プロフィール

大場久美子(おおば・くみこ)
1960年生まれ。73年から子役として、舞台・テレビ・CM・映画等に出演。77年に歌手デビュー。女優業だけでなく、幅広く活躍する。99年から約8年にわたり、パニック症を患う。その克服をきっかけに認知行動療法を学び、2009年に心理カウンセラーの資格を取得。現在は脳活性トレーナーや、認知行動療法士、足底反射療法士、音楽健康指導士など多くの資格を取得し、さらに活動の幅を広げている。
パニック症が不安で手術に踏み切れなかった
私は子供のころから「ド」がつくほどの近眼でした。視力が0.3くらいしかなく、小学生のときにはすでにコンタクトレンズを入れていました。
成長するにつれて視力はさらに低下。0.01まで下がり、さらに乱視も加わって、40歳を過ぎてからは老眼も始まりました。
白内障とわかったのは、4年ほど前です。テレビ番組の企画で、体に力を入れ過ぎたため、網膜剥離になってしまいました。その際、病院で「白内障が始まっている」と指摘され、手術を勧められたのです。しかし、決心がつかないまま2年ほど放置していました。
その理由は、パニック症です。実は39歳から10年間近く、パニック症を体験しました。すでに克服したとはいえ、手術中に「閉じ込められている」という恐怖心が出たらどうしよう、という不安があったのです。
そうこうしているうちに、白内障はどんどん進行して、ついには目の前が、霧がかかったように白くかすんでしまいました。何を見るにも、顔を近づけないとわかりません。
はっきり見えないまま文字を読み続けると、頭が痛くなりました。また文字を書こうにも手もとがよく見えませんし、物を手に取ろうとしても、つかむのは空気ばかりです。このころは、よくいろいろな物にぶつかっていました。
「手術しないと無理かな」と思い始めたころ、白内障の「多焦点レンズ」の手術が2020年4月以降、先進医療保険の対象外になると聞きました。
それまで、踏み切れないまでも白内障の手術については調べていて、入れるなら多焦点レンズがいいと思っていました。
多焦点レンズは、保険が利かないと両目で100万円以上かかります。ですから、急いで2月に診察を受けて、滑り込みで3月に手術を受けました。

手術直後の大場さん
よく見え過ぎて慣れるまでに1週間
初めに右目、1週間後に左目の手術を受けましたが、不安だった閉じ込められるといった焦りも起きずにひと安心。手術は点眼麻酔で、術中も術後も痛みは全くありませんでした。
手術の前後2週間はコンタクトレンズが使えません。それで術後のために、片方だけレンズを入れたメガネを作り、準備していたのですが、そんなものは必要ありませんでした。
なぜなら裸眼でも、ものすごくよく見えたからです。クッキリと見えるだけでなく、色まで鮮やかになりました。部屋の壁紙や、壁に掛かっている絵まで、「こういう色だったんだ!」と驚いたほどです。
術後、あまりによく見え過ぎて、慣れるまでは目が疲れて頭が痛くなることもありましたが、1週間ほどで慣れました。
多焦点レンズは、複数の焦点に合わせられるレンズです。私の場合は、手もと40cmと遠くに焦点を合わせてもらいました。これは、自分の生活習慣から焦点をどこに合わせるのが最適かを、手術前に担当医と話し合って決めたことです。ですから人によって、最適な焦点距離は異なると思います。
手術から2年経った今もよく見えています。メガネもコンタクトレンズも必要なくなりました。
私があまりにもよく見えるようになったので、「白内障になって手術を受けたい」と不謹慎なことをいう人がいるほど、私の周りの人たちも驚いています。
白内障の手術が不安で、躊躇していらっしゃるかたは少なくないと思います。その気持ちはとてもよくわかります。私自身の体験からいえるのは、何事もメリット、デメリットがあるということです。メリットのほうが大きいのなら、手術は受けたほうがいいのではないでしょうか。
また手術を決めたら、自分の生活習慣をよく把握して、レンズを決めることをお勧めします。
白内障の手術は安全性が高く健康保険が適用
聖路加国際病院眼科医長 永井紀博
白内障の手術は安全性も高く、手術の適応があれば、お勧めできます。費用に関しては、最低で約1万5000円程度。これは健康保険が適用されるためです。多焦点レンズは国内で認可されている物とそうでない物があります。主治医とよく相談して、納得できる選択をしましょう。

この記事は『壮快』2022年7月号に掲載されています。
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