血流が悪く足がむくんでいるときは、血液の多くがふくらはぎに停滞している状態といえます。その状態で体を横にしたら、下半身にたまっている血液が全身に行き渡り腎臓への血流も増して、尿が多く作られます。これが夜間に起こることで尿量が増え、夜間頻尿を引き起こすのです。【解説】石井泰憲(石井クリニック院長)

解説者のプロフィール

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石井泰憲(いしい・やすのり)

石井クリニック院長。1972年、長崎大学医学部を卒業。同年、東京大学医学部泌尿器科医局入局。埼玉社会保険病院泌尿器科部長、東京大学医学部非常勤講師(兼任)などを経て、2005年より現職。尿潜血、尿路感染症、尿失禁、性機能障害などの全般的な泌尿器科疾患を診療。西洋医学の他、指圧や漢方薬といった東洋医学も併用した治療を行う。
▼石井クリニック

血流の悪さが多尿を引き起こす

夜中に尿意を催して、目が覚める回数が増えた……。そんな人は、夕食後のふくらはぎマッサージがお勧めです。

その理由についてお話しする前に、まずは夜間頻尿が起こるしくみを説明しましょう。

夜間頻尿とは、夜の睡眠中に1回以上、排尿のために目が覚めてしまう症状です。尿意によって睡眠が妨げられ、睡眠不足や体調不良にもつながります。

特に高齢者の場合は、暗い中トイレに行くことで転倒リスクも高まります。最悪の場合、けがや骨折が原因で寝たきりになることも考えられます。

夜間頻尿には、大きく分けて次の3つのタイプがあります。
夜の尿量が多いタイプ
膀胱の容量が小さいタイプ
眠りが浅く、睡眠障害から頻尿が起こっているタイプ
このうち、最も多いのが①。そんな人にこそ、ふくらはぎマッサージが有効です。

ふくらはぎは、「第二の心臓」と呼ばれている通り、体で最も重要なポンプの役割も果たしています。

ふくらはぎには腓腹筋とヒラメ筋という2つの大きな筋肉があり、散歩や運動などでふくらはぎを使うと、これらの筋肉が収縮と弛緩をくり返します。これにより、血液の戻りがよくなります。このしくみを「筋肉ポンプ」といいます。

血管には動脈と静脈がありますが、静脈には動脈のような弾力がありません。代わりに逆流を防ぐ弁がついているので、周囲の筋肉が収縮と弛緩をくり返すと、自然に心臓方向への血液の戻りが促されます。

血液の70%は下半身にあり、そのほとんどが重力によって足にたまります。そのため、ふくらはぎの筋肉ポンプの力は、非常に大切なのです。

ところが、この筋肉ポンプは年齢とともに衰えます。すると血液の戻りが悪くなり、足がむくむなどといった症状が出やすくなります。

一方、尿は血液をもとに腎臓で作られます。そのため、血液の戻りが悪いと、尿が効率よく作られません

つまり、血流が悪く足がむくんでいるときは、血液の多くがふくらはぎに停滞している状態といえます。

その状態で、体を横にしたらどうなるでしょう。水が半分入っているペットボトルを倒すと水が全体に行き渡るように、私たちの体を横にしたら、下半身にたまっている血液が、全身に行き渡ります。

そうなれば、当然腎臓への血流も増して、尿が多く作られます。これが夜間に起こることで尿量が増え、夜間頻尿を引き起こすのです。

足を高くして横になるのも有効

これを防ぐ方法こそが、寝る2~3時間前に、ふくらはぎのむくみを取ること。就寝前に腎臓への血流をよくして、尿を作る時間と排尿する時間を作れば、夜間頻尿を予防できます。むくみを取る方法は、下記を参考にしてください。

最も有効なのは、ふくらはぎをマッサージすること。タイミングは、夕食後がお勧めです。

「マッサージをするのも面倒」という人は、夕食後に足を高くして、数十分横になるだけでも効果が見込めます。足の下に座布団やクッションを置き、心臓より高い位置でキープするとよいでしょう。

ただし、これらの対策は、夕方に足がむくみやすい人に対しての方法です。「朝起きたらすでに足がパンパン」というような、常に足がむくんでいる人の夜間頻尿には、残念ながら効果がありません。こういった場合は、別の病気が隠れている恐れがあるので、必ず医師の診察を受けてください。

夕食後のふくらはぎマッサージ

足首から上に、水を流していくようなイメージでふくらはぎをマッサージする。気持ちいいと感じるくらいの適度な圧をかけてもんだり、優しくさすったりするのもよい。左右のふくらはぎで、合計15~30分程度行うのが目安。

夕食後に足を高くして横になる

足の下に座布団やクッションを置き、足の位置が心臓より上に来るようにして数十分横になる。腰や足に負担がかからない高さで行うこと。

画像: 夕食後に足を高くして横になる

寝る2~3時間前に風呂に入る

湯船に浸かってゆっくり温まることで、血流がよくなり、ふくらはぎのむくみが解消する。入浴中に上記のふくらはぎマッサージを行うのもお勧め。寝る直前は逆効果になるので要注意。

画像: この記事は『安心』2022年7月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年7月号に掲載されています。

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