解説者のプロフィール

小林智子(こばやし・ともこ)
皮膚科専門医・医学博士。2010年日本医科大学医学部卒業後、名古屋大学皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了。同志社大学アンチエイジングセンターにて糖化と肌についての研究を行う。また、食事と健康に関してレシピや情報などを医学的な立場から発信するブランド「ドクターレシピ」を監修。肌のコンプレックスで悩む女性たちに、美容に関する正しい知識を身につけて美しい肌を手に入れてもらうため、日々活動している。著書に『皮膚科医が肌荒れしたら食べるおくすり朝ごはん』(ワニブックス)、『すっぴん肌が好きになる肌トラブル大全』(WAVE出版)などがある。
オートミールで体の内側からも肌をケアしよう
美肌を保つには、化粧品などで外からケアするだけでなく、肌によい食事を心がけて、内側からもケア(インナーケア)することが欠かせません。
その中で、とても手軽に食べられ、美肌づくりに最適な食品としてお勧めしているのが「オートミール」です。
オートミールの肌に対する効果のキーワードは「糖化」です。糖化とは、砂糖や穀類などで糖質を過剰にとったときに、体内で起こる現象です。
糖質をとり過ぎて、体の中で余ってしまうと、それが体内のたんぱく質と結合して変性を引き起こします。これが糖化で、変性したたんぱく質はAGEs(終末糖化産物)と呼ばれ、老化を促す物質となります。
特に肌では、肌の弾力性を支えるたんぱく質であるコラーゲンが変性します。その結果、肌のハリが落ちて、ごわつき、シワやたるみが促進されます。
また、糖化は酸化(有害な活性酸素によって細胞や組織が変性すること)とも深く関係し、両者はお互いに進め合う関係です。
紫外線による肌ダメージで、肌にシミができるのは、代表的な酸化現象です。これを防ぐには、日焼け止めも大事ですが、同時に糖化を抑える必要があるのです。
肌に糖化物質があると、炎症を引き起こすため、ニキビや吹き出物もできやすくなります。
いつものご飯と置き換えるだけ!
では、糖化を防ぐにはどうすればよいでしょうか。
甘い飲食物で砂糖を多くとっている人は、まずそれを控えましょう。それとともに重要なのが、血糖値を上げやすい食品を避けることです。ここで活躍するのが、オートミールです。
食品ごとの血糖値の上げやすさの指標をGI値(グリセミックインデックス)といいます。精製された食パンや精白米のGI値は80以上あるのに対し、オートミールは55です。
一般に、70以上が高GI、55以下が低GI、その中間が中GI食品とされ、オートミールは低GI食品です。ですから、高GI食品である白米や食パンをオートミールに換えるだけで、血糖値が上がりにくくなり、糖化を防いで美肌づくりに役立てることができるのです。
ちなみに、玄米のGI値はオートミールとほぼ同じです。しかし、「玄米を炊くのはちょっと大変」と感じる人が多いのではないでしょうか。オートミールなら、1食分を一定時間牛乳などに漬けておいたり、電子レンジで加熱したりするだけで、おいしく食べられます。
また、オートミールの食物繊維は、腸内環境をよくするためにも働いてくれます。
腸内環境をよくすることも、美肌づくりには重要です。最近では、あらゆる肌トラブルに、腸内環境が影響しているのではないかともいわれています。腸を整えておくことは、美肌のためにも重要で、そのためにもオートミールが大いに働いてくれるというわけです。
オートミールは、いつ食べてもよいのですが、基本的に私は、朝に食べることをお勧めしています。「オートミールを夜の主食にするのはちょっと…」という人でも、朝のパンなどなら置き換えやすいからです。私自身も、朝によくオートミールを食べています。
朝食として、手間をかけずにおいしく食べられるのが「オーバーナイトオーツ」という方法です。前の晩から牛乳などにオートミールを漬けておくだけの調理法で、加熱などは不要で、そのまま食べられます。
一晩漬けておくことで、血糖値の上昇を防ぐ「レジスタントスターチ」と呼ばれる成分が増えるので、さらに低GIになるという効果も得られます。
目安として、50gのオートミールを125mlの牛乳に漬けて一晩置きます。
食べる前に、ベリー類(イチゴ、ブルーベリー、ラズベリーなど)やバナナの輪切りなどをのせると、果物の味でさらにおいしく食べられます。ベリー類には酸化を防ぐ成分が豊富なので、その意味でも美肌効果が高まります。
美肌づくりにお勧め!オーバーナイトオーツ

材料(1人分)
オートミール…50g
アーモンドミルク(牛乳、豆乳でも可)…125ml
果物(イチゴ、ブルーベリー、バナナなど) …適量
❶前日の夜にオートミールとアーモンドミルクを混ぜ、冷蔵庫で保管しておく。
❷翌朝に取り出し、果物などをトッピングする。
前日に作ったスープなどにオートミールを漬けておき、翌日に食べるのもよい方法です。
前の晩から準備できないときでも、オートミールはすぐに食べられます。オートミールに好きなカップスープを入れ、適量の水を加えて電子レンジで2分ほど加熱するだけで、おいしいオートミール料理ができます。加熱前に溶き卵や豆腐、野菜などを入れてもよいでしょう。
簡単においしく食べられて、美肌づくりに役立つオートミールを、ぜひお試しください。
[別記事:1杯で栄養たっぷり、おなか満足! レンチンですぐできる「オートミールスープ」レシピ→]

この記事は『安心』2022年5月号に掲載されています。
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