解説者のプロフィール

内田泰文(うちだ・やすふみ)
豊中愛整骨院院長。柔道整復師。プライマリーウォーキング講師、ストレッチング協会会員、分子整合医学会員。治療技術の高さと、わかりやすい説明、親しみやすい人柄に定評があり、治療院には県外からも多くの患者が訪れる。
▼豊中愛整骨院
「足振り体操」で深部の筋肉を鍛えてポッコリ下腹が解消
コロナ禍の現在、多くのかたが運動不足に陥り、体の不調や関節の痛みなどに悩まされています。そうした皆さんにぜひお勧めしたいのが、「足振り体操」です。
この足振り体操は、重要なインナーマッスル(深部の筋肉)の一つである、大腰筋を強化することを目指すもの。では、なぜ、大腰筋の強化が必要なのか。ご説明しましょう。

大腰筋は、上半身と下半身をつなぎ、姿勢を保持するのに大きな役割を果たしている筋肉です。毎日同じ姿勢で長時間座り続けたり、運動不足が続いたりすると、大腰筋が弱ってかたくこわばり、短くなってきます。
短くなった大腰筋に引っ張られる結果として、骨盤が前や後ろへ倒れて、姿勢が悪くなります。姿勢がくずれれば、背中や腰にも大きな負担がかかり、腰痛などが起こりやすくなります。
また、骨盤が前傾すれば、下腹がポッコリと出て、体重が前方にかかりがちになります。すると、それがひざの負担となって、ひざ痛を引き起こします。大腰筋が短くなると、股関節の可動域も小さくなり、股関節痛が生じたり、歩幅が狭くなって転びやすくなったりもします。
足振り体操を行えば、大腰筋が鍛えられ、このような多くの不調や不具合を解消することができるのです。
「足振り体操」のポイント
詳しいやり方は下項を参照していただくとして、体操のポイントをまとめましょう。
まず準備動作で、足の親指のつけ根(母趾球)にしっかり体重を乗せること。これを怠ると、大腰筋に力が入りません。
そして、脱力することが重要です。足に力を入れて振り回すのではありません。リラックスし、力を抜いて、足の重さを利用して自然に振りましょう。
こわばって、短く縮んだ大腰筋は刺激が入りにくく、ほぐれにくくなっています。大腰筋を刺激するために、腰を使って足を振るようにイメージしてください。
足は体重の約15%もの重みがあります。ですから、腰を使って足を振ることで自然に負荷がかかり、効果的に鍛えられるのです。
左右の足を10回振るのを1セットとして、1日3セット、朝昼晩に行いましょう。高齢で、バランス感覚に自信を持てないかたは、転倒を避けるため、壁やイスの背につかまるなどしてください。
この体操は、腰痛があるときでも、激痛だったり、ひどい炎症を起こしたりしていないかぎり、行ってかまいません。脱力して足を振るだけですから、加減すれば、症状を悪化させることもないはずです。
ただし、人工股関節のかたや、変形性股関節症で急性期の痛みが出ているかたは控えてください。
座骨神経痛やO脚が改善転倒予防にも効果的
この体操を続けることで、大腰筋が強化され、姿勢がよくなってくると、さまざまな健康効果が期待できます。
一般的な腰痛や、座骨神経痛、脊柱管狭窄症、股関節痛、変形性ひざ関節症などにも効果があります。O脚やポッコリおなかの改善も期待できます。
血流が大きく改善するので、足のむくみや冷え症にも効果的です。さらに、転倒しにくくなるため、ケガの防止にもつながります。
最後に、体験例を紹介しましょう。
股関節痛がきっかけで来院された40代の女性Aさん。かなり重症で、整形外科では、両足の手術が予定されていました。それが、足振り体操を続けたところ、みるみるよくなり、手術を回避できて、たいへん喜んでいました。
60代の女性Bさんは、痛みで歩くのもつらい状況でしたが、足振り体操を続け、最近は5000歩以上歩けるようになりました。また、歩き方がいびつで、周りからも心配されるほどでしたが、最近では感心されるほどスムーズになっています。
足振り体操は、ただ足を振るだけのシンプルなものですが、効果は絶大です。ぜひお試しください。
足振り体操のやり方
※転倒に注意する。壁やイスなど、何かにつかまって行ってもよい。
※①~②を1セットとし、1日3セット、朝昼晩に分けて行う。
※母趾球に体重を乗せることを意識する。
❶左足のかかとが左手の指先に触れるくらいまで、後ろ側に持ち上げる。
❷足の重さを利用して、自然に前方へ振る。10回振ったら、右足も同様に行う。


この記事は『壮快』2022年5月号に掲載されています。
www.makino-g.jp