解説者のプロフィール

谷政八(たに・まさはち)
仁愛大学名誉教授。東京農業大学農学部農芸化学科卒。1971年より仁愛女子短期大学専任講師、助教授、教授を経て、2009年より仁愛大学人間生活学部健康栄養学科教授。16年に名誉教授。その間、産学官連携の共同研究に携わる。福井県立病院倫理委員会院外委員なども務める。共著に『基礎から学ぶ生化学(改訂第3版)』(南江堂)、『コレステロール・中性脂肪が下がる 厳選100のコツ』(主婦の友社)。ほか、編集代表の書籍が多数ある。
サツマイモでは約20%、食パンでは約29%も抑制
仁愛大学のある福井県では、ラッキョウの生産が盛んです。
福井県民はラッキョウをよく食べており、特に毎日食べている人は、健康的で糖尿病を患っていることが少ない、といった傾向が見られます。
こうした現象を目の当たりにして、私はラッキョウに興味を惹かれました。そして、仁愛大学人間生活学部教授の池田涼子先生らとともに、食品栄養学や栄養生化学の観点からラッキョウを研究してきました。その研究成果と併せて、ラッキョウの効能を解説しましょう。
ラッキョウはニンニクやネギの仲間の多年草で、漢方では生薬(漢方薬の原料)として使われています。このことから、何か効能のある成分が含まれているのではないか、と考えて着目したのが「ラッキョウフルクタン」(ラッキョウの含む水溶性食物繊維)です。
ラッキョウフルクタンは、食後の血糖上昇を緩やかにする作用があることが、私たちの研究からも判明しています。
平均年齢20歳の健康な女子大学生12人を対象に、5gのラッキョウフルクタンを加えた糖液を飲んだ群と、糖液のみを飲んだ群で血糖値を調べました。
すると、ピークを迎える摂取30分後で、両群の平均血糖値に有意な差が認められたのです。糖液に含まれる糖分が50gの場合、前群は後群と比べて血糖値が8割程度に抑えられました。糖分が75gの場合も同様の結果が見られました。このとき血圧の変化も調べましたが、両群とも影響は見られませんでした。
別の臨床試験では、ラッキョウフルクタンと、糖液や炭水化物を多く含む食物を、同時にとったときの血糖値の影響を調べました。
被験者は平均年齢20歳の健康な女子大学生6人。糖液、食パン、白米、サツマイモの4種類(いずれも食品糖質量を50gに調整)で、ラッキョウフルクタン5gを加えた群と、加えなかった群の血糖値を比較したところ、前群は後群と比べていずれも抑制効果が見られました。
糖液では約16%(摂取30分後)、食パンでは約29%(摂取後30~150分)、白米では約10%(摂取30分後)、サツマイモでは約20%(摂取30分後)、血糖値がそれぞれ低下したのです。

『仁愛大学研究紀要人間生活学部篇第2号』「食物摂取後の血糖値上昇に及ぼすラッキョウフルクタンの影響」をもとに作図
このような臨床試験から、ラッキョウを習慣的に食べることは、高血糖や、いわゆる血糖値スパイクの予防に役立つといえるでしょう。
ミネラルの吸収を促進!骨の強度も増した
また、ラッキョウフルクタンを与えたラットの骨が強化されたという実験を通して、ラッキョウが骨代謝に影響を与える可能性も検討しました。
この実験では、カルシウムやリンといったミネラル吸収の促進が見られました。さらに大腿骨(太ももの骨)について調べたところ、骨自体の強度も増したことがわかりました。これらはラッキョウフルクタンの作用で骨のミネラル量が増加したものと考えられます。
ただし、ラットと人間では体の構造が違います。ラッキョウフルクタンによるミネラル吸収の促進効果には、ラットの非常に発達した盲腸が大きくかかわっていることを考慮しなくてはなりません。人間でも全く同様の効果を得られるかは、検討を続ける必要があります。
ではラッキョウをよく食べる人についてはどうでしょう。冒頭でも述べた福井県の住民や、同様に生産が盛んでラッキョウをよく食べる鳥取県の住民は、腰が曲がっている人が少ないのです。こうしたことから、ラッキョウが骨粗鬆症の予防に役立つ可能性は否定できません。
いずれにせよ、ラッキョウは血糖値の抑制をはじめ、私たちの体に好影響を与える食品といえるでしょう。皆さんも、日々の食生活にラッキョウを取り入れてはいかがでしょうか。

この記事は『壮快』2022年7月号に掲載されています。