「野菜こうじ」をとれば、こうじその物の栄養素(ポリフェノール、ビタミン、ミネラル)に加え、組み合わせる野菜の栄養素もよりよい形で摂取できるのですが、なかでもお勧めしたいのが「タマネギこうじ」です。腸内環境を整える作用と血行促進作用で、高血圧や糖尿病など、生活習慣病の予防にもつながります。【解説】関由佳(内科医・メディカルフード研究家)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

関由佳(せき・ゆか)

内科医・メディカルフード研究家。2008年、山梨大学医学部卒業。専門は糖尿病内科、予防医学。学生時代から予防医学に興味があり、野菜ソムリエ、みそソムリエの資格を取得。食事で血糖値をコントロールする方法を学び、ダイエット外来や糖尿病治療にそのメソッドを応用し栄養指導を行う。2013年にニューヨークの料理専門学校に留学。著書に『腸と胃を整える食べるくすり やさい麹』(アスコム)ほか

「タマネギこうじ」は健康効果が豊富

花粉症対策に役立つ!ダイエット効果も!

私はふだんから、薬に頼らず、食べ物で健康な心と体をつくる「予防医学」に力を入れています。そして、医師として活動しながら、野菜ソムリエ、みそソムリエなどの資格を取り、診療に活かしてきました。 

そんな私が、「食べる薬」として皆さんにお勧めしている物に、「野菜こうじ」があります。野菜こうじとは、野菜とこうじを組み合わせて作る発酵調味料です。

こうじには、こうじ菌が持つ酵素によって、たんぱく質をアミノ酸に分解したり、でんぷんをブドウ糖に分解したりする働きがあります。これによって、栄養素が体内に取り入れやすくなるのです。

つまり野菜こうじをとれば、こうじその物の栄養素(ポリフェノール、ビタミン、ミネラル)に加え、組み合わせる野菜の栄養素も、よりよい形で摂取できる、というわけです。

野菜こうじには、いろいろなバリエーションがありますが、なかでもお勧めしたいのが「タマネギこうじ」です。

タマネギこうじの健康効果は大変豊富です。

第一に、腸内環境を整える作用があります。私は、健康のために最も大事なことは、腸内環境を整えることだと考えています。どんなに栄養のある物をとっても、腸内環境が乱れていては、消化吸収ができないからです。

こうじとタマネギ双方に含まれるオリゴ糖は、相乗効果で腸内環境を改善します。それにより、栄養がしっかり吸収できるようになれば、代謝アップや疲労回復、肌を整える効果などが得られます。

また、こうじ菌には、善玉菌を活性化して腸内環境をよくする作用もあります。

腸内環境がよくなれば、自律神経も整い、ストレスの軽減、ひいては胃の調子を整えることにもつながります。免疫力もアップするので、花粉症などのアレルギー対策にも役立つでしょう。

第二に期待できるのは、血行促進作用です。タマネギの有効成分には、ポリフェノールの一種であるケルセチン、辛み成分のもとになる硫化アリルがあります。

ケルセチンには傷ついた血管を修復し、血行をよくしたり、血栓を予防したりする働きがあるといわれています。

また硫化アリルは、空気に触れると「チオスルフィネート」という刺激成分に変わります。この刺激が、血管を広げて、血行をよくするといわれています。血行がよくなれば、代謝がアップし、体温も上がります。ダイエット効果も期待できるでしょう。

タマネギには血糖値の急上昇を防いだり、コレステロールを下げたりするのに役立つ食物繊維も含まれます。これらにより、高血圧や糖尿病など、生活習慣病の予防にもつながります。

このように、すばらしい健康効果が期待できるタマネギこうじ。作り方は、下項の図を参照してください。

関先生の「タマネギこうじ」の作り方

画像: 関先生の「タマネギこうじ」の作り方

材料
タマネギ(正味)…200g
米こうじ(乾)…50g 
塩…10g
水…大さじ2~3
※水の量は、タマネギの水分量によって調整する

タマネギをすりおろす。
ボウルに米こうじ、塩を入れてよく混ぜ、①を汁ごとすべて加える。
②をよく混ぜ、ラップをする。室温(20~25度)でひと晩おいて、発酵させる。
③を清潔な保存瓶に移す。こうじが浸る程度の水を加える。とろみが出て、味がまろやかになったら完成。 
※1日に1回混ぜる。冷蔵庫で1週間保存可能。冷凍保存も可能。

旨みや甘みが出て減塩もできる!

塩のかわりに「タマネギこうじ」を使うといい

タマネギをすりおろすのは、水分を出すことと、細胞壁を壊して中の栄養成分を出すことが目的。フードプロセッサーを使ってもかまいませんが、水分があまり出ないミキサーはお勧めしません。

20度ほどの室温があればひと晩で完成しますが、冬は発酵に2〜3日要するかもしれません。日を追うごとに甘みととろみが増していきます。このレシピでは、塩分濃度を低くしているため、例えば塩こうじなどと比べて、減塩でき、こうじもたくさんとれるというメリットがあります。

ポイントは、今までの料理の味つけにプラスするのではなく、塩のかわりにタマネギこうじを使うこと。そうすれば塩分のとり過ぎにはなりません。また、発酵することで旨みや甘みが出るので、化学調味料やみりん、砂糖を使わなくても、おいしく楽に味つけができます。

タマネギは和洋中どんな料理にも使われる食材だけあって、何にでも合います。スープに入れればコンソメなどを使わなくても旨みが出ますし、みそ汁のみそを減らしてタマネギこうじを加えても美味です。

健康効果への期待に加え、一度作れば、その便利さ、おいしさがわかるはずです。タマネギこうじを、ぜひ皆さんもお試しください。

画像: この記事は『壮快』2022年5月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年5月号に掲載されています。

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