解説者のプロフィール

山中章好(やまなか・あきよし)
百合が丘クリニック院長。日本東洋医学会認定漢方専門医・指導医。日本東洋医学会評議委員。東洋医学会東海支部理事・副支部長。東洋医学会三重県部会理事・顧問。三重大学大学院非常勤講師。
1986年広島大学医学部卒業。京都大学医学部附属病院小児科入局。福井県立病院勤務。広瀬病院勤務のときに、東洋医学を独学で始める。百合が丘クリニック開院後、東洋医学の勉強会にも参加。漢方を治療のメインとし、現在に至る。
肝と腎の機能低下により目を養えずに発症!
私は、西洋医学の医師として仕事を始めましたが、その後、東洋医学を学びました。現在では、西洋医学に加えて、漢方の処方も併せて行い、多くの疾患の治療を行っています。
ここでは、緑内障と加齢黄斑変性という目の2つの重大な疾患について、西洋医学的な解説に加えて、漢方を踏まえた食事療法の考え方を皆さんにお示しします。
まず緑内障ですが、これには2つのタイプあります。眼圧が上がって視神経を圧迫し、障害が起こるタイプと、眼圧が上がっていないにもかかわらず、視神経に障害が起こるタイプです。日本人に多いのは、後者のタイプといわれています。
西洋医学的には、緑内障の処置として眼圧を下げ、症状の進行を抑える目薬を処方します。しかし、日本人の場合、そもそも眼圧が高いわけではないために効かない、ということが少なくないのです。
この正常眼圧緑内障は、目の網膜や血管などの組織が老化によって疲弊して起こると考えられます。その結果として、視神経に血液が十分に届かず、ぼやけて見えたり、視野が欠けたりするのです。
では、東洋医学的に考えるとどうなるでしょうか。漢方では、私たちの体調を整える役割を果たしている、「気」「血」「水」という3つの循環が重要だと考えられています。
眼圧の上がるタイプは、特にその初期の段階では、目において、3要素のうちの水(血液以外の体液)の流れが停滞し、水がたまっていると考えます。水がたまって、熱を持っている場合もあるでしょう。こういう場合、たまっている水を滞りなく流すことが必要になります。
一方、正常眼圧緑内障の場合、東洋医学的には、「肝」と「腎」が弱り、陰虚(いんきょ)という状態になっていると考えます。
東洋医学の考えでは、肝、腎のほか、肺、心、脾と合わせて五臓の要素があります。これは直接臓器を指すというより、その臓器も含めた関連機能全般を指すと考えてください。
このうちの肝と腎の機能の低下によって目を養えずに、緑内障へとつながるわけです。こうしたケースでは、弱っている肝と腎を補うことが原則になります。
また、そのなかでも、肝だけが衰えると、肝血虚という状態になります。この場合、体はとても冷えています。
続いて、加齢黄斑変性です。西洋医学的には、加齢黄斑変性は、網膜の中央にある黄斑部が変性していく病気です。食事の欧米化の影響を受けて、患者数が年々増加しています。
東洋医学的には、黄斑部の浅いところが乾く病変とされています。これが悪化すると、黄斑部のもっと深いところに変性が起こります。
この段階では、正常眼圧緑内障とも共通しますが、肝と腎が陰虚という状態になっています。血液の流れがうっ滞し、瘀血(おけつ)という状態が起こってくることもあります。
そこで、胃腸の働きを整え、足りなくなっている肝と腎を補い、滞っている血を流すというのが、加齢黄斑変性の対策になります。
眼科を受診したうえで食による体質改善を!
では、どんな食材が勧められるでしょうか。代表的な食材を下の表にまとめたので、ご参照ください。
緑内障・加齢黄斑変性対策にお勧めの食材
症状(働き) | 食材 |
緑内障 (水分を排出する) | アズキなどの豆類、キュウリなどのウリ類、コンブなどの海藻類 |
緑内障 (熱を取る) | ナシ、リンゴ、スイカ、ミカンなどのフルーツ |
加齢黄斑変性 (乾きを潤す) | ヤマイモ |
どちらにも (肝と腎を補う) | クリ、クルミ、ハスの実、黒ゴマなど |
どちらにも (肝と血を補う) | イチゴなどベリー類、マグロなどの赤身の魚、レバー |
推奨できるレシピとしては、例えば、「コーンミールとクコのかゆ」などがいいでしょう。コーンミールはトウモロコシの粉です。目の熱を冷まし、余分な体の水分の排出を促します。クコは、肝と腎を補う強力な力があるとされています。簡単にできるおかゆですので、ぜひ試してみてください。
また、「ダイコンとタラのスープ」もお勧めです。タラも、肝と腎を補う強力な食材で、ダイコンが余分な目の水分を排出してくれます。
自分の目の状態に合わせて、いろいろ食材を工夫しながら取り入れてほしいのです。
なお、緑内障も加齢黄斑変性症も、ただ食事を変えればいいというわけではなく、眼科を必ず受診してください。そのうえで、食による体質改善を進めていくことが原則となります。
これまで悪かった体の機能を改めて、よりよき方向へ推進していくために、東洋医学的な知恵を活用していただければと願っています。

この記事は『壮快』2022年7月号に掲載されています。
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