解説者のプロフィール

山田真(やまだ・まこと)
まほろば鍼灸整骨院院長。美骨痩身サロンBELUNA代表。柔道整復師、はり師、きゅう師。1972年生まれ。明治東洋医学院専門学校柔整学科卒業。森ノ宮医療学園専門学校鍼灸学科卒業。2009年、大阪府吹田市にまほろば鍼灸整骨院を開院。著書に、『「足指」の力 体の不調がスッと消える3分つま先立ち体操』(コスモ21)がある。
足指を鍛えたら全身の不調が改善した!
私は日ごろ、来院するさまざまな症状の患者さんに対し、足指の矯正を中心に施術を行っています。理由は、体全体を支える足もと、とりわけ足指をうまく使えていないことが、全身の痛みや不調を招いているケースが非常に多いからです。
足指を使えないことが、なぜ全身の不調につながるのでしょう。最初にそのことからご説明しましょう。
体の筋肉は、1つ1つ独立した存在というわけではなく、互いにつながりあって機能しているものです。
私は特に、体の「前面」の筋肉の流れと、「後面」の筋肉の流れという、2つのルートのバランスが重要だと考えています。
前面ルートは、足の甲→すねの前面→太ももの前面→骨盤の前面→おなか→胸→首の前面という筋肉のつながりです。後面ルートは、足の裏→ふくらはぎ→太ももの後面→お尻→腰→背中→首の後面の筋肉というつながりです。
いずれのルートも、起点は足もとにあることに注目してください。足の前側(足の甲)と後ろ側(足の裏)の筋肉が正しく使えれば、前面ルート、後面ルートの筋肉がバランスよく働き、体によけいな負担をかけることなく動けます。
ところが、足指が反っていたり、丸まっていたりと、いわゆる浮き指になっていると、足の甲や足の裏がかたくなり、正しく機能しません。
例えば、指が反り上がって地面から浮いている状態のかたは、足の甲が収縮することで、太ももの前面やおなかなど、前面ルートのほかの筋肉も収縮します。それにより、後面ルートの筋肉も不必要に引っ張られてしまいます。
また、足指が丸まって地面にきちんと着いていない状態のかたは、足裏の筋肉が十分に機能していないので、ふくらはぎや背中など体の後面ルートの筋肉がうまく使えません。
いずれも結果として、全身の筋肉の使い方のバランスがくずれ、ひざや腰、肩などに負担が生じ、痛みが生じてしまうというわけです。

①足指が反り上がったタイプ
足指が反り上がり、足の甲が収縮している。体の前面の筋肉を過度に使っている。

②足指が丸まっているタイプ
足指が丸まって地面から浮いている。足裏の筋肉が弱く、体の後面の筋肉が使えていない。
足指をしっかり使えるようにすれば、足もとを起点とした前面ルート、後面ルートの筋肉をバランスよく使うことができ、さまざまな体の不調を取り除くことにつながります。
このようなことに気づいたのは、自分自身の経験がきっかけです。私は今から10年ほど前、さまざまな体の不調に悩んでいました。歩行時の足指の痛みのほか、座骨神経痛、腰痛、肩こり、首の痛みや、側頭部にかけての頭痛など、症状はさまざま。そして不思議なことに、そのすべてが左半身に集中して起こっていました。
ある日、なにげなく自分の足を見ると、右の足指はしっかり伸びて地面に着いているのに、左の足指は丸まって地面から浮いていることに気がつきました。
「もしかするとこれが不調の原因では?」 と思った私は、足指を鍛える運動を習慣として行うようにしました。すると、左の足指が伸びるとともに、歩き方が安定。不調もどんどん改善していったのです。
足指のたいせつさに気がついた私は、以来、患者さんにも足指を中心にした施術を行い、足指を強化するセルフケアを教えるようになりました。
足のこわばりを緩めると外反母趾にも効果的
ここで、私自身が実践している足指強化のためのセルフケアのやり方をご紹介しましょう(詳しくは下項参照)。私は「つま先歩き立ち体操(つま先立ち)」、「つま先立ちウォーク(つま先ウォーク)」と名づけ、患者さんにも勧めています。
まずは足をやわらかくする準備運動から始めます。
足指をうまく使えていない人は、多くの場合、足の甲や指先がかたくなっています。準備運動はそのこわばりを緩めることが目的です。これにより、体の前面ルート、後面ルートの筋肉の起点を整えるわけです。この運動は、扁平足や外反母趾の矯正にも効果的です。
準備運動が終わったら、つま先立ちに進みます。これは、かかとを上げ下げするエクササイズです。
ポイントは、両足のかかとを着けて、つま先を逆ハの字にしてつま先立ちを行うことです。お尻を締め、肩甲骨も内側に寄せることで、体幹を安定させて、体の後面の筋肉をしっかり使えるようにします。
足指強化のためのセルフケアのやり方
※準備体操、つま先立ち、つま先ウォークともに、いつ行ってもよい。お勧めは朝晩1日2回行うこと。忙しい場合は夜だけでもOK。
※高齢のかたや、足腰の弱っているかたは、つま先立ち、つま先ウォークは必ず壁などにつかまりながら行う。
準備運動
STEP1 足指を広げる
❶各中足骨(足指のつけ根から足の甲に向かって伸びる骨)の間を、手の親指と人指し指で、足の甲側と、裏側からつまんで押す。中足骨の間ごとに、5~6回ずつ行う。

❷足の親指(母趾)と人差し指(第2趾)の間と、小指(第5趾)と薬指(第4趾)の間の中足骨間を、両手の親指で押さえて、足の裏にアーチができるよう内側に巻き込み、5秒キープする。

STEP2 浮き指を矯正する
足の裏側の親指のつけ根を、反対の手の人差し指と中指の指の腹で押さえる。押さえている手の指をかかと方向に引っ張り、足の親指をおじぎさせるように10回動かす。これを両足とも、足のすべての指で行う。

つま先立ち
❶壁に両手をつき、両足のかかとを着ける。つま先を広げて逆ハの字にする。お尻の筋肉を内側にキュッと寄せる。左右の肩甲骨も同様に内側に寄せる。

かかとを着けて足を逆ハの字に!
❷両足のかかとを着けたまま、ゆっくりかかとを上げていく。無理のない高さまで上げ、そのまま2~3秒静止してから、ゆっくり下げる。これを10回くり返す。慣れてきたら、30回を目標にする。

足の親指に力を入れて、踏みしめるイメージで!
つま先ウォーク
上のつま先立ちがスムーズにできるようになったら、壁を離れ、つま先立ちの状態で数歩歩く。ひざを曲げず、股関節を伸ばすことをイメージして行う。1日数分が目安。


この記事は『壮快』2022年7月号に掲載されています。
www.makino-g.jp