脊柱管狭窄症にお悩みの方にお勧めしているセルフケアが、「ツボたたき」です。今回は効果が期待できる、「邁歩」「風市」のツボをご紹介しましょう。大事になるのは、力加減です。「痛気持ちいい」と感じるくらいの力加減で行います。「体の奥、骨に刺激を響かせる」イメージです。【解説】孫維良(東京中医学研究所所長)

解説者のプロフィール

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孫維良(そん・いりょう)

東京中医学研究所所長。天津中医薬大学客員助教授。来日後は、推拿を実践しながら、臨床中医推拿塾を開講。推拿の普及を目指し、治療家の育成にも励んでいる。
▼東京中医学研究所

ツボたたきは誰でも容易に行える!

私は、推拿(すいな:中国伝統医学による整体術の一種)の手技で、痛みに悩む皆さまの体を見ています。

もともとは、祖国・中国にある天津中医学院第一附属病院に所属し、そこで推拿科医師として研鑽を積みました。その後、日本にわたって30年以上、痛みやこりなどにお困りの方々を見てきました。

ここ何年かでよく聞くようになった悩みが、「脊柱管狭窄症」です。その、脊柱管狭窄症にお悩みの方にお勧めしているセルフケアが、「ツボたたき」です。

ツボたたきは、こぶしを握りこみグーを作り、トントンとツボをたたいて行います。利点はいくつかありますが、第一にツボを面で広く刺激できること。

通常、ツボの指圧は指先を使って点で行いますが、知識と経験がなければ、本来の効果を引き出すのは難しいものです。その点、ツボたたきは誰でも容易にツボを捉えられます。

ツボへの刺激を深部に届けられることも利点です。私は自身の臨床経験から、慢性的な痛みやこりに対してのツボ療法は「骨まで届くように、刺激を“深く”響かせる」ことが大切だという持論を持っています。

例えば、ケガや筋肉痛のような急性症状の場合は、皮膚の上からその箇所を触れたり、つまんだりするだけで痛いものです。

ところが、慢性痛の患者さんでは、皮膚の表面や浅い筋肉を押したり、つまんだりしても痛みはありません。しかし、骨を狙って深く刺激すると「痛い!」という反応がみられます。

ツボは深い位置を刺激することが肝要

ツボ療法は「痛みをもって痛みを制する」ものなので、このように深い部位を狙わないと、脊柱管狭窄症のような慢性的症状はなかなか改善しません。

では、脊柱管狭窄症に効果が期待できる2つのツボをご紹介しましょう。

【邁歩(まいぶ)

ツボは気の通り道である経絡(全身を巡る生命エネルギーの通り道)上に存在するものがほとんどです。この経絡を外れたところにあるツボを「奇穴」と呼んでいます。邁歩も近年、新たに認められた奇穴で、「足を踏み出す」という意味があり、歩行機能に関連したツボです。

座骨神経痛の痛みの改善や、脚部の痛みやしびれで歩けなくなる間欠性跛行の予防が期待できます。なお、間欠性跛行の予防には、歩き出す前に行っておくと効果的です。

【風市(ふうし)

脊柱管の狭窄によって座骨神経が圧迫されると、お尻から太ももの裏、ふくらはぎから足先にかけて広い範囲に痛みやしびれが生じます。こうした座骨神経の鎮痛ツボが風市です。

風市というツボの名には、「風が集まる穴」という意味があります。中国医学では、痛みをもたらす原因の一つに「風・寒・湿の停滞」による経絡のつまりがあると考えます。

風市は、この「風・寒・湿」を除いて経絡を通し、お尻から脚部への痛みやしびれを緩和する効果があるのです。

 
大事になるのは、力加減です。「痛気持ちいい」と感じるくらいの力加減で行います。「体の奥、骨に刺激を響かせる」イメージです。特に、たたいたときに響く感じがある場所を重点的に行うようにしてください。

ツボたたきのやり方

周囲をたたいてみてよく響く感じがするところを探って、そこを重点的に刺激する。
力加減は、筋肉と骨に刺激が届くイメージ。強くし過ぎないよう注意。

邁歩

ツボの位置
ひざ頭と股関節の付け根の中間

画像1: 邁歩

いすに腰かけ、両手を握ってこぶしを作る。
邁歩を左右同時にトントンと1~3分間たたく。

画像2: 邁歩

風市

ツボの位置
立って気をつけをしたときに、両手中指の爪先が当たる位置

画像1: 風市

いすに腰かけ、両手を握ってこぶしを作る。
風市を両手で左右同時にトントンと1~3分間たたく。

画像2: 風市

[別記事:病気の原因から手術の相談まで脊柱管狭窄症がよくわかるQ&A→

画像: この記事は『安心』2022年6月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年6月号に掲載されています。

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