重曹は、毛穴に詰まった皮脂を溶かして落とします。毛穴汚れをスッキリ取り除き、ターンオーバーを促すことで、肌荒れの改善に役立ちます。ごわつきやざらつきが気になる部位の、角質ケアにも活用できます。脂性肌の人は、洗髪に重曹を活用するのもいいでしょう。ただし、目に入らないようくれぐれも注意し、アルカリ度が強くならないよう必ず水に溶かしてください。【解説】阿部圭子(青山研美会クリニック院長)

解説者のプロフィール

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阿部圭子(あべ・けいこ)

青山研美会クリニック院長。1988年、筑波大学医学専門学群卒業。帝京大学医学部皮膚科、虎の門病院皮膚科勤務を経て、99年に有楽町研美会クリニックを開業。2003年、南青山に移転し、青山研美会クリニック院長を務める。専門は美容皮膚科・皮膚科。「医療はハート、治療は誠心誠意」がモットー。シミ・シワ・難治性ニキビの治療やスキンケア・アンチエイジング指導、栄養療法指導などに尽力している。
▼青山研美会クリニック

皮膚科医が推奨する「重曹スキンケア」

肌細胞の生まれ変わりを促して肌荒れが改善

「健康・美容にいい」とされる情報は世にあふれていますが、その実は玉石混交です。

重曹の活用法も、そのひとつ。ここでは美容皮膚科医の立場から、肌の健康に役立つ重曹の使い方を、ご紹介しましょう。

正しい使い方をするには、重曹の性質について詳しく知っておく必要があります。

重曹の化学名は「炭酸水素ナトリウム」です。別名「重炭酸ソーダ」ともいうことから、略して「重曹」と呼ばれます。

重曹の㏗(ピーエイチ/ペーハー)値は、8.2~8.5で弱アルカリ性。ちなみに㏗7が中性で、数値が大きくなるほどアルカリ度が強くなります。

アルカリ性の物質は、脂肪やたんぱく質を溶解する作用があります。ですから重曹は、台所の油汚れや、グラスについた手垢などのたんぱく質汚れを落とすのに、重宝するのです。

重曹を水に溶かして使う場合に注意したいのが、温度です。重曹は熱が加わると、水と二酸化炭素に分解され、㏗値が11.2程度の炭酸ナトリウムに変化します。水温が上がるにつれてアルカリ度が強まるので、お湯で溶かすと、特にたんぱく質の溶解作用が高まります。

また、重曹を加熱すると、炭酸ガスが発生します。水では泡が出ないのに、熱湯で溶くと発泡するのは、このためです。

こうした性質を踏まえてうまく活用すれば、重曹をスキンケアに役立てることができます。皮膚科的な観点から、重曹に期待できる主な効果は、ターンオーバーの促進作用です。

肌細胞が生まれ変わることをターンオーバーといいます。私たちの皮膚の基底部では、日々新しい細胞が生まれています。それが表面に上がってきて、古い細胞、つまり角質が、押し出されるように排出されます。この一連のサイクルが、およそ28日周期でくり返されています。

毛穴に皮脂が詰まると、この周期が乱れます。また、皮脂が酸化して、毛穴の黒ずみやくすみ、ニキビや吹き出物、ざらつきなどの肌荒れが起こります。

重曹は、毛穴に詰まった皮脂を溶かして落とします。毛穴汚れをスッキリ取り除き、ターンオーバーを促すことで、肌荒れの改善に役立ちます。

角質のごわつきやざらつきが滑らかに!

ごわつきやざらつきが気になる部位の角質ケアにも、重曹を活用できます。

角質はケラチンというたんぱく質からできています。重曹のたんぱく質溶解作用は、厚くなり乾燥した角質の表面を、物理的にやわらかくし、除去しやすくします。そうした意味では、重曹は美容皮膚科の角質ケア施術である「ピーリング」と似た働きをしてくれるのです。

角質が厚くなりがちなのは、摩擦や押圧などの物理的刺激を特に受けやすい、ひじ、ひざ、かかと、足の裏など。重曹は、こうした部位をピンポイントでケアするのに向いています(やり方は下項を参照)。

定期的に行えば、厚くなった角質層が薄くなり、皮膚のごわつきやざらつきが改善します。スベスベと滑らかな肌に近づくでしょう。

スキンケアに使う重曹は「食用」と明記されている物を選んで購入してください。安全性が高いうえ、粒子が細かく、肌を傷つけにくいからです。

顔への使用は、基本的にはお勧めしていません

顔に使うということは、目に入る可能性があるということです。

目の角膜の構成成分は、たんぱく質です。重曹は、弱めとはいえアルカリ性ですから、たんぱく質を溶かします。目に入ることで、角膜を損傷するおそれが否定できません。

ただ、脂性肌のかたが目より下の部分に、あくまでスポット的に使うのなら差し支えないでしょう。例えば小鼻の周りや、あごなど、特に皮脂の多い部分には勧められます。重曹を加えて洗うことで、毛穴の黒ずみや肌のざらつき、吹き出物などの改善が期待できるでしょう。

やり方は、まず手のひらに洗顔料を泡立て、重曹を小さじ4分の1ほど加え、混ぜ込むようにして、さらに泡立てます。粒子で肌を傷つけないためです。

その泡を、鼻やあごなど気になる部分に置き、なでるようにそっと洗いましょう。最後は水でしっかりすすぎます。同様に、重曹を加えた泡で、胸の間や背中など、皮脂の多い部位を洗ってもよいでしょう。

ちなみにインターネット上には、重曹水にクエン酸を混ぜて炭酸を発生させ、その水で洗顔する人もいます。これも皮膚科医として、お勧めできません

酸を混ぜると、皮脂やたんぱく汚れを落とすアルカリ性という長所を中和してしまううえ、中和熱が発生することで、肌を傷めるおそれもあります。炭酸の泡による洗浄効果を期待するなら、市販の炭酸水を使うほうが安全です。

抜け毛の減少や白髪予防が期待できる!

脂性肌の人は、洗髪に重曹を活用するのもいいでしょう。髪が脂ぎっている人、フケが多い人に向きます。ただし、目に入らないようくれぐれも注意し、アルカリ度が強くならないよう必ず水に溶かしてください。

洗面器1杯の水に、小さじ1杯の重曹を溶かします。洗面器に頭をさっと浸したあと、重曹水をよくなじませ、頭皮にもみ込みます。最後はシャワーの水でよくすすぎましょう。

髪が長い人は、なるべく髪を緩く結んでから洗面器に頭を浸し、結った頭に指を差し込むように頭皮を洗ってください。髪を重曹水に長時間浸したり、あまり頻繁に行ったりすると、髪がパサついて傷む可能性があるので注意が必要です。

頭皮の毛穴が皮脂で詰まると栄養状態が悪くなったり、毛根が細くなったりして、毛髪トラブルの一因になります。重曹でターンオーバーが促進されれば地肌の血行がよくなり、栄養状態も改善します。続けることで抜け毛の減少や白髪の予防効果も期待できるでしょう。

ここまで紹介してきたスキンケアは、いずれも週1~2回ほど行えば十分です。重曹で洗ったあとは、化粧水などの成分が吸収されやすい状態になっています。タイミングを逃さず、念入りに保湿することで、健やかな肌に生まれ変わるでしょう。

重曹スキンケアのやり方

重曹は食用の物を使用する。
重曹が目に入らないよう注意する。
まずは少量を狭い範囲で試し、しばらく時間を置き様子を見る。赤くなる、ヒリヒリするなど肌に合わない場合は中止する。

せっけんやボディソープを手のひらに泡立て、重曹を小さじ1/3程度加える。

画像1: 重曹スキンケアのやり方

ひじ、ひざ、かかと、足の裏など、皮膚のごわつきやざらつきが気になる部位に、①をのせる。優しくなで回すように洗い、手はすぐに水で流す。

画像2: 重曹スキンケアのやり方
画像3: 重曹スキンケアのやり方

2~3分おいたら、泡が残らないよう水で流す。
皮脂を落とすので、洗い流したあとは念入りに保湿する。
やり過ぎはかえって肌を傷めるので、週1~2回にとどめる。

画像: この記事は『壮快』2022年5月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年5月号に掲載されています。

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