「ひと晩発酵みそ」の塩分量は一般的なみその約半分。「減塩中だけどみそが恋しい」というときにも安心して使えます。そして腸内環境を整えるだけでなく、シミやシワの予防にもお勧めです。今回は大豆をゆでる手間を省いた、おからで作るひと晩発酵みそをご紹介しましょう。【解説・レシピ】榎本美沙(料理家、発酵マイスター)

解説者のプロフィール

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榎本美沙(えのもと・みさ)

料理家、発酵マイスター。「発酵食品」、「旬の野菜」を使ったシンプルなレシピが人気で、テレビ、雑誌や書籍、WEBへのレシピ提供、企業のレシピ開発、料理教室、イベント出演などを行う。YouTubeチャンネル「榎本美沙の季節料理」、レシピサイト「ふたりごはん」も人気。『からだが整う〝ひと晩発酵みそ〟 』 (主婦と生活社) 好評発売中。
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シミ・シワ予防や免疫力の維持にも役立つ

和食を作るときに、どうしても塩分が気になる……。そんな人にお勧めなのが、「ひと晩発酵みそ」です。

このみその特徴は、通常は発酵に半年以上かかるみそを、ひと晩の発酵で作っていること。炊飯器で6~8時間温めて発酵させるだけで、すぐに食べられるようになります。

また、ひと晩発酵みそではたっぷりの米こうじを使うため、柔らかな甘味とうま味を十分に楽しめます。その上、塩分量は一般的なみそ(塩分10%前後)の約半分(塩分約5%)と控えめなので、減塩生活中の人でも使いやすい調味料なのです。

ひと晩発酵みそを考案したのは、数年前にさかのぼります。当時、私はみそ作りの教室を開いていましたが、「時間をかけて豆をゆでるのが大変」「発酵期間中のカビが不安」という生徒さんが少なくありませんでした。

そこで、誰でも手軽に安心してみそ作りを楽しめるように、ひと晩で発酵できる、このみそを考案したのです。

炊飯器の保温温度(60℃)は、こうじの酵素が最も活発に働く温度です。そのため、ひと晩置くだけでもみそが完成します。

ひと晩発酵みそに必要な材料は、米こうじ、大豆などの豆、塩の3つだけ(作り方は下項参照)。大豆はもちろん、それ以外の豆を使って作ることもできます。

今回は大豆をゆでる手間を省いた、おからで作るひと晩発酵みそをご紹介します。

おからには、豊富な食物繊維や、腸内で善玉菌のエサになるオリゴ糖が含まれています。そのため、腸活にもうってつけの食材です。

さらに、これをたっぷりの米こうじで発酵させるため、より腸内環境を整える効果が期待できます。腸内環境がよくなることで、美肌効果や免疫力(病気に対する抵抗力)の向上も期待できるでしょう。

さらに、先ほどの通り塩分量が控えめなため、減塩中でも気兼ねなく食べられます。こうじ本来の甘味で十分なコクが楽しめるので、「減塩中だけどみそが恋しい」というときにも、安心して使えます。

その他にも、発酵の過程で生み出されるコウジ酸は、シミのもとであるメラニンの生成を抑える働きがあると知られています。そのため、シミや紫外線ダメージからくるシワの予防にもお勧めです。

トーストにぬったり野菜につけたりしても◎

ひと晩発酵みそは、誰でも手軽に作れます。ポイントをいくつか紹介しましょう。

注意してほしいのは、温度管理です。おからを鍋で温めるときは50℃程度にするようにしてください。70℃を超えるとこうじの酵素が働かなくなるので、温め過ぎは厳禁。指を入れて、お風呂のお湯よりもやや熱いと感じるのが、50℃の目安です。

保温の温度を60℃に維持できるのならば、炊飯器の代わりにヨーグルトメーカーなどを使っても構いません。

ひと晩発酵みそは、基本的には生の米こうじで作ります。入手しやすい乾燥こうじで作る場合は、こうじをおからと混ぜ合わせた後に、ぬるま湯100mlを追加してください。

完成したひと晩発酵みそは、冷蔵保存してください。1ヵ月を目安に使い切りましょう。

ひと晩発酵みそは、一般的なみそと比べると、塩気はかなり控えめ。その分、十分な甘味とうま味を楽しめます。

特に、野菜の甘味と相性がよいため、タマネギなどの根菜類を具材にしたみそ汁に使うのがお勧めです。他にも、豚汁に使えばほっこり心が落ち着く味に、サケとジャガイモを具材にすれば、うま味が体に染みる優しい味わいに仕上がります。

また、洋食との相性も抜群です。私のお勧めの食べ方は、ひと晩発酵みそを食パンにぬって焼き、バターをのせた「みそバタートースト」。うま味と香ばしさが楽しめる、朝食やおやつにぴったりな一品です。野菜のディップソースに使えば、素材の風味が引き立ちます。

牛乳やチーズなどの乳製品ともよく合うので、グラタンやカルボナーラ、シチューなどの味付けに使えば、よりうま味とコクが増すでしょう。バニラアイスに加えても◎です。

ひと晩発酵みそは「丸くて穏やかな味」「いろいろな料理に合わせやすい」と好評です。

中には、毎日の食事にひと晩発酵みそをとり入れたら血圧が下がったと、SNSで報告してくれた人もいました。その人は、ひと晩発酵みその他に生活習慣を変えていないため、血圧が下がったのはこのみそのおかげだろうと言っていました。

私自身は、ひと晩発酵みそをはじめとする発酵食品を食習慣にして以来、体調は良好です。長期間の旅行などで発酵食品を口にできなくなると、便秘がちになることがあるので、体調維持に役立っているのでしょう。

手軽でおいしいひと晩発酵みそを、ぜひ、さまざまな減塩食にご活用ください。

「ひと晩発酵みそ」の作り方

炊飯器の機種によって仕様が異なるので、事前に取扱説明書を読んでから行う。
60℃で保温設定ができるなら、炊飯器の代わりにヨーグルトメーカーや保温調理鍋などを使ってもよい。
ひと晩発酵みそを温めているときは、やけどに十分注意する。
生こうじは、自然食品店や百貨店、みそ専門店、酒蔵、オンラインショップなどで購入が可能。取り扱い店舗は地域によって異なるので、お店などに確認を。
冷蔵で1ヵ月保存可能。保存期間が長くなると風味が落ちてくるので、なるべく早めに食べ切るようにする。

画像1: 「ひと晩発酵みそ」の作り方

材料(約1kg分)
・米こうじ(生)……500g
・塩(粗塩がお勧め)……50g
・おから(生)……300g

画像2: 「ひと晩発酵みそ」の作り方

清潔にしたフードプロセッサーに米こうじを入れ、細かく砕く。塩を加えてさらに攪拌し、ボウルに移す。

画像3: 「ひと晩発酵みそ」の作り方

鍋におからと水300ml(分量外)を入れて弱めの中火にかけ、混ぜながら50℃くらいに温める。指を入れたとき、お風呂のお湯よりやや熱いと感じる温度が目安。これよりも温度が高くならないよう注意する。

画像4: 「ひと晩発酵みそ」の作り方

②を①に加え、手でつぶすようにしながらよく混ぜる。
※乾燥こうじで作る場合は、①とおからを混ぜ合わせてからぬるま湯100ml(分量外)を加える。

画像5: 「ひと晩発酵みそ」の作り方

③を、片手で握れるくらいの量を取り出し、空気を抜きながら丸め、炊飯器の内釜に詰める。

画像6: 「ひと晩発酵みそ」の作り方

④を1段分詰めたら、丸めたみそを握りこぶしで押しつぶす。みそとみその間に、空気が入らないようにする。残りも同様に詰め、④~⑤をくり返す。

画像7: 「ひと晩発酵みそ」の作り方

炊飯器に内釜をセットし、ぬれぶきんを2重にかけて保温モードに設定する。ふたは開けたままの状態で、6~8時間置く。

画像8: 「ひと晩発酵みそ」の作り方

木べらなどで⑥を軽く混ぜ、清潔な保存容器に移して出来上がり。

■レシピ再現・料理/古澤靖子

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画像: この記事は『安心』2022年6月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年6月号に掲載されています。

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