お店は、1つのチームのようなものだと思っています。レジで接客しながらも、自分の手が空いていれば隣のレジのドリンクを用意したり、仕込みの担当者が準備した食材で、調理担当者がハンバーガーを作ったりと、協力し合って皆でよいお店を作っていくわけです。そのなかで、私も役割を持って貢献できることがうれしく、やりがいにもなっています。
お店のメンバーにはいろんな人がいます。しばらく前まではミャンマーからの留学生の子たちが数人働いていました。
別に長時間話すわけではありませんが、バックヤードで彼女たちと「元気?」とか、「最近どう?」などとちょっとしたやり取りをするだけでも、なんとなく楽しいもの。家に閉じこもっていれば、こんな体験はできなかったと思います。
この仕事に巡り合えて、ほんとうにラッキーでした。体力が続く限り働けたらいいな、と思っています。この店が大好きで、ここで働けることが幸せなのです。そんな仕事に出合えたことに、感謝しています。

この記事は『壮快』2022年9月号に掲載されています。
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