ストレスが持続すると、常に心身が緊張して、交感神経が高ぶっていることになりますから、脈拍と血圧は上昇し、脈飛びが頻発するようにもなってきます。長生き呼吸は、不整脈が出たときはもちろんのこと、毎日の習慣にすると、動悸や息切れ、頻脈といった症状の改善が期待できます。【解説】坂田隆夫(アゴラ内科クリニック院長)

解説者のプロフィール

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坂田隆夫(さかた・たかお)

アゴラ内科クリニック院長。日本内科学会内科専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本不整脈学会不整脈専門医、日本医師会認定産業医、病院総合診療医。1964年生まれ。91年東邦大学医学部卒業。東邦大学医療センター大橋病院講師、日産厚生会玉川病院循環器科副部長などを経て、19年にアゴラ内科クリニック開院。自然治癒力や免疫力を高め、心と体のケアに取り組んでいる。

一時的な不整脈は自律神経が関係している

不整脈を疑い、病院で検査したが、異常なしといわれた……そうした経験をお持ちのかたは少なくないでしょう。

疾患の伴わない、一時的な不整脈を疑問に思った私は、研究を重ねました。結果、自律神経が大きくかかわっていることがわかりました。

そこで、その自律神経を整えて、不整脈を予防する方法として考案したのが、下項で紹介する「長生き呼吸」です。

なぜ長生き呼吸で不整脈が防げるのか、そのメカニズムを紹介する前に、自律神経について、簡単に説明しましょう。

自律神経には、活動的なときに優位になる交感神経と、休息時に優位になる副交感神経があります。これらがバランスを取り合って、血管や腸の働きをコントロールしています。

例えば、恐怖や緊張といったストレスは、交感神経を優位にします。すると、心臓の収縮力が強まって心拍数が増えるのでドキドキするのです。これが速い脈となって現れることもあります。また、血管も収縮するので、血圧が上昇します。

ストレスが持続すると、常に心身が緊張して、交感神経が高ぶっていることになりますから、脈拍と血圧は上昇し、脈飛びが頻発するようにもなってきます。放っておくと、命にかかわることもあるので、不整脈が頻発する場合は、すぐに医療機関を受診してください

横隔膜の周囲には副交感神経が集まっている

長生き呼吸をすると、自律神経のバランスが整って、不整脈を予防することができます。横隔膜を動かすことによって、副交感神経が優位になり、交感神経が鎮まってくるからです。

横隔膜は伸縮性のある膜状の筋肉で、胴体を肺のある「胸部(胸腔)」と、胃や腸がある「腹部(腹腔)」に分けています。そして、肺の働きをつかさどっています。

空気を吐ききって肺が収縮しているときには、横隔膜は緩んで肺とともに上がっています。また息を吸ったときには、横隔膜は縮みながら下がって肺を引き伸ばします。

さらに横隔膜の周囲には、副交感神経がたくさん集まっています。できる限りゆっくりと呼吸を行うことで、横隔膜が大きく動き、それにより副交感神経が活性化するのです。

疲労やストレスのほか、生活習慣病があると、不整脈が出やすくなります。長生き呼吸は、不整脈が出たときはもちろんのこと、毎日の習慣にすると、血圧や心拍数が低いレベルで安定し、動悸や息切れ、頻脈といった症状の改善が期待できます。

最近では、高齢者にもスマホ依存の人が増えているようですが、スマホやパソコンの画面を凝視したり、メールを打ったりするときは、呼吸がほとんど止まっています。

肺と心臓は、肋骨や胸椎に囲まれた「胸郭」の中に収まっています。息む動作や浅い呼吸では、肺がふくらまないので、胸郭が広がりにくくなって、胸の中の圧力が非常に高くなります。

その結果、静脈血が心臓に戻りにくくなって、血圧の上下動や不整脈を誘因します。そればかりか、呼吸が浅いので、横隔膜の周囲の副交感神経を効率よく活性化できません。そのため、自律神経のバランスも整わず、ますます不整脈を起こしやすくなってしまうのです。

スマホは時間を決めて行うとともに、長生き呼吸で、胸郭を広げることをぜひ心がけてください。

長生き呼吸のやり方

画像1: 長生き呼吸のやり方

あおむけになって、片方の手を胸に、反対の手をおなかに当てる。おなかがへこむことを手で感じながら、ゆっくりと息を吐く。

画像2: 長生き呼吸のやり方

口を閉じ、おなかが膨らむことを手で感じながら、鼻からゆっくりと息を吸う。疲れない程度に①~②をくり返す。
※息を吐く時間と吸う時間は2:1程度が目安。無理せずできる範囲でOK。
※毎日継続して行う。何回行ってもOK。

画像: この記事は『壮快』2022年8月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年8月号に掲載されています。

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