どこの病院へ行っても、医師は「こんな心臓でエベレストに登るのは無理だ」といいます。それでも、世界中に1人くらいこの心臓を治してくれる医師がいるだろうと、希望を捨てませんでした。そうして出合ったのが「カテーテルアブレーション治療」。当時はまだあまり知られていない治療法でした。【体験談】三浦雄一郎(プロスキーヤー・冒険家)

プロフィール

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三浦雄一郎(みうら・ゆういちろう)

1932年、青森県生まれ。富士山直滑降、エベレスト8000m地点からの滑降など、世界7大陸最高峰からの滑降を達成。2003年、世界最高齢となる70歳7ヵ月での登頂を果たす。08年、75歳でエベレスト再登頂。13年、80歳で3度めのエベレスト登頂に成功し、世界最高年齢登頂記録を更新。プロスキーヤー・冒険家としてだけでなく、クラーク記念国際高等学校の校長としても活躍中。『歩き続ける力』(双葉社)、『挑戦は人間だけに許されたもの』(平凡社)など、著書多数。

エベレスト初登頂後息切れや動悸が始まった

プロスキーヤーであり冒険家である私は、常に目標を打ち立て、それに向かって挑戦を続けてきました。

世界最高峰のエベレストには、70歳・75歳・80歳と3度登頂に成功し、世界最高年齢登頂を記録しています。

しかし、空気の薄い高山に登ることは、心臓にとって大きな負担となります。特にエベレストは平地の3分の1程度しか酸素濃度のない、「デスゾーン」と呼ばれる領域。70歳で初登頂を果たした時点で、私の心臓は限界を超えてしまいました。

以前からトレーニング中に不整脈が出ることはあったのですが、帰国後、その症状がかなりひどくなったのです。

ちょっとしたことで息切れや動悸がするようになり、階段を上ると心臓がドキドキして苦しくなります。運動すると心臓は痙攣を起こし、気を失わないまでも、それに近い状態になっていました。

病院では心房細動と診断され、投薬治療を試しましたが効果は得られませんでした。

それでも、私には次の目標がありました。

実は70歳でエベレストに登ったとき、悪天候で山頂からの景色を見ることができなかったのです。そのとき、私は75歳でもう1度エベレストに上ることを決意しました。

もう1度登頂するためには、もちろん心臓の状態を回復させなくてはいけません。しかし、どこの病院へ行っても、多くの医師は「こんな心臓でエベレストに登るのは無理だ」といいます。

それでも、私はあきらめず、世界中に1人くらい、この心臓を治してくれる医師がいるだろうと、希望を捨てませんでした。

今は心房細動のことをすっかり忘れている

そうして出合ったのが、「カテーテルアブレーション治療」です。当時はまだあまり知られていない治療法でしたが、これならエベレストに登れる可能性があると聞き、この治療を受けることにしました。

カテーテル手術なので、局部麻酔で痛みもなく、3〜4時間ほどで終わります。術後は、今までの苦しさは何だったのかと思うくらい心臓が楽になり、ゆっくりですが翌日から歩くことができました。

そして2度の手術を経て、治療開始から1年足らずの2008年、75歳で2度目のエベレスト登頂を果たしたのです。

こうなると、次は「80歳でもう一度」という思いが膨らみます。ところが、それに向けて高所トレーニングをしているときに不整脈が再発します。結果的に、私は再びカテーテルアブレーション治療を受け、80歳でもエベレスト登頂を成し遂げました。

それからも私の挑戦は尽きることなく、次の目標に向けて、さらに3回のカテーテルアブレーション治療を受けています。

86歳のときには、南米最高峰のアコンカグアにチャレンジ。このときは山頂目前で無念のドクターストップとなりました。けれども、下山してからは不整脈の症状は出ていません。もう完治したといっていいぐらい、心房細動のことはすっかり忘れています。

カテーテルアブレーション治療は、私にとって夢をかなえるための手段でした。おかげで世界一高いところに3度も立つことができ、この治療法と医師には心から感謝しています。

医療技術が進歩している今、恐れずに適切な治療を受けることは、夢を追い求め、それを現実にするための助けになると、つくづく感じています。

今は、2020年に発症した頸髄硬膜外血腫によって両足にマヒが残り、リハビリに励む日々です。発症当初は8ヵ月間入院し、一時は日常生活復帰も危ぶまれました。そんななかでも、翌年6月には富士山5合目での東京五輪聖火ランナーを務めることができました。

現状は、ストックを使ってゆっくり歩けるくらいまで回復しています。今の目標は、富士山に登ることです。

今年の10月で満90歳。家族や仲間、そして必要とあらば医療のサポートも受けながら、まだまだ夢を追い続けます!

カテーテル治療は心房細動に有効
幕張不整脈クリニック 濵義之

心房細動は三浦さんのような屈強なアスリートであっても、起こりえる病気です。

体を激しく酷使するかたが心房細動になってしまった場合、その活動を続けるためにカテーテルアブレーションによる治療はとても有効です。

なお、一般的に術後の再発については、病状の進行状態が大きくかかわります。早期発見、早期治療が重要です。

画像: この記事は『壮快』2022年8月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年8月号に掲載されています。

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