動物性脂肪には、お酒やタバコなどと同様の中毒性(依存性)があります。これが、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病につながります。この悪循環を断ち切るのに有効なのが、玄米に含まれるγ‐オリザノールです。玄米甘酒ならコップ1杯弱で、玄米ご飯の茶碗2.5杯分摂取できます。【解説】益崎裕章(琉球大学内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座教授)

解説者のプロフィール

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益崎裕章(ますざき・ひろあき)

京都府生まれ。1989年、京都大学医学部卒業。96年、京都大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士(分子医学専攻)。ハーバード大学医学部招聘博士研究員・客員助教授や京都大学講師を経て、2009年、琉球大学大学院医学研究科教授。14年、琉球大学医学部附属病院副病院長・栄養管理部長。15年、琉球大学医学部副医学部長。全国誌記事での解説などメディア出演多数。

ファストフードへの欲求や依存が低下した!

私は、琉球大学に赴任したころより、玄米の健康効果について研究を続けています。

さらに近年では、醸造メーカーなどの協力の下、白米のかわりに玄米を用いて作った「玄米甘酒」飲料の開発にも携わりました。臨床試験を通じて機能性を調べるうちに、玄米で作った甘酒には、玄米同様、すばらしい作用があることがわかってきました。まずはその結果について、ご報告しましょう。

試験では40名の協力を得て、1日に1パック(180ml)の玄米甘酒を、4週間、毎日継続して飲んでもらいました。それとは別に、対照飲料として白米で作った甘酒も4週間、同様に飲んでもらいました。

それぞれの甘酒の、摂取前と摂取後に、食事の嗜好や食・運動習慣に関する10項目についてアンケートを実施。その主観的な評価を数値化しました。

すると「間食の回数」と「ファストフードへの嗜好性」の2項目において、有意な差が認められました。玄米甘酒を飲んだときのほうが、白米甘酒を飲んだときよりも「間食する回数が減った」「ファストフードを食べたいという欲求が低下した」という結果が出たのです。

ハンバーガーなどのファストフードに多く含まれる動物性脂肪には、お酒やタバコなどと同様の中毒性(依存性)があります。摂取し続けても満足できず暴飲暴食を続けると、脂質異常症になったり、慢性的な高血糖を引き起こしたりします。

これが、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病につながります。

そうした悪循環を断ち切るのに有効なのが、玄米に含まれるγ‐オリザノールです。これは玄米の米ぬか部分に、特有かつ高濃度に含まれる成分です。

私たちは以前に別の実験で、マウスが動物性脂肪に依存していくプロセスをγ‐オリザノールが遮断することと、そのメカニズムを解明しています。

玄米甘酒の摂取により間食が減ったり、ファストフードへの依存が低下したりする傾向が見られたことは、以前のマウス実験で得られた研究結果を、裏づける形となったわけです。ちなみに被験者からは、感想として「便秘や肌荒れがよくなった」「食べ過ぎなくなった」という声が聞かれました。

玄米ならではの成分が多くの健康効果を現す

さらに、別の臨床試験も紹介しましょう。協力者5名に玄米甘酒を、別の5名に白米甘酒をそれぞれ4週間飲んでもらい、腸内細菌叢(腸内に棲息する細菌類の生態系)を比較しました。

すると、白米甘酒を飲んだグループは、善玉菌の増減にバラつきがありましたが、玄米甘酒を飲んだグループは、5名全員とも、善玉菌の割合が増加したのです。玄米甘酒の成分が腸内の善玉菌のエサになり、増殖を促している証左といえます。

ここで注目したいのが、玄米の成分が腸内で善玉菌を増やすと、血液中の短鎖脂肪酸(特に酪酸と吉草酸)が増加するという点です。「腸と脳はつながっている」とよくいいますが、短鎖脂肪酸は脳に働きかけて、食欲を抑制します。脂肪の燃焼を促したり、免疫力を高めたり、アレルギー症状を緩和したりといった作用もあります。

このような多くの健康効果の発現に深いかかわりがあるのが先述のγ‐オリザノールです。

γ‐オリザノールは自律神経を整えるので、睡眠障害や、抑うつ、軽度の認知機能障害の改善にも役立ちます。実に多彩な効果が期待できるのです。

では、どのような点に注意するとγ‐オリザノールを効果的に摂取できるのでしょうか。

なんと、すばらしいことに、γ‐オリザノールにはそうした気遣いは無用です。これはとても頑丈な物質で、安定性が高いのが特長。酸化にも強く、加熱しても冷凍しても、粉砕しても変性することはありません

ですから、玄米甘酒を飲んでも、玄米ご飯を食べるのと同様にγ‐オリザノールを摂取できます。ちなみに、私が臨床試験で用いた玄米甘酒の量はコップ1杯弱で、これを玄米ご飯に換算すると茶碗2.5杯分です。

玄米甘酒は糖分も多いので、毎日の習慣にする場合は、食事でとるご飯の量を減らすなどして調整するとよいでしょう。

私も6~7年前から、玄米や玄米甘酒をとっています。これは主観ですが、以前より記憶力や頭の回転がよくなり、質問にも瞬発的に答えられるようになりました。もちろん、体重や体形も維持しています。ぜひ皆さんも、実践してみてください。

玄米甘酒の作り方

画像: 玄米甘酒の作り方

材料
・玄米…1/2合(75g)
・こうじ…100g
・水…500ml(400ml+100ml)

玄米はさっと洗い、ひと晩浸水させる。水400mlとともに炊飯器の内釜に入れ、「お粥モード」で炊飯する(鍋で粥を作ってもよい)。

炊き上がったら水100mlを加え混ぜ、温度を下げる(60度が目安)。ほぐしたこうじを加え、さらに混ぜる。

炊飯器のふたを開けたまま、内釜にふきんをかけて、保温モードで6~8時間放置する。

途中で、1~2回かき混ぜると均一な仕上がりになる。その際、温度を確認し、下がっていたら炊飯器のふたを閉め、上がっていたら一時的にふきんを外すなどして、60度前後を保つようにする。
保温にヨーグルトメーカーを使う場合は、粥の温度を60度に下げてから、米こうじを混ぜて専用容器に移し、60度6時間にセットする。

ほんのりと黄色みを帯び、甘みが出ていたら出来上がり。冷めたら保存容器に入れて冷蔵庫へ。冷蔵で3日程度、冷凍で1ヵ月は保存可能。

画像: この記事は『壮快』2022年9月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年9月号に掲載されています。

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