後頭部に手を当てながら舌を動かすと、後頭部の筋肉も連動していることがわかります。これは、舌の動きが頸椎と密な関係にあるためです。「目が疲れたな」「肩や首がこっているな」「夕方になると、周囲が暗く見える」といった症状にお悩みの皆さんはぜひ、このタンセラピーを試してください。【解説】松岡佳余子(アジアンハンドセラピー協会理事・鍼灸師)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

松岡佳余子(まつおか・かよこ)

アジアンハンドセラピー協会理事・鍼灸師。1948年、和歌山県生まれ。鍼灸師。電気鍼による治療「良導絡」の開発者である中谷義雄医師の内弟子として、鍼灸修行をスタート。中国各地の中医薬大学、中医学院にて研修を行う。鍼灸をさらに発展させた手指鍼で、高い効果を上げており、現在は最新療法の研究と後進の指導に注力している。著書に、『輪ゴム健康法』(自由国民社)、『体と心を整える指もみ』(主婦の友社)など多数。

舌を動かすことは頭部全体に好影響!

今回ご紹介する「タンセラピー」の発想は、20年くらい前に生まれたものでした。

東洋医学において舌は、重要な診断ポイントの1つです。舌の状態は、内臓などの体調不良を診断する材料と見なされ、古くから舌診と呼ばれ活用されてきました。私自身、鍼灸師としてスタートした50年前から活用しています。

従来の中医学では、舌診と併せて漢方薬を処方し治療を行いますが、なかには漢方薬を飲んでもなかなかよくならない症状があります。

そうした難治症状を改善するため、私が考えたのは、体調が表れている舌を動かすことで、病状に変化をもたらすことができないかということでした。

後頭部に手を当てながら舌を動かすと、後頭部の筋肉も連動していることがわかります。これは、舌の動きが頸椎(首の骨)と密な関係にあるためです。そこで、舌を動かすことによって、首や肩のコリを改善する方法を検討し始めました。

タンセラピーは、原則として、舌を動かすだけ。この方法なら、寝たきりの高齢者でも行いやすく、コリの解消に役立つと考えられました。

そんな試行を続けているところに、ある知り合いから、この方法は目の症状にも使えないかと問い合わせがありました。

当時タンセラピーは、頑固な首や肩のコリをよくするために始めた健康法だったので、目のことは全く考えていませんでした。

しかし、改めて考えてみると、目にも効果があるのではないかと思い当たりました。頸椎の状態を改善することは、頭部全体にいい影響をもたらすと考えられるからです。

実際、舌と脳とは密接に関連しています。高齢になり、脳が萎縮してくると、それが舌の動きを制限し、活舌が悪くなることは珍しくありません。逆に舌を動かすと、活舌がよくなり、脳も活性化するのです。

そこで、そのかたに早速タンセラピーの指導を行いました。そうしたところ、肩こりに加えて、眼精疲労が確かに楽になったとのことでした。

顔は正面に向けたまま!必ず息を吐きながら!

今回は、2つの方法を紹介します。やり方は下項を参照してください。

1つめが、目の周辺の血流をよくする方法です。

顔の筋肉を動かすことで、目の周囲の血管を刺激し、血流の向上を目指します。この刺激を行うことによって、疲れ目や、加齢による目の症状が改善されるでしょう。

2つめは、首や肩のコリを併発している人ためのタンセラピーです。

目の疾患を抱えている人は、首がひどくこり、血流が悪くなっていることが少なくありません。そうした人たちは、後頭部の生え際の辺りにこっているポイントがあります。

こっているポイントが把握できたら、そこに手を当てて、次に舌を前方に出します。舌を動かしたとき、後頭部の手を当てているところがピクリと動くようなら、正しく刺激ができているということになります。

正しく刺激することができていれば、1回行っただけでも効果が出ます。1回試したあと、首や肩を回してみて、首のコリがほぐれているか確認してみましょう。あまりほぐれていないようなら、今一度くり返してください。

いずれの方法も、頭の位置は固定し、顔は正面に向けたままにすることが原則です。舌を動かそうとすると、首がいっしょに動いてしまう人がいますが、これはよくありません。あくまでも頭は正面に向けたまま。そこで固定しておくことが重要です。

また、舌を動かすときには、必ず息を吐きながら行ってください。これは、体を緊張させたり、よけいな力を生じさせたりしないためでもあります。

なお、行い過ぎには注意してください。なかには夢中になって、舌を力強く出し過ぎてしまう人がいます。行い過ぎれば、首や肩がこってしまって逆効果になります。

首のコリのポイントを確認する。あまり難しく考えずに、「目が疲れたな」「肩や首がこっているな」「夕方になると、周囲が暗く見える」といった症状にお悩みの皆さんはぜひ、このセルフケアを試してください。

タンセラピーのやり方

※1日数回、好きなタイミングで行ってOK。 
※やり過ぎないように注意する。

目の血流を促すやり方

背すじを伸ばして、まっすぐ前を向き、頭を固定する。

画像1: 目の血流を促すやり方

症状がある方の目を手で軽く押さえて、ゆっくり息を吐きながら、上唇をなめるように、症状がある方の目に向けて舌を出す。息を吐ききったら元に戻す。これを5回くり返す。

画像2: 目の血流を促すやり方
画像: ※手を外した状態。実際は手で目を押さえながら行う。

※手を外した状態。実際は手で目を押さえながら行う。

首のコリを取るやり方

首のコリのポイントを確認する。

画像1: 首のコリを取るやり方

Aがこっている場合
Aのポイントに両手の小指側面を押しあてた状態で、ゆっくり息を吐きながら舌をまっすぐ前に出す。息を吐ききったら元に戻す。

画像2: 首のコリを取るやり方
画像3: 首のコリを取るやり方

Bがこっている場合
Bのポイントに両手の小指側面を押しあてた状態で、ゆっくり息を吐きながら舌を下方に出す。息を吐ききったら元に戻す。

画像4: 首のコリを取るやり方
画像5: 首のコリを取るやり方
画像: この記事は『壮快』2022年7月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年7月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

This article is a sponsored article by
''.