プロフィール

三遊亭小遊三(さんゆうてい・こゆうざ)
1947年生まれ。68年、明治大学経営学部在学中に、三遊亭遊三に入門。83年に真打昇進。落語会きってのスポーツマンとして知られ、2度の東京オリンピックでは、どちらも聖火ランナーとして地元の山梨で大役をこなす。現在は「笑点」(日本テレビ)レギュラー出演のほか、全国各地で講演活動など幅広く活動。
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タバコを吸うと激しい動悸が起こった
若いころから手放せなかったタバコをスッパリやめたのは、40歳のときです。
というのも、二日酔いのときに一服すると、必ず心臓がドーンッとなって、ドキドキと激しい動悸が起こったからです。
30歳を過ぎた辺りからそんなことを何度も経験し、タバコが引き金になっていると確信したのでやめるに至りました。
おかげで「ドーンッ! ドキドキ」という心臓の衝撃はなくなったのですが、60代に入ると今度は息切れがひどくなってきました。
階段や坂道を上っていると、ハアハアと呼吸が苦しくなって、立ち止まってしまうのです。よく使う駅の階段では、だいたい同じところで動けなくなっていました。
また、私はゴルフによく行くのですが、ゴルフ場はどうしても上り下りがありますから、これもまたつらい。後半はもうラインを読むどころじゃありませんでした。芝の上でしゃがみこんでしまったこともあります。
そんな息切れの原因が、「心房細動」だと知ったのは2016年、69歳のときです。
別件で病院にかかった際に、医師に息切れの話をしたら、「じゃあ、心電図を取ってみましょうか」ということになりました。
小型の装置を身につけて、24時間心電図を取ったのですが、その結果を見た医師が首をかしげながら「おかしいね。もう1回取りましょうか」というのです。それでもう1回取ったら、「間違いなく心房細動ですね」と言われました。
治療としては、薬を飲み続けるか、カテーテルを入れて心房細動の原因部分を焼き切る「アブレーション治療」を受けるか。その2つがあるとのことでした。
アブレーションは70歳を超えると難しいというので、「だったら今のうちだ」とアブレーションに即決しました。
よく「心臓の手術なんて怖くなかったですか」というご質問を受けるのですが、不安は全くありませんでした。開胸手術ではなくカテーテルを入れるものでしたし、「先生に万事任せて間違いない」と信頼していたのが大きかったと思います。
手術中は全身麻酔で寝ていますから、私は何もわかりません。麻酔から覚めて「あー、よく寝た」ってもんです。
ただ、目覚めてから1日は体を動かしちゃいけなかったので、ずっと同じ姿勢で寝ていて腰が痛くなりました。つらかったのは、それくらいです。ほんとうは3泊4日の入院予定だったのですが、経過が良好で2泊3日で退院しました。
その後ずいぶん経って、カテーテルを抜くときに「痛え」と言っていたことをマネージャーから聞きましたが、のどもと過ぎればなんとやらで、「そうだったかな?」という感じです。それくらい一瞬の痛みだったということでしょう。
術後は、ビックリするくらい症状がよくなりました。駅の階段を息切れせずに上れたときには驚くと同時に、「前はこの辺で苦しくなったんだよなぁ」とよくなったことをしみじみと感じましたね。
ところが2020年7月、自覚症状はなかったのですが、検診で取った心電図を見て医師が「もう1回行っておいたほうがいいでしょう」というのです。73歳になっていましたが、アブレーションの再手術を受けました。
飲酒量を減らしてからすこぶる調子がいい!
医師の話では、心房細動の原因には喫煙や飲酒があるそうです。私の場合、タバコはやめましたが、酒は若いころから毎日3合くらい飲んでいました。ときには1升飲むこともありましたから、それが原因だったのでしょう。
「飲むな、とはいわない。ただし、日本酒なら1合、ビールなら350ml 2缶まで」とくぎを刺されました。
以来、ふだんは飲んでも1合を守っています。焼酎はアルコール度数が高いので、飲むときは半分を水割りに。そんなふうに酒の量を減らしてからは、すこぶる調子がいいです。
高血圧もありますが、降圧剤を飲んでいますし、かみさんが塩分控えめの食事を作ってくれています。そうやって気をつけながら暮らしていけば、大事には至らないということじゃないんでしょうか。
深酒を避けて減塩を心がけ野菜をたっぷり
東京ハートリズムクリニック院長 桑原大志
たとえ、アブレーション治療で心房細動が治っても、深酒を続けていると不整脈は再発してしまいます。また、血圧を正常に保つこともとても重要です。お酒はほどほどにし、減塩を心がけ、野菜をしっかりとるようにしてください。師匠が元気に高座で演じる姿を、いつまでも拝見できることをお祈り申し上げます。

この記事は『壮快』2022年8月号に掲載されています。
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