解説者のプロフィール

丸山眞砂夫(まるやま・まさお)
柔道整復師。1973年生まれ。明治東洋医学院専門学校卒業。2007年に株式会社タオ入社。直営整骨院および社員FCの経営指導を経て、介護事業に参入。デイサービス「ふくらはぎ健康法タオ」の施術オペレーション構築に携わる。ふくらはぎ健康法のテクニカルアドバイザーとして利用者様の症状改善に取り組む。また、後進の育成に力を注ぎ、ふくらはぎもみのよさを普及。共著に『ふくらはぎをもむと体が変わる!病気が治る!』(マキノ出版)などがある。
健康なふくらはぎは〝つきたてのおもち〟
ふくらはぎは、「第二の心臓」といわれます。それは、ふくらはぎにある腓腹筋などの筋肉がポンプのように働き、下半身にたまった血液を心臓に戻してくれるからです。
下半身は、心臓から遠く離れているために、どうしても重力に逆らって血液を押し戻さないといけません。ですから、ふくらはぎのポンプ機能が必要なのです。
実は、ふくらはぎには、私たちの健康状態が現れます。
健康なふくらはぎには、つきたてのおもちのような温かさと柔らかさがあります。一方、体に不調があると、ふくらはぎがガチガチに張っていたり、しこりのように硬い部分があったり、弾力がなくてフニャフニャだったりします。
そのような問題のあるふくらはぎでも、マッサージ(ふくらはぎもみ)を行うと本来の柔らかさに近づき、体の不調や痛みの改善につながるのです(もみ方は下項参照)。
私が所属するデイサービス施設「ふくらはぎ健康法タオ」では、ふくらはぎもみでさまざまな不調が解消しています。
ここでは、ふくらはぎもみの効果について解説します。
私たちが取り入れているふくらはぎもみは、医師の故・石川洋一先生が考案しました。あるとき、石川先生が脱水症状の患者さんに点滴を投与しようとすると、点滴液がうまく落ちません。患者さんの体に触れてみると、ふくらはぎが妙に冷たいことに気づきました。試しにふくらはぎをさすると、点滴液が落ち始めたといいます。
このことから石川先生は、ふくらはぎを刺激すれば、全身の血流が改善すると確信します。石川先生は研究を重ね、不調や病気の種類によってふくらはぎの内側、外側、中央と、不調のサインが出やすい部位が異なることを発見しました。
サインは、ガチガチの張りやフニャフニャの柔らかさ、または冷えや熱感などとして現れます。「糖尿病の人のふくらはぎは冷たく、柔らかい」「血圧が高い人のふくらはぎは熱くて、硬い」といった具合です。

不調が現れるふくらはぎの部位
血糖値や血圧が安定!自律神経の働きも整う
当初、石川先生が行っていた方法は「痛くても我慢して強くもむ」というものでした。しかし、体調が悪い人ほど、ふくらはぎをもむと痛く感じます。
そこで、私たち柔道整復師の知識や技術を活用し、ふくらはぎの深部をできるだけ痛みなくほぐす方法を考案したのです。現在は、デイサービスにてふくらはぎをもむ施術を行うことで、成果を上げています。
ふくらはぎもみの効果として顕著なのは、血流の改善です。
現代人は運動不足や疲労の影響で、ふくらはぎの筋肉が硬くなったり、筋力が衰えたりしています。当然、ふくらはぎのポンプ作用も低下しています。
このような状態を放置すると、全身を循環する血液量が減って、全身の臓器や筋肉に十分な酸素、栄養が行き渡らなくなります。それが、さまざまな病気、足腰などの痛みといった不調を招くのです。
ふくらはぎをもむことで、筋肉は本来の柔軟性を取り戻します。すると、下半身の血液の滞りが解消され、全身の血流も円滑になっていきます。
糖尿病の方がふくらはぎもみを行うことで、血糖値やヘモグロビンA1c(過去1~2ヵ月の血糖状態がわかる数値で、基準値は4.6~6.2%)が改善した例が、いくつもあります。
肩こりや腰痛、ひざ痛なども軽快します。私たちの施設では、ふくらはぎもみで痛みが消えた人が、つえを忘れて帰る光景がよく見られます。
ふくらはぎには、東洋医学でいう経絡(生命エネルギーである気の通り道)がいくつも通っており、ツボが多くあります。
ふくらはぎもみでツボを刺激すると、自律神経(意思とは無関係に内臓や血液の働きを調整する神経)の働きが整い、さらに多彩な効果が発揮されます。
不眠や耳鳴り、めまいなど、自律神経が関係する症状が改善する方も多くいます。
ふくらはぎもみのやり方
姿勢や力加減は、やりやすいもので大丈夫ですし、痛いときはさするだけでも効果があります。無理なくできる範囲で実践しましょう。
●1日のうち、何回行っても構わない。
●足に打ち身、切り傷、ねんざなどの症状がある場合は控える。
●重症の静脈瘤がある人や、熱が38.5℃以上あるときは行わない。
内側

❶床に座り、片方のふくらはぎを体の中央にくるように引き寄せる。
❷両手の親指を重ねて、内くるぶしに当てる。体重をかけながらひざの手前まで少しずつずらしながら押したら、内くるぶしに戻る。これを3回くり返す。反対の足でも同様に行う。

中央

❶片方のひざを立てて、床に座る。
❷両手の親指を重ねて、かかとの上部に当てる。ひざ裏まで少しずつずらしながら押したら、かかとの上部に戻る。これを3回くり返す。反対の足でも同様に行う。

外側

❶床に座り、片方のひざを内側に倒す。
❷両手の親指を重ねて、外くるぶしに当てる。体重をかけながらひざの手前まで少しずつずらしながら押したら、外くるぶしに戻る。これを3回くり返す。反対の足でも同様に行う。

ひざ頭にふくらはぎを当ててもOK
いすに腰かけて、ひざ頭の上に反対のふくらはぎを押し当てながら上下に動かす。反対側でも同様に行う。あおむけに寝転がりながら、片ひざを立て、反対のふくらはぎを当てて動かしてもよい。


この記事は『安心』2022年7月号に掲載されています。
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