解説者のプロフィール

今井一彰(いまい・かずあき)
みらいクリニック院長。1995年山口大学医学部卒業。内科医。東洋医学会漢方専門医。NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長。息育、口呼吸問題の第一人者として全国を周り、講演を行っている。あいうべ体操、ゆびのば体操を考案。『免疫を高めて病気を治す口の体操「あいうべ」』『1日4分でやせる!ゆるHIIT』(ともにマキノ出版)『世界一簡単な驚きの健康法 マウステーピング』(幻冬舎)など著書多数。
▼みらいクリニック
医学的には不明な足裏の反射のメカニズム
大量の便が出て私自身も驚いた!
[別記事:現代日本人にベストマッチの「足の裏ほぐし」足の裏診断&足の裏治療マップ→]
私は普段、診療中も青竹を踏んでいます。それは、足の裏を押したりもんだりして刺激することの有効性を身を持って知ったからです。
私は、足の指を伸ばす「ゆびのば体操」を考案し、足の健康法を提唱しています。当院では、患者さんのケアに役立てるため、鈴木きよみ先生(上記別記事参照)のように足の裏ほぐしを行う専門スタッフに、数年間、常駐してもらったこともあります。
そのとき、まず私自身が施術を受けたのですが、驚くべき体験をしました。
足の裏ほぐしの施術中は、特に土踏まずの辺りに強い痛みを感じました。すると翌日、これまでに経験がないほど便通がよくなり、1〜2時間おきにトイレに通うほど、大量の便が出たのです。下痢のときの苦しさはなく、スッキリ爽快でした。
何が起こったのかわかりませんでしたが、足の裏ほぐしのスタッフに話を聞いて合点がいきました。
鈴木きよみ先生のゾーン(反射区)でもほぼ同様ですが、足の土踏まず付近には腸に関する反射区が集まっています。その刺激で腸の働きが活発になり、大量の排便につながったようです。
足の反射区は、全身各部と相関があるとされています。流派によって、多少位置や大きさが違うようですが、基本的にはほぼ共通しています。
このように、足の裏ほぐしは、全身の各部に対応する反射区を刺激して、臓器や器官の働きを高めたり、調整したりする健康法です。いわば「足の裏に全身がある」という考え方に基づくもので、手や耳などにも同様の健康法が存在します。
その根底には、フラクタル(自己相似性)と呼ばれる概念があると考えられます。フラクタルとは、全体が一部を表し、一部もまた全体を表すという考え方です。
足の裏などの反射区のメカニズムは、まだ医学的には明らかにされていません。しかし、長い歴史があり、経験的にその効果は知られてきました。
私も、足の裏の反射区と臓器がつながっていることを、体験的に感じたわけです。その経験から、冒頭でお話ししたような青竹踏みを行うようになりました。
足と全身はつながっているのか?
かがみ指と全身の不調は双方向に影響し合う
大きな意味では、足と全身がつながっていることは明らかです。例えば、知らず知らず指が曲がってしまう「かがみ指」という現象があります。

足の指関節が曲がった状態になるのが「かがみ指」の特徴
かがみ指のある患者さんは、腰痛、ひざ痛、肩こりなどを訴えることが多く、逆にこれらの症状があるとかがみ指を起こしやすい傾向があります。つまり、全身各部の不調とかがみ指は、双方向に影響し合うのです。
足に合っていない靴や運動不足からかがみ指になると、無意識のうちに姿勢が悪くなり、腰やひざ、さらには首・肩などにも負担がかかって不調が起こりやすくなります。
逆に、足腰や肩の不調があると、姿勢が乱れてかがみ指を起こしやすくなります。ですから、治りにくい足腰の痛みや肩こりなどは、まず指を伸ばすことから始めると、次第によい循環ができて改善することが多いのです。
ちなみに、足の第1指は、鈴木先生の反射区では脳関連のゾーンに相当しています。第1指のかがみ指は、脳にストレスを与えるという意味でも、悪影響をもたらすのかもしれません。なぜなら、ストレスそのものが足腰の痛みを呼び起こすからです。
指に限らず、足の裏全体が、運動不足などで硬くなることも大きな問題です。
最近は、コロナ禍で運動不足に陥り、かがみ指や足の裏のこわばりを起こしたり、足が冷えたりする人が多くなっています。すると、足の血行が滞り、心臓への血液の戻りが悪くなるため、全身の血流に影響します。
血流が悪い状態では、寝つきが悪くなり、睡眠の質も下がります。その他、冷えの原因にもなります。
このように、さまざまな側面から、足の血行不足は全身の不調を引き起こす元になります。それを防ぐ意味でも、足の裏ほぐしは効果的と考えられます。

この記事は『安心』2022年5月号に掲載されています。
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