ラッキョウに含まれる食物繊維総量は、100g当たり20.7gもあり、野菜のなかでダントツの1位です。そのうち便秘解消にエビデンスがある、水溶性食物繊維は18.6gで、これもまた優秀。実は、水溶性のほうが不溶性より多い野菜は、ラッキョウ、エシャロット、ニンニクの3種しかなく、その中でもけた違いの量なのです。【解説】前田孝文(南流山内視鏡おなかクリニック院長)

解説者のプロフィール

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前田孝文(まえだ・たかふみ)

南流山内視鏡おなかクリニック院長。2001年、京都府立医科大学医学部医学科卒業。医学博士。自治医科大学附属さいたま医療センターなどでの勤務を経て11年に同センター外科臨床助教。12年より辻仲病院柏の葉に勤務。17年に千葉県内で初の便秘専門外来を開設。21年に南流山内視鏡おなかクリニックを開院。西洋医学のほか、鍼治療や整体、食事療法を取り入れ治療に当たる。著書に『男の便秘、女の便秘』(医薬経済社)。日本消化器内視鏡学会専門医・指導医などの資格を持つ。
▼南流山内視鏡おなかクリニック

水溶性の食物繊維がけた違いに多い!

カレーの薬味や箸休めとして重宝される野菜、ラッキョウ。毎日食べるという人は、あまりいないかもしれません。しかし私は消化器内科医として、ラッキョウの有用性に着目しており患者さんにも積極的に食べるよう勧めています。

「便秘には食物繊維」というのは、もはや常識です。けれども種類を問わずせっせと食べればいいわけではありません。食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があり、このうち便秘解消に確たるエビデンスがあるのは、水溶性食物繊維のほうです。

便秘外来を始めた当時、患者さんにどんな食品を勧めるのがいいかと考えました。文部科学省が公開する日本食品標準成分表を調べたり、農林水産省の定めている日本人がよく食べる野菜(指定野菜14品目や特定野菜35品目など)の食物繊維量を洗い出したりするうち、ある共通項を発見しました。鱗茎類に食物繊維が多いということです。

鱗茎とは、土の中に埋まっている茎の一種で、鱗状で肉厚の葉が重なった構造をしています。実は鱗茎は、園芸の分野でいう球根と同じです。これは私の推測ですが、鱗茎類に食物繊維が多いのは、根に栄養を多く蓄えるためかもしれません。

主な鱗茎類といえば、ユリ科のユリ根、ネギ科のタマネギやエシャロット、ニンニク、そしてラッキョウが挙げられます。

ラッキョウに含まれる食物繊維総量は、100g当たり20.7gもあります。これは、野菜のなかでダントツの1位です。

そのうち水溶性食物繊維量は18.6gで、これもまた優秀。実は、水溶性のほうが不溶性より多い野菜は、ラッキョウ、エシャロット、ニンニクの3種しかなく、ラッキョウは2位のエシャロット(9.1g)や3位のニンニク(4.1g)に比べても、けた違いの量なのです。

便秘の患者さんに、ただ「食物繊維の多い野菜を食べましょう」と伝えても、具体性に欠けます。けれども「ラッキョウを食べてみて」というと、取り組みやすいようです。「ラッキョウを頻繁に食べるようにしたらおなかの調子がよくなった」とおっしゃるかたもいます。

乳酸菌がとれる甘酢漬けも腸活に役立つ!

ラッキョウの有効成分は、大きく分けて2つあります。

ひとつは、述べてきたとおり、豊富な水溶性食物繊維です。食物繊維にも種類がありますが、ラッキョウに多いのは「フルクタン」。これは、アスパラガスやワケギ、キクイモなどにも含まれます。近年にわかに注目されているイヌリンという食物繊維も、フルクタンの一種です。

そしてもうひとつが、タマネギやニンニクのにおい成分としても有名な、硫化アリルです。フルクタンと硫化アリル、両方が作用することで、主に次に挙げるような健康効果が期待できます。

腸の動きの活性化・便のかさ増し(便秘解消)
血糖値の上昇を抑制(糖尿病の改善)
血中のコレステロールや中性脂肪の減少(高血圧や動脈硬化、脂質異常症、肥満の改善)
免疫機能の向上(アレルギー症状の改善、感染症の予防)
環境汚染物質や添加物の排出促進(デトックス)
ミネラルの吸収促進(代謝アップ、疲労回復、滋養強壮)

画像: 乳酸菌がとれる甘酢漬けも腸活に役立つ!

ラッキョウからこれらの効果を引き出すために、最もお勧めの食べ方は、生食です。

前述した食物繊維の含有量は、生ラッキョウの計測値ですから、スライスオニオンや、小口切りにしたネギのように、刻みラッキョウをさまざまな方法で食べてみてください。エシャロットのように、みそを漬けてかじるのも新鮮味があります。

生が好みでない場合、加熱しても食物繊維量はさほど失われないので、炒めラッキョウ、焼きラッキョウもいいでしょう。

甘酢漬けは最も一般的な食べ方ですが、少し栄養成分に変化が生じます

本格的な甘酢漬けは、酢で漬ける前に塩漬けにして乳酸発酵させます。この過程で乳酸菌がラッキョウの食物繊維をエサにして増えるので、食物繊維量が減少。かわりに乳酸菌を摂取できる利点が生まれます。有用菌と有用菌のエサを同時にとることをシンバイオティクスといい腸活に大いに役立ちます。

これから旬を迎えるラッキョウ。1日4~5粒をおいしく食べるうちに、きっとおなかにいい影響が現れるでしょう。

画像: この記事は『壮快』2022年7月号に掲載されています。 https://www.makino-g.jp/book/b605811.html

この記事は『壮快』2022年7月号に掲載されています。

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