新型コロナにかかると、心房細動になることがある? 心房細動と診断されたら、不整脈の自覚症状がなくても手術を受けるべき? など、不整脈と心房細動の気になる疑問にお答えします。【解説】濵義之(幕張不整脈クリニック院長)

解説者のプロフィール

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濵義之(はま・よしゆき)

幕張不整脈クリニック院長。日本不整脈心電学会不整脈専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本内科学会認定内科医。2003年、山梨医科大学医学部医学科卒業。多摩南部地域病院循環器科、千葉県循環器病センター循環器科、君津中央病院循環器内科部長などを経て、18年に幕張不整脈クリニックを開院。同年より院長。年間500件以上のカテーテルアブレーション治療を行い、多くの患者を助けるだけでなく、再発を見逃さない徹底したケアにも努めている。

新型コロナと不整脈の関係

Q. 新型コロナにかかると、心房細動になることがあると聞きました。コロナに感染してしまった場合、心房細動の発症をさけるために気を付けるべきことはありますか?

A. コロナの治療を優先しましょう。

新型コロナにかかると、心房細動を発症することがあるのは事実です。コロナと不整脈の関連を調べた論文によれば、1053人の新型コロナの患者さんのうち、15.8%のかたに不整脈が認められたとのこと。

ただしこれは、コロナによる一過性の炎症によって心房細動が起こったもので、いわば一時的な症状です。コロナから回復し、炎症が治まれば心房細動も治まります。

ですからコロナにかかった結果、心房細動も発症してしまったときは、まずコロナの治療を優先することが肝心でしょう。

ワクチンを打ったことをきっかけに、心房細動が起こる例もありますが、考え方は同様です。

Q. カテーテルアブレーションを行うと、免疫機能が低下し、コロナにかかりやすくなるということはあるでしょうか?

A. まず心配いらないと考えてよいと思います。

実際、私のクリニックで、カテーテルアブレーションを行った患者さんが新型コロナにかかった例はありません。

また、同様のテーマの研究論文が、コロナが最もまん延していた時期のアメリカで出されています。その数百例の事例でも、カテーテルアブレーションを行った患者さんがコロナにかかった例はないと報告されています。

カテーテルアブレーション

Q. 心房細動と診断され、カテーテルアブレーションを勧められました。しかし、私の場合、不整脈の自覚症状が全くありません。自覚症状がなくても、受けなくてはいけないでしょうか?

A. 手術を受けることをお勧めします。

お気持ちは、よく理解できますが、手術を受けることをお勧めします。

治療が必要となる不整脈のうちで、最も患者数が多い心房細動は、無症状のケースがとても多い疾患です。本人が気づかぬうちに、進行していくケースも少なくありません。

心房細動が続くと、心臓の筋肉が疲れ果てて、線維化してしまいます。線維化した部分が多くなればなるほど、治りにくくなります。時間が経つにつれて、この線維化が進んでいくので、できるだけ早期のうちに手術を行ったほうがいいのです。

Q. 高齢になっても、心房細動の手術はしたほうがよいでしょうか?

A. 病状の程度によります。

クリニックによって、それぞれ治療方針があるので、75歳や80歳を超えていたら、治療しないという病院も少なくありません。

ですが例えば75歳のかたでも、心房細動になったばかりであれば、私はカテーテルアブレーションを行う価値はあると考えています。

しかし、心房細動になってからすでに長期間が経過している場合、手術は行わないでしょう。手術が可能かどうかは、心房細動の進行度合いによります。むろん、高齢者の場合、そのかたの体力なども勘案しますが、まずは病状の程度の見極めが必要です。

脈の測り方

Q. 脈の測り方は、1分間の脈拍数を測るのが最もオーソドックスなやり方だと思いますが、30秒の脈拍数を測って2倍したり、15秒で測って4倍したり、10秒で測って6倍したり……といった方法でも問題ないでしょうか?

A. 問題ありません。重要なのは毎日測ることです。

私はご自身がやりやすい方法でかまわないと考えています。

毎日測ることが大事なので、自分が続けやすいと感じられる測り方で行うのがいいのではないでしょうか。実際毎日測っていると、10秒や15秒でも、違いがわかるようになります。

一瞬脈が飛ぶくらいなら、健康面で問題のない「期外収縮」の可能性が高いですが、脈がむやみに遅かったり、速すぎたり、あるいは、リズムがバラバラだったりすると、治療の必要のある「心房細動」の可能性があります。

画像: 脈の測り方
画像: この記事は『壮快』2022年8月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年8月号に掲載されています。

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