解説者のプロフィール

氣仙英郎(けせん・ひでお)
氣仙長生治療院院長。1984年、岩手日日新聞社入社。89年、産経新聞社入社。新聞記者として、仙台総局、経済部、外信部、ワシントン支局で活躍ののち、編集委員、論説委員を務める。長年自分自身が体の痛みに苦しんだ経験から、整体師を目指し、新聞社在籍中にあん摩マッサージ指圧師の資格を取得。2018年に退社後、氣仙長生治療院を開院し、現在に至る。
▼氣仙長生治療院
首の骨のズレがめまいを引き起こす!
めまいはさまざまな原因から起こりますが、その原因は大きく2つに分けられます。
ひとつは、脳に問題が生じて起こるめまいです。これは命の危険もありますから、その原因疾患の治療が優先されることはいうまでもありません。そして脳以外の原因となるのが、頸椎(首の骨)のズレによるものです。
私の治療院では、めまい患者さんに理学療法士の笹川大瑛氏が開発した「JTAフラッシュリプロ療法」に基づく、「手首ひねり」(やり方は下項参照)を指導しています。これは頸椎のズレによるめまいの改善に役立ち、成果を上げています。
では、なぜ手首ひねりが頸椎を調整できるのか、どうしてめまいの改善へとつながるか、ご説明しましょう。
頸椎のズレは、ふだんの姿勢の悪さや体の使い方のクセなどから生じます。
例えば、ずっとパソコンでマウスを使い続けている人は、手首を内側へ回しにくくなります。すると、手首の足りない動きを補うため、肩が前方に出てきて、しだいに巻き肩になります。
巻き肩になると、首や肩の筋肉が前方に引っ張られ、斜角筋といった肩や首周りの筋肉が緊張します。そして頸椎のズレが引き起こされるのです。
一方、腱鞘炎などがあって、手首を外側へ回す動きが悪い人は、腕を上げにくくなります。これも四十肩、五十肩とともに頸椎のズレを引き起こします。
頸椎がずれると、首を通っている神経が圧迫されます。また、首や肩の筋肉がひどく緊張すると、頭部へ通じている血流も悪くなります。
すると、頸椎がズレている側の脳半球の内圧が高くなります。それにより、内耳の血流やリンパの循環が悪化し、めまいや耳鳴りといった症状が現れるのです。
その場で腕が上がった!めまいやふらつきも改善
こうした症状を改善するには、大元となる頸椎のズレを調整しなければなりません。しかし、こり固まった首や肩の筋肉を直接もんでも、実はあまり効果的ではありません。
むしろ、手首と首の連関を利用する方法が有効です。手の各指と頸椎は、神経を介して密接に連携しているからです。そこでお勧めしているのが手首ひねり、というわけです。
手首を大きく曲げ、親指、人差し指、中指に力を入れてグッと握り締めると、頸椎の4~6番(首の真ん中辺り)に刺激を与えることができます。また、握った手を外に曲げ、小指と薬指に力を入れてグッと握ると、頸椎1番(首の最上部)への有効な刺激となるのです。
この一連の動きをくり返すことで、手首の可動域が広がるとともに、首がどの方向にもスムーズに動くようになります。頸椎のズレも矯正されていくのです。
そして頸椎のズレによって圧迫されていた神経が開放され、首、肩の緊張が取れて、血行不全も改善。めまいや耳鳴りの症状もよくなっていきます。
手首ひねりは、指の第一関節をよく伸ばすことと、親指を人差し指にかけてしっかり添えることがポイントです。こうすることで、内在筋(手指の筋肉)を有効に使うことができます。頸椎に有効な刺激を与えることにつながるのです。
手首ひねりは朝晩の1日2セット実践するのがいいでしょう。睡眠時に首や肩の緊張が強くなると、朝起きたときにめまいが起こりやすくなります。寝る前に行い、首や肩の緊張を解いておくと、朝のめまい予防にも役立つはずです。
手首ひねりは、軽い症状であればその場でよくなる人もいます。そうでないかたも根気よく続ければ、1ヵ月半くらいで効果が現れるでしょう。
手首ひねりによって、めまいが改善した症例をご紹介しましょう。Kさん(当時63歳・女性)は、ふらつきやめまい、かすみ目などの症状に悩まされて来院されました。五十肩もあり、腕が上がりませんでした。
そこで手首ひねりを行ってもらったところ、その場で腕が上がるようになりました。さらにセルフケアとして続けてもらい、めまいやふらつきも改善できたのです。
手首ひねりは肩や首、手指の緊張、コリを緩めます。めまいに限らず、こうした悩みがある人にもお勧めですので、ぜひお試しください。
手首ひねりのやり方①
基本のやり方
※朝と晩の1日2セット行う。
※立って行っても、座って行ってもよい。
※痛くて出来ない人はやり方②へ

❶ひじを曲げずに両腕を真正面に伸ばす。手の甲を上にして、腕の角度を体から45度程度にする。親指以外の指は第1関節を伸ばし、親指は人差し指の第2関節に当てて、グッと拳を握る。

❷手首を下へ軽く曲げ、全部の指に力を入れてグッと握り、10秒キープする。その後、手首を外側へ軽くひねり、全部の指に力を入れて握り、10秒キープする。

❸手首をできるだけ下へ曲げ、親指、人差し指、中指に力を入れて握り、10秒キープする。その後、手首を外側へできるだけひねり、小指と薬指に力を入れてグッと握り、10秒キープする。
手首ひねりのやり方②
手首を下に曲げられない人
※朝と晩の1日2セット行う。
※立って行っても、座って行ってもよい。
❶前項「基本のやり方」の①と同様に腕を上げて拳を握る。

❷手首を上に軽く反り、全部の指に力を入れてグッと握り、10秒キープする。その後、手首を内側へ軽くひねり、全部の指に力を入れてグッと握り、10秒キープする。
拳を握れない人
※朝と晩の1日2セット行う。
※立って行っても、座って行ってもよい。
❶手のひらを上にして、前項「基本のやり方」の①と同様に腕を上げる。

❷手首を下へ軽く曲げ、10秒キープする。その後、右手は自分から見て反時計回り、左手は時計回りにひねって手の甲を内側に向け、10秒キープする。

この記事は『壮快』2022年5月号に掲載されています。
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