解説者のプロフィール

家氏一也(いえうじ・かずや)
いえうじ総合治療院院長。1988年生まれ。柔道整復師。呉竹鍼灸柔整専門学校を卒業後、高山整形外科勤務、ゆう整骨院上星川院院長を経て、2018年にいえうじ総合治療院開業。患者の症状、悩みを深く聞き、一人ひとりに合ったオーダーメイドの施術を行っている。近年は、自律神経へのアプローチや身体の内側から健康になっていただくことに注力し、重症の痛みやしびれを改善へ導くよう努めている。
ふくらはぎや足裏の筋肉がかたくて痛みを発症
当院では最近、「足底腱膜炎」で悩んで当院にいらっしゃる患者さんが増えています。足底腱膜炎は、外反母趾と並んで多い足の痛みのトラブルです。
症状は、土踏まずのてっぺんやかかとの痛みです。特に、朝起きて立ち上がったときや、歩き始めなど「最初の一歩」を踏み出すときに痛むことが特徴として挙げられます。
痛みが出るのは動き始めた最初のうちだけで、しばらくすると痛みは引いていきます。

足底腱膜とふくらはぎの筋肉
足底腱膜は、かかとから足先に向かって扇状に広がり、すべての足指の骨につながっているかたい組織です。
足裏の土踏まずを下から支えていて、立ったり歩いたりして足裏が伸びると、足底腱膜もピーンと伸びて引っ張られます。過度に引っ張られるようになると、炎症が起こり痛みを覚えます。
ふくらはぎとアキレス腱は、かかとを介して足底腱膜とつながっています。多くの足底腱膜炎の人は、足裏やふくらはぎの筋肉がかたくなっています。その結果、足底腱膜のつけ根のかかとに、負担が過度に集中して痛みが発症しているのです。
ふくらはぎからやさしく緊張を緩める
そこで私が足底腱膜炎のかたにお勧めしているのが、「足裏ほぐし」(やり方は下項参照)です。ふくらはぎと足裏を、ラップの芯でマッサージを行うセルフケアです。
たいせつなことは、痛くない力かげんで、やさしく緊張を緩めることです。
強い力を加えたほうが効くと思っている人は少なくありません。しかし人は痛みを感じると、無意識のうちに体に力が入ります。緊張して力が入った状態では、いくらもんでも筋肉はやわらかくなりません。
足裏ほぐしは、広く「面」で患部を刺激します。力が1点集中で加わらないので、当たりがやわらかく、心地よい力かげんでマッサージできます。
また、広い範囲を一度に刺激でき、筋肉の深い部分をしっかりほぐしながら、血流をよくすることができます。
足裏ほぐしは力まかせにゴリゴリとやるのではなく、痛気持ちいいくらいの力かげんで行ってください。
同じ理由で、足裏ほぐしはいきなり痛みのある足裏から行うのではなく、少し離れたふくらはぎからマッサージを始めます。内側、真ん中、外側に分けて、ひざ裏からアキレス腱にかけてラップの芯を上下に滑らせながらほぐしましょう。
アキレス腱に近い部分は強く押すと痛むので、軽い力で行います。かかと付近だけでなく土踏まずを中心に、足裏全体をマッサージしてください。
毎日マッサージを行っていると、自分で「ここが痛気持ちいいな」「ここをほぐすと効きそう」という部分がわかってきます。その部分を特に重点的にマッサージしましょう。
ウエスト周りや二の腕の脂肪燃焼を促進
足裏ほぐしは、1日3セットを目安に行います。必ず行っていただきたいのが、朝、起きて布団から出る前です。
ふくらはぎからアキレス腱、足裏をしっかりほぐすと、朝の「最初の一歩」のかかとの痛みが出にくくなります。
そのほか、長く座ったあとや立ち上がって動き始める前、足の疲れがたまった夕方、夜の入浴後に行うのもお勧めです。足のむくみの改善や予防にも役立ちます。
足裏ほぐしは、まずは2週間続けてください。多くの人は2週間ほどでかかとの痛みが軽減していきます。症状に変化がない場合は、専門医に相談することをお勧めします。
なお、下肢の静脈に血栓がある人は、足裏ほぐしを控えたほうがよいでしょう。この場合、ふくらはぎをマッサージすると、その血栓が肺に流れ、いわゆるエコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)を誘発する恐れがあります。
また、長時間座りっぱなしで足を動かさないでいたときなど、エコノミークラス症候群を起こしやすい状況下でも、避けたほうがよいでしょう。
下肢静脈瘤のある人も、あまりお勧めできません。このような症状が思い当たる人は、まずは医療機関を受診して、確認してください。
ラップの芯を利用したマッサージは、ウエスト周りや二の腕など、ぜい肉が気になる部分に行うのもお勧めです。血流がよくなり、代謝が上がって、脂肪燃焼が促されます。
なお足底腱膜炎は、足裏やふくらはぎの筋肉がかたくなっていること以外に、全身のゆがみや、自律神経の乱れ、内臓疲労が原因で足裏に負担がかかっている場合もあります。
ですから、足裏ほぐしとともに、バランスのよい食事や、早寝早起きの規則正しい生活、ストレスをためないことなども、ぜひ心がけてほしいと思います。
足裏ほぐしのやり方
※痛気持ちいい力かげんで行う。特に痛みのある場所は、力の入れ方に注意する。
※1日3セットを目安に行う。朝、最初の一歩を踏み出す前に行い、ほかはいつ行ってもよい。
※自分の感覚で「ここが効きそうだ」と思うところを、重点的に行うとよい。
※①~③は床に、④はイスに座ると行いやすい。

❶床かイスに座る。両手で持ったラップの芯で、痛む側の足のふくらはぎの真ん中を、ひざの裏からアキレス腱にかけて、上下へこするように20秒ほぐす。動かす速さは1秒で1往復が目安。
❷①と同様に、ふくらはぎの外側を20秒ほぐす。
❸①と同様に、ふくらはぎの内側を20秒ほぐす。

❹土踏まずを中心に、かかとの端から足指のつけ根までの足裏全体を、ラップの芯を転がしながら1分ほぐす。
❺反対側の足で①~④を行う。

ラップの芯を床に置き足裏で転がしてもOK

この記事は『壮快』2022年6月号に掲載されています。
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