プロフィール

蝶野正洋(ちょうの・まさひろ)
1963年9月17日生まれ。身長186cm。1984年に新日本プロレスに入門し、「闘魂三銃士」として同期入門の武藤敬司、橋本真也とともに団体の人気レスラーとなる。現在はリング以外にも活動の幅を広げ、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系列)では欠かせない存在となる。過去、子ども向け教育番組『Let’s天才てれびくん』(NHK Eテレ)にレギュラー出演するなど幅広い層に支持される。
脊柱管狭窄症は決め技ケンカキックの代償
皆さま、初めまして。プロレスラーの蝶野正洋です。私は、ヒールレスラー(悪役)として1980年代からリングに上がっています。
近年は、テレビ番組『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系列)の年末特番で、タレントの浜田雅功さんや月亭方正さんと共演しているので、それで私を知った方も多いかもしれません。
そんな私も、腰部脊柱管狭窄症に苦しめられ、昨年12月に手術を受けました。
異常が現れたのは2年前のこと。カミさんに「背中がおかしいよ!」と言われ、側弯症(背骨が横に曲がる病気)が生じていることに気づいたのです。それとほぼ同じ時期に、腰や足に痛みが出始めて、しびれも起こるようになりました。
側弯の原因は、おそらく私の決め技の「ケンカキック」の影響だと思います。この技は、走りながら、片足を蹴り上げて対戦相手の顔にキックするもので、踏ん張る軸足(左足)に負担がかかるんです。それが災いし、左ひざが悪くなりました。かばって歩いているうちに体のバランスがくずれて、側弯症になってしまったのでしょう。
そこで病院に行くと、腰椎ヘルニアと脊柱管狭窄症が併発していることがわかったのです。2020年春頃のことでした。
特に悩まされたのは、鼠蹊部(足の付け根)の激痛です。最初は左ひざに加えて、股関節まで悪くしたのかと思いましたが、これは脊柱管狭窄症によって腰の神経が圧迫されて起こっているとのことです。
そして、もともと悪かった左足だけでなく、右足も動かしづらくなりました。ついに、両手で2本のつえをついて、なんとか歩くようになったのです。
ペインクリニック、鍼灸院や整体など、いろいろ通いましたが、痛み、しびれ、動かしやすさのどの点でも、満足のいく改善はみられませんでした。
ただ、神経ブロック注射(神経や神経の周辺に麻酔薬を注射し、痛みをなくす治療)は、初期だけ非常に痛みが和らぎました。この注射は、腰から神経に直接針を刺すものです。とにかく痛いんですよ。
しかし、徐々に体が薬に慣れたせいか、効きが悪くなってきて、注射をして1時間もしないうちに痛みがぶり返すようになりました。
1週間も便が出ない!排尿障害にも苦しむ
他にも、1週間以上も便秘が続いたり、おしっこの出が悪くなったりしました。「年齢のせいか?」なんて思っていたのですが、これもよくよく考えれば、脊柱管狭窄症からくる排尿障害の症状だったのです。
そして、2021年の秋には、症状が一気に悪化……。ますます痛みが強くなりました。あおむけにはなれないので、寝るときは横向きで腰を丸めていました。それでも耐えがたい痛みでなかなか寝つけず、やっと眠りについても1時間もしないうちに、痛みで目が覚めるのです。
日中はボーっとして集中力を欠き、何もできません。昼過ぎに少し横になっても、また痛みで起きて満足に寝られないという負の連鎖から抜けられません。頭の中は、四六時中痛みと睡眠不足に占められました。
また、歩行もどうにもならない状態でした。つえを2本使って、100mなんとか歩くというような状態です。まさに「ガッデム!」ですよ。
困り果てていたら、毎年出演していた大みそかの『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』の特番が「今年は休止」との知らせを受けました。
そのことで、「手術するなら今!」と決心がついたのです。

つえなしで歩くためにリハビリを続ける!
近所の整形外科で、「内視鏡手術の名医がいるから一度、診てもらったら?」と、以前からある病院を紹介されていました。病院を訪ねると、先生が「大丈夫。治りますから」と言ってくれたのが、心強かったです。
手術は内視鏡で、腰椎4~5番の神経を圧迫している骨を切り取るというものでした。
全身麻酔から覚めたとき、「えっ?」と思うくらい、鼠蹊部の痛みがうそのようになくなっていたことには驚きました。
手術後2週間ほどで退院し、その後は通院でリハビリを続けています。1ヵ月もたつと、つえ1本で歩けるようになり、今はつえなしでも数百mは歩けるほど回復しました。腹筋や背筋などの運動もできるようになっています。
とにかく痛みから解放され、熟睡できるようになったのがうれしいですね。便秘や排尿障害もなくなりました。今となっては「最初から手術すればよかった!」と思っています。
そういえば先日、武藤敬司さん(プロレスラー)から、「俺の夢は蝶野と引退試合をすることだよ。早く治そうぜ」と言われました。もし「同時引退試合」ができたら、ファンにも喜んでもらえるでしょう。それを目標にリハビリを続けたいですね。

この記事は『安心』2022年6月号に掲載されています。
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