解説者のプロフィール

神谷陽子(かみや・ようこ)
一般社団法人腸活環境育成協会代表理事、オーソモレキュラー・ニュートリション・エキスパート。長野県松本市生まれ。医療機関に23年勤務後、働く人の笑顔力を上げたいと心理学と行動心理学、新栄養学を組み合わせた笑顔力メソッドを考案。腸活環境育成協会を設立し、講習・講演を行う。現在は、笑顔の基となる「腸」に特化した健康管理と後進の育成に力を入れている。メールマガジン『腸活110番』を配信中。
野菜、酢、天然だしが不足している人が多い
「人生100年時代」といわれる現在、いつまでも健康で過ごすためには、バランスの取れた食事で栄養をとることがとてもたいせつです。しかし、日々の忙しさに追われ、食事がおろそかになっているかたは、驚くほどたくさんいます。
私は、そうしたかたがたに、健康的な食事について適切なアドバイスをするため、2015年に腸活環境育成協会を設立。夫で、医師でもある神谷 仁とともに、分子栄養学(適切な食事やサプリメントなどからとる栄養素によって、さまざまな病気を治す療法)の知識を生かした食事のとり方を模索し、提案してきました。
協会の活動を通して、さまざまな世代のかたの食事や生活を見聞きするうちに、便秘や疲れやすさなどの体調不良を訴えるかたがたに、共通する点が見えてきました。
それは、「野菜」、「酢」、「天然だし」の3つが不足しがちだということです。
これはある意味で象徴的なことです。つまりは、家で手作りの家庭料理を食べる機会が少なくなっている、ということだと思われます。
皆が忙しく過ごしている現代のライフスタイルのなかでは、これは仕方のないこと。いくら「家庭料理がたいせつです。家で野菜をたくさんをとりましょう。酢や天然だしを使って料理しましょう」といっても「実践は難しい」といわれてしまうことでしょう。
しかし、これらの食材はぜひとりたい健康効果の高い物ばかりです。野菜には食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富です。酢には、疲労回復効果や、血行をよくする効果が知られています。また、天然だしには、体の組織や臓器をスムーズに動かすのに欠かせない、ミネラルが豊富です。いずれもとらないのはもったいありません。
そこで、これらの素材をまとめてとれる、簡単でおいしいレシピができないかと考えたのが、「腸活ピクルス」(作り方は別記事参照)です。
[別記事:ポイントは煮干し! やせ体質になり糖尿病や高血圧、骨の老化も防ぐ腸活ピクルス→]
考案以来、協会で行う講座などで作り方を紹介してきました。すると「おいしい!」「これなら続けられる」という声が多く届くようになったのです。
また、仕事や家事に多忙な現役世代だけでなく、年齢を重ねるとともに、体力的に台所に立つのがつらくなってくるシニア層からも、この腸活ピクルスが支持されることもわかってきました。
そして、これを継続的に食べているかたがたからは、「頑固な便秘が解消した」「ガス腹が解消した」「1ヵ月で6kgやせた」といった、さまざまな体調の改善や、ダイエット効果について、報告が集まってきたのです。
無理なく続けられるから健康効果につながる!
なぜ腸活ピクルスで体調不良が改善するのかについては、先述の別記事で詳しく説明しています。ここでは利便性や、味の面から見た腸活ピクルスのメリットを紹介しましょう。
❶作り方が簡単
作り方はごくシンプル。作りおきすること自体が負担になりません。レシピも覚えやすく、ふだん料理をしないかたでも簡単に作れます。
❷保存性が高い
一度作れば、冷蔵庫で1週間ほど日持ちします。忙しくて料理をすることができない日でも、腸活ピクルスが冷蔵庫に入っていれば安心。いつでも栄養たっぷりの食事がとれます。
❸食べやすく飽きない
腸活ピクルスのいちばんの特長は「煮干し」を使うこと。ピクルス液に煮干しの旨みが抽出され、和の天然だしのおいしさを堪能できます。
だしが効いていることもあり、酸っぱ過ぎずちょうどいい酸味になります。お酢が苦手なかたや、お子さんでも食べやすい味です。和食にも洋食にも合い、毎日食べても飽きません。
❹継続しやすい
①〜③で挙げた特長から、腸活ピクルスは、無理なく続けやすい、ということがいえます。どんなに体にいい物でも、続けられなければ、なんの意味もありません。
その点、作り方が簡単で日持ちし、食卓になじむ腸活ピクルスは、継続しやすく、それゆえに健康効果についても結果が出やすいのです。
ここからは、材料の選び方や、よりおいしく作るコツについてお伝えしましょう。
材料については、作り方の記事も参照してください。酢は、お好みの物でOKです。私自身はふだん、米酢を使って作っています。腸活ピクルスに加える素材は、不足しがちな野菜はもちろん、卵やチーズなどもお勧めです。卵やチーズなら、手軽なたんぱく源になり、おやつがわりにしてもよいでしょう。
よく野菜の切り方について聞かれますが、これも好みでかまいません。早く味を染み込ませたいという場合には薄切りにしたり、食感を楽しみたいという場合は少しゴロッと大きめに切り、じっくり味を染み込ませたりしてもいいでしょう。
私は、キャベツなどは豪快に、6分の1玉をそのままピクルス液とともにビニール袋に入れ、漬けることもあります。
朝漬けておき、夕方袋から取り出し、ひと口大に切れば、簡単で栄養もとれる一品になります。
ピクルス液を活用すれば料理の味つけも簡単!
この腸活ピクルスでは、野菜など漬けた素材だけでなく、ピクルス液を残さずとることをお勧めしています。酢と、煮干しの栄養分が混ざり合ったピクルス液は健康効果抜群。旨みも出ているので味もよく、さまざまな料理にアレンジが可能です。
特に、オリーブオイルと合わせてドレッシングにしたり、スープにしたりするのがお勧めです。ピクルス液があれば、味が簡単に決まるので、料理の手間はグッと減ります。どんな料理もおいしく作れるので、料理をしよう、というモチベーションもわいてきます。

ピクルス液を使った「白身魚のピクルス液蒸し」
私のお勧めのレシピは「白身魚のピクルス液蒸し」。作り方は簡単です。
やや深めの皿にクッキングシートを敷いて、白身魚一切れをおき、その上に食べやすい大きさに切ったタマネギ、パプリカ、シメジをのせます。そこにピクルス液100mlを加え、岩塩を軽く振ります。クッキングシートで包み、両端をキャンディのようにギュッとしぼります。
皿から出してごく少量の水を張ったフライパンで蒸し焼きにします。魚に火が通り、ピクルス液がなくなれば完成です。
これは魚が苦手なかたから、「おいしかった!」という感想をもらった大人気レシピです。このほか、お肉をピクルス液に漬けて焼いたり、炒め物の味つけに使ったり、ピクルス液はさまざまな場面で大活躍します。
腸活ピクルスは、「少なくとも1日1回食べ、まずは1ヵ月続けてください」と、皆さんにお伝えしています。
続けることで、少しずつ体が変わっていくのがわかります。するとうれしくなって、「今度はあれを漬けてみよう」「こんな料理にアレンジしよう」といろいろな工夫も楽しめるようになります。そうして楽しみながら食べているうちに、気づいたら、悩みだった便秘やガス腹が解消し、体重も減らせた……。これまでに、そんな体験談をたくさんいただいています。
ぜひ皆さんも、腸活ピクルスを食べて、その効果を実感してください。

この記事は『壮快』2022年8月号に掲載されています。
www.makino-g.jp