高いコーヒー豆の方がやっぱりおいしい?焙煎の程度や挽き方で味や成分はどう変わる?どんな健康効果が期待できる?ドリップとインスタント、薬効的にはどちらがよい?そして、ホントにおいしい淹れ方は?といった疑問に、「コーヒー博士」として知られる岡希太郎先生に答えていただきました。【解答】岡希太郎(東京薬科大学名誉教授)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

岡希太郎(おか・きたろう)

1941年東京都生まれ。東京薬科大学名誉教授、日本コーヒー文化学会副会長。東京薬科大学卒業、薬学博士(東京大学)。スタンフォード大学医学部留学。定年間近にコーヒー研究にはまり、コーヒーの効果について精力的に発信を続ける「コーヒー博士」。著書に『珈琲一杯の薬理学』(医薬経済社)、『がんになりたくなければ、ボケたくなければ、毎日コーヒーを飲みなさい』(集英社)などがある。

Q.コーヒーはどんな植物ですか? 主な産地はどこですか?

A.
コーヒーは、アカネ科の2m程度の低木です。近種にクチナシがあります。原産地はエチオピアの山中で、そこから世界各地に移植されました。

主な産地は、赤道を挟んで南北25度の範囲内の地域で、俗にコーヒーベルトと呼ばれます。日本では沖縄で作られています。

ちなみに、現在でも新種のコーヒーの木が見つかっています。中には、もともとカフェインが含まれていない品種もあるそうですよ。

画像: 木になったコーヒーの実

木になったコーヒーの実

Q.豆の種類の違いについて教えてください。高い豆の方が、やっぱりおいしい?

A.
コーヒー豆には、「アラビカ種」と「ロブスタ種」の2種類があります。

アラビカ種は、古くからある種類のおいしいコーヒー豆です。ブラジル、モカ、キリマンジャロなどの有名なコーヒーは、全てアラビカ種です(ちなみに、これらの呼び名は産地を示しており、品種の差を示すものではありません)。

ロブスタ種は比較的新しい種類で、アラビカ種に比べると味は劣りますが、大量生産が可能で、いろんなところで作られています。

日本のコーヒー専門店などで売られているのは、基本的にはアラビカ種で、ロブスタ種は「ブレンド」と書かれた市販のコーヒーなどに主に使用されています。

なお、値段の高いコーヒー豆の方が、基本的にはおいしいです。現在一番高いのは、パナマの「ゲイシャ」で、なんと1kg10000円もします。

近年、コーヒー豆の価格は値上がり傾向にあります。需要の増加と、地球温暖化などによる収穫量の減少、コロナ禍による人手不足などがその要因です。以前は1kg600円程度でしたが、現在は1000円程度になっています。

画像: アラビカ種

アラビカ種

画像: ロブスタ種

ロブスタ種

Q.コーヒー豆の焙煎の程度や挽き方で、味や成分はどのように変わりますか?

A.
浅煎りのコーヒーには、「クロロゲン酸」というコーヒーポリフェノールが多く含まれます。

クロロゲン酸は、コレステロール値の低下作用や食後血糖値を抑える作用などがあると報告されており、近年では特定保健用食品などにも使用されている成分です。

深煎りのコーヒーに特徴的な成分は、「ニコチン酸」です。

これは、ビタミンB3やナイアシンとも呼ばれる成分で、体内でのエネルギー産生に深く関わっているほか、脂肪代謝を改善して動脈硬化を防ぐアディポネクチンというホルモンや、善玉コレステロールを増やす作用があります。

ニコチン酸を含む食材はとても少ないので、ニコチン酸の摂取源としても、コーヒーは優れています(深煎りコーヒー1杯で5mgほど摂取できます)。

なお、浅煎りは苦味が少なく酸味の感じられるスッキリとした味わいで、焙煎度が高くなるほどコクや苦味が増し、濃厚な味わいとなります。また、粗挽きほどスッキリとした味になり、細かくなるほど苦味や雑味が増します。

画像: 焙煎の度合いで味や成分に変化が出る

焙煎の度合いで味や成分に変化が出る

Q.飲む都度挽いた方が成分的にはいいですか?上手な保存の仕方は?

A.
正しく保存しておけば、挽いた後も半月ぐらいは持ちます。コーヒーは酸素が大敵なので、なるべく酸素を抜いて密閉し、保存してください。

なお、家庭で保存する場合、コーヒー豆は缶に入れて密閉し、冷暗所におけば1年は持ちます。粉の場合も缶に入れて密閉して保存し、なるべく1ヵ月以内に使い切るようにしましょう。

コーヒー豆や粉を冷凍庫で保存している人もいるかと思いますが、品質保持の面から言うと、あまり意味がありません。

Q.ドリップとインスタント、薬効的にはどちらがよいですか?缶コーヒーでも薬効は期待できますか?

A.
コーヒーのさまざまな研究結果を見ると、インスタントコーヒーでも、ある程度の健康効果は期待できるようですが、個人的には、ドリップコーヒーがお勧めです。

缶コーヒーについては、データがないので不明です。

Q.1日にどのくらい飲むのがお勧めですか?

A.
1日3杯がお勧めです。多くても5杯までにとどめましょう。それ以上飲むと、体に悪影響があるというデータがあります。

なお、健康のためを考えるなら、ブラックで飲むのがお勧めです。ホットコーヒーでもアイスコーヒーでも、薬効的には大差ないので、お好みで。

画像: 1日3杯、ブラックがお勧め

1日3杯、ブラックがお勧め

Q.コーヒーにはどんな健康効果が期待できますか?

A.
がん予防や悪化防止、肝臓病の予防や悪化防止、動脈硬化の予防、糖尿病の予防・改善、ダイエット、シミ予防、腸内環境の調整などに役立つことがわかっています。

世界中でコーヒーの効果に関する研究がされていますが、どんな食文化の国においても、「コーヒーをよく飲む/飲まない」だけの違いで、有意な差(確率的に意味があると考えられる差)が出ている研究が多いのです。

このことから、私は「コーヒーさえ飲めば、世界のあらゆる食文化が、体にいいものになる」と考えています。まさに、コーヒーは健康長寿の源、というわけです。

Q.ドリップする場合、フィルターは何を使用するのがいいですか?

A.
コーヒーには、ジテルペン酸などの体によくない成分もいくつか入っています。これらを取り除くためには、ペーパーフィルターかネルフィルターを使用するのがお勧めです。

金属のフィルターや、フレンチプレスなどでは、体に悪い成分が漏れてしまう場合があります。

画像: ペーパーフィルターで淹れるとよい

ペーパーフィルターで淹れるとよい

Q.ホントにおいしい淹れ方を教えてください。

A.
味的にも成分的にもお勧めしているのが、「濃く淹れて薄める」方法です。

ちょっともったいなく感じるかもしれませんが、こうすると、手間をかけずに、雑味のないおいしいコーヒーが飲めます。しかも、コーヒーに含まれるよい成分だけを抽出できるのです。

お手持ちのコーヒーでも、こうして淹れると全く味が変わって驚くはず。ぜひお試しを!

材料(1杯分)
・コーヒー粉……10g
・お湯(80~90℃)…100ml程度

画像1: Q.ホントにおいしい淹れ方を教えてください。

ドリッパーにペーパーフィルターをセットし、コーヒー粉を入れる。お湯を10ml(湯がカップに少し落ち始めるくらい)注ぎ、そのまま少し蒸らす。

画像2: Q.ホントにおいしい淹れ方を教えてください。

お湯をさらに30ml程度注いで抽出する。

画像3: Q.ホントにおいしい淹れ方を教えてください。

②にお湯を加えて好みの濃さに薄める(加えるお湯の量は60mlが目安)。
※アイスコーヒーにしたい場合は、お湯ではなく氷を入れて薄める。

画像: この記事は『安心』2022年4月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年4月号に掲載されています。

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