解説者のプロフィール

石原新菜(いしはら・にいな)
イシハラクリニック副院長、医師。帝京大学医学部卒業後、大学病院での勤務を経て、現在、自然医学の泰斗で医学博士の父、石原結實氏が院長を務めるイシハラクリニックで、漢方医学、自然療法、食事療法により、さまざまな病気の治療に当たっている。雑誌をはじめ、テレビやラジオなどのメディアへの出演が多数。『女のキレイは30分で作れる』(マキノ出版)、『酢ショウガで体すっきり!ずっと健康 』(宝島社)など、ショウガや健康に関する著書、監修書多数。テレビやラジオなどのメディアへの登場も多い。
▼イシハラクリニック
[別記事:病気の原因から手術の相談まで脊柱管狭窄症がよくわかるQ&A→]
ショウガも酢も体を温める効果がある
脊柱管狭窄症とは、背骨の中にある脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されることで足や腰などに痛みやしびれが生じる病気です。
「酢ショウガ」は、この脊柱管狭窄症の方にお勧めです。酢ショウガの材料であるショウガの鎮痛効果に関しては、海外でいくつかの報告があります。
例えばデンマークのオデンセ大学では、リウマチと変形性関節症の患者さんにショウガを数ヵ月間とってもらい、8割以上が痛みの軽減を実感しました。
イランの大学で生理痛に悩む女性を対象に行われた研究では、ショウガエキスは消炎鎮痛薬のイブプロフェンと同等の鎮痛効果が確認できたそうです。
ショウガの鎮痛効果は、ショウガの辛味成分であるショウガオールの血流改善と体温を上げる効果によるものでしょう。
冷えによって血管が収縮すると、体は血流を維持するために血管内皮細胞からプロスタグランジンなどの生理活性物質を分泌します。プロスタグランジンは痛みを引き起こす発痛物質でもあり、多く分泌されると痛みを感じます。
ショウガオールは、血管を拡張して血流をよくする働きがあり、プロスタグランジンなどの発痛物質の分泌を減らすことができます。
また、体脂肪や糖の燃焼を促すことで、体温を上げる効果もあります。
体を温める効果は酢にも期待できます。食事でとった糖や脂肪は、体内ではさまざまな過程を経てアセチルCoAという酸に分解され、クエン酸に変化します。その後、さらに変化を続けますが、最終的にクエン酸に再合成されます。
このクエン酸の変化の過程は「クエン酸回路」と呼ばれ、細胞の活動に必要なエネルギーが作られます。
クエン酸回路は、新たなクエン酸の補給で活性化し、体温も上がりやすくなるといわれています。酢の酸味は酢酸やクエン酸によるものです。酢酸もクエン酸と同様、体内ではクエン酸回路の活性化に役立つと考えられています。
8000歩のウォーキングができるようになった
酢ショウガは、刻みショウガをレンジで加熱してから酢に漬けて作ります。酢は、米酢・リンゴ酢・黒酢など、お好みのもので構いません。
酢ショウガは、そのまま食べるのはもちろん、サラダや冷奴、納豆などに加えても楽しめます。お湯や焼酎などで割って飲むのもよいでしょう。ただ、ショウガの体を温める効果は数時間しか持続しません。1日に大さじ2~3杯を目安に、こまめにとるのがよいでしょう。
60代の女性Aさんは、脊柱管狭窄症による腰痛で来院。足にも力が入らない状態でした。そこで漢方薬を処方し、同時に酢ショウガの常食とウォーキングを勧めました。すると1ヵ月で腰痛は軽減。痛みが改善したことで、足に力が入るようになったのです。
その時点で漢方薬の服用は止めましたが、痛みが増すこともなく、Aさんは週に4~5日、8000歩のウォーキングができるまでに回復しています。
酢ショウガの常食で脊柱管狭窄症をはじめとする慢性痛が緩和した例は、数多くあります。治療の補助として、ぜひ酢ショウガをお試しください。
酢ショウガの作り方
※1日大さじ2~3杯を目安に食べる。一度にたくさん食べるのではなく、こまめにとるとよい。

材料
・ショウガ……200g(市販のもので2~3個)
・酢……約200ml(ショウガが浸る程度の量)
・ハチミツ……大さじ1(好みで増減してもよい)
・密閉できる保存瓶……1本(ガラス製がお勧め)
※使用する酢は、米酢、黒酢、リンゴ酢、きび酢など、醸造酢であればなんでもよい。

❶ショウガはよく洗い、皮をむかずにみじん切りにする。

❷①を耐熱容器に入れ、少量の水(分量外:大さじ1~2程度)を加えてラップをかけ、電子レンジ(600W)で1分30秒ほど加熱する。
※加熱することにより、ショウガの体を温める効果がアップする。
※水を加えるのは、加熱中にショウガが焦げるのを防ぐため。


❸②の粗熱が取れたら、保存瓶に移し、酢を注ぎ入れる。ハチミツを加えて、全体を軽くかき混ぜる。

❹ふたをして冷蔵庫で一晩漬け込めば出来上がり。冷蔵庫で保存し、2週間以内で食べ切るようにする。

この記事は『安心』2022年6月号に掲載されています。
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