がんは、食事の偏りなどのバランスの崩れから生じてきます。だからこそ、玄米菜食で体質改善を促し、体のバランスを取り戻すことが大事なのです。そして、玄米に含まれるアラビノキシランやフィチン酸などの有効成分には、抗酸化作用や抗がん作用といった働きがあるのです。【解説】島村善行(島村トータル・ケア・クリニック院長)

解説者のプロフィール

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島村善行(しまむら・よしゆき)

島村トータル・ケア・クリニック院長。1946年、高知県生まれ。1972年、京都府立医科大学卒業後、国立療養所松戸病院医長、国立がんセンター東病院医長、千葉西総合病院院長などを経て、2001年、千葉県松戸市に、島村トータル・ケア・クリニックを開院。院内に玄米菜食を扱うレストランや、介護老人保健施設を併設し、総合的な医療を実施している。著書に、『医師がすすめる野菜スープダイエット』(マキノ出版)などがある。

肺がんの友人が手術を受けずに元気な秘密

私は、50年余りにわたって、がんの治療・研究に携わってきました。がんの予防・改善のための食事療法の基本として、私が皆さんに推奨しているのが「玄米菜食」です。

そもそも私が玄米菜食に着目したきっかけは、国際弁護士であった友人が肺がんになったことでした。約25年前のことです。相談を受けた私はただちに切除を勧めましたが、けっきょく彼は受けませんでした。

彼はステージ2で、手術をしないのであれば、2~3年もてばよいほうだと思っていました。しかし、約3年後に再会した彼は、元気でピンピンしていました。玄米菜食をメインとした食事と、ワクワクしながら人生を送ることで、現役で激務をこなしていたのです。

彼に会って以来、私は玄米菜食に興味を持ち、研究を始めました。そして、病院にレストランを併設し、玄米菜食を基本とした食事指導を行うようになったのです。

すると、驚くほど多くの成果が上がり始めました。

35年近く肝臓がんとつきあっているケースも

では、なぜ、がんの予防・改善のために、玄米菜食が勧められるのでしょうか。

まず第一に、玄米に含まれる有効成分の働きがあります。

例えば、アラビノキシランには、抗酸化作用があり、NK細胞(がん細胞やウイルス感染細胞などを攻撃する細胞)を活性化する働きがあります。また、フィチン酸にも、抗酸化作用や抗がん作用があることが知られています。

加えて玄米には、多くの有効成分が含まれるだけではなく、ビタミンやミネラルも豊富です。それに玄米菜食で野菜を多くとることによって、バランスよく栄養を補給することができます。それが、体質改善へとつながっていくのです。

がんは、食事の偏りなどのバランスの崩れから生じてきます。だからこそ、玄米菜食を通じて体質改善を促し、体のバランスを取り戻すことが大事なのです。

第二に、玄米や野菜には、食物繊維が豊富です。

食物繊維を適切に補給することで、腸内環境が整います。それが、免疫力アップにもつながります。

第三に、玄米菜食を続けることは、生活習慣病の予防・改善にもなります。

私は、がんを生活習慣病のひとつだと考えています。食事や、運動、心の持ち方といった生活習慣がくずれることによって、遺伝子が傷つき、発がんに至るのです。

特に重要なのが、食事です。玄米菜食によって、生活習慣病を改善できれば、それが同時にがんの予防にもなります

玄米に含まれる有効成分
アラビノキシラン
NK細胞(ガン細胞やウイルス感染細胞などを攻撃する細胞)の活性化。抗酸化作用。
フィチン酸
抗酸化作用。抗ガン作用。老化遅延効果。 排毒・排泄作用。
イノシトール
肝機能・高脂血症の改善。動脈硬化の予防。
γ -オリザノール
自律神経の調節。シミ、シワの予防。
GABA(γ-アミノ酪酸)
精神安定作用。 血圧安定作用。
フェルラ酸
認知症予防効果。

 
私自身の経験をお話しましょう。私自身は、30代の後半、激務の影響もあって、暴飲暴食の日々を過ごしていました。

身長168cmで、いつしか体重は74kgまで増え、何度も痛風の発作に襲われていました。45歳のときには、大腸ポリープを2回も摘出しています。さらに、動脈硬化も進行していました。

そこで、1日3食のうち、2食を玄米菜食に切り替えたところ、3ヵ月で7kgのダイエットに成功。その後も、体重が徐々に減って、64kgとなり、この体重を維持しています。腸の調子もよくなり、カゼもひかなくなりました。ポリープも新たにできておらず、動脈硬化も改善しました。

もしも私が玄米菜食を始めず、暴飲暴食を続けていたら、大腸のポリープががんへと育っていくことは十分に考えられたでしょう。がんを予防するための食事が力を発揮するというのは、こういうことなのです。

がんを発症してしまったかたでも、玄米菜食を続けることで、がんとうまくつきあっていくことができるケースもあります。

実際に私の患者さんのなかには、5年生存率が低い肝臓がんを患っておられるかたがいます。そのかたは、がんが治らないまでも、玄米菜食を続けることで、35年近く、がんとつきあい続けています。

栄養バランスの整った食事をとり、体の機能を高めることによって、がんの進行を遅らせることは可能なのです

もちろん食事だけでなく、運動やメンタル面も重要です。運動によって全身の血行改善を図り、よく眠ること。ポジティブシンキングで、前向きに物事をとらえていくことも忘れないようにしましょう。

がん予防のため、あるいは、病態の改善のため、玄米菜食を始めてみてはいかがでしょうか。

画像: この記事は『壮快』2022年6月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年6月号に掲載されています。

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