「炭水化物を半分にしてみませんか」当院では、糖尿病の患者さんにとてもシンプルな食事指導を行っています。実際に半分程度にしていただければ、ほとんどの患者さんは劇的に改善します。ここで問題になるのが「物足りない」という声が出てくること。そこでお勧めなのが「オートミール」を活用することです。【解説】大場啓一郎(大場内科クリニック院長)

解説者のプロフィール

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大場啓一郎(おおば・けいいちろう)

大場内科クリニック院長。医学博士。日本医学放射線学会認定放射線診断専門医、日本内科学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本医学放射線学会、日本ワクチン学会会員。2006年昭和大学医学部卒業、昭和大学藤が丘病院初期臨床研修医となる。2007年昭和大学医学部大学院病理系薬理(医科薬理学分野)入学。2008年昭和大学横浜市北部病院放射線科入局。2011年聖マリアンナ医科大学薬理学教室入学、2013年昭和大学医学部大学院卒業。2014年、病院での医師経験を生かし、内科医として地域貢献を目指すため、神奈川県相模原市に「大場内科クリニック」を開院。何でも相談できる地域の「かかりつけ医」として尽力している。
▼大場内科クリニック

満足感を味わいつつ炭水化物を減らせる

「炭水化物を半分にしてみませんか」

当院では、糖尿病の患者さんに、このようなとてもシンプルな食事指導を行っています。炭水化物は、厳密には糖質と食物繊維を含みますが、ここでは糖質と同じ意味で使っています。

炭水化物の主な摂取源は、ごはん、パン、麺類といった主食や甘い飲食物などです。これらを「ざっくりと半分にしていただく」のが、当院での糖尿病の食事指導の中心になります。

糖尿病の大部分は、生活習慣病の一種である2型糖尿病です。その土台には遺伝的素因が関係しますが、基本的には炭水化物をとり過ぎなければ、発症や悪化を防ぐことができます。その観点から、わかりやすく表現しているのが「炭水化物を半分に」という指導法なのです。

糖尿病の食事療法には、摂取エネルギーや栄養素の細かい計算がつきものです。もちろん、それができれば理想的ですが、忙しい日常の中で、そこに手間と時間をかけられないために、糖尿病を悪化させてしまう患者さんが多くおられます。

そこで、数年前から、炭水化物を半分にするという指導法を取り入れたところ、多くの患者さんがやってくださるようになりました。

そして、実際に炭水化物を半分程度にしていただければ、ほとんどの糖尿病患者さんは、劇的に改善します

ただ、ここで問題になるのが、炭水化物を半分にすると、「物足りない」という声が出てくることです。やはり「主食をしっかり食べたい」という人も多いのです。

そういう場合にお勧めの方法があります。それは「オートミール」を活用することです。

オートミールは、オーツ麦という穀物を食べやすくした食品です。食べ応えがありながら、1食分で白米ご飯と比較すると、エネルギーは約半分、炭水化物(糖質)は約3分の1です。オートミールを活用すれば、ご飯と同じ程度の満足感を味わいつつ、自然に炭水化物を半分にできるのです。

そこで私は、糖尿病患者さんの全員ではありませんが、「この人には合いそうだな」と思うときに、「オートミールもいいですよ。僕も食べています」とお勧めしています。

私自身、糖尿病ではありませんが、忙しい毎日の中で、食生活がどうしても乱れやすく、「健康的な食事をしたい。それには玄米のような未精白の主食がよいのではないか」と思いながらも、玄米を炊く余裕はありませんでした。

そんなとき、オートミールをとり入れてみると、玄米に負けない栄養素がとれる上、簡単に作れておいしいので、すっかりはまりました。普通に1食とっても、エネルギーや炭水化物が少ないので、糖尿病患者さんにも勧めるようになったのです。

白米と置き換えるのが手軽で効果が高い

オートミールを活用して、満足感を得ながら炭水化物の摂取量を減らし、糖尿病を改善できた患者さんは多くおられます。

ある60代の男性は、中等症くらいの糖尿病で、ヘモグロビンA1c(過去1~2ヵ月の血糖状態がわかる数値で、基準値は4.6~6.2%)が8〜9%でした。しかし、それまで食べていた白米を全てオートミールに換えると、半年でヘモグロビンA1cが正常になりました。

必ずしも全ての主食をオートミールにする必要はなく、1日に朝食などの1食を換えるだけでも構いません。それでも炭水化物を減らせるので、糖尿病の改善効果が期待できます。

その場合、他の食事では、できるだけ炭水化物を半分に近づけ、野菜やたんぱく質を増やすようにしてみてください。

オートミールの具体的な活用法としてお勧めなのは、「米化」、つまりご飯とほぼ同じ感覚で食べられるようにすることです。

オートミール30gを、スープ皿のような底の平たい容器に入れて、水50mlを加えます。電子レンジで1分ほど加熱すれば、出来上がりです。

出来上がったらすぐほぐしておくと、よりご飯の食感に近づきます。水の量や加熱時間は、好みで加減してください。普段のご飯代わりに、気軽にとり入れられるでしょう。

白米の置き換えにお勧め!カロリーも糖質も低い「米化」オートミール

画像: 糖尿病の食事指導に活用!オートミールを「米化」して白米と置き換えるのがおすすめ

材料(1人分)
オートミール…30g
水…50ml
レンジ対応の底の平たい容器にオートミールと水を入れて混ぜ、1~2分ほど置き、オートミールに水をしっかり含ませる。
①をラップをせずに電子レンジで加熱する(500Wの場合は1分、600Wの場合は50秒が目安)。
加熱後、軽くほぐす。

なお、炭水化物は、減らせば減らすほどよいわけではありません。炭水化物(糖質)を制限し過ぎると、かえって体によくないという研究結果も出ています。あくまでも「半分程度」を目安にしてください。

また、オートミールを活用するとともに、適度な運動も心がけると、さらに改善効果が高まります。

画像: この記事は『安心』2022年5月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年5月号に掲載されています。

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