コーヒーに含まれるポリフェノールは「クロロゲン酸」です。このクロロゲン酸も、赤ワインなどに含まれるポリフェノールと同様に、優れた抗酸化作用を持っています。インスタントやノンカフェインのコーヒーにも含まれているそうなので、カフェインが気になる人は、ノンカフェインコーヒーを試すとよいでしょう。【解説】大谷義夫(池袋大谷クリニック院長)

解説者のプロフィール

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大谷義夫(おおたに・よしお)

池袋大谷クリニック院長。1963年東京都出身。89年群馬大学医学部卒業。東京医科歯科大学医学部附属病院、九段坂病院、 米国ミシガン大学留学等を経て、2009年、東京医科歯科大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授。同年池袋大谷クリニックを開院。医学博士。日本呼吸器学会専門医・指導医。日本アレルギー学会専門医・指導医。呼吸器内科のスペシャリストとして、テレビ、新聞、雑誌などへの出演や著書も多く、わかりやすい解説が好評。『絶対に休めない医師がやっている最強の体調管理 コロナ対応版』(日経ビジネス人文庫)など、著書多数。
▼池袋大谷クリニック

体調管理に「1日3杯のコーヒー」

ぜんそくの発症リスクが28%低いという報告も

私はこの30年以上、ほとんど病気をしたことがありません。その理由は、私が「絶対に休めない医師」だからです。

私のクリニックは、繁華街のど真ん中にある呼吸器内科。セキや呼吸困難、発熱などの急な不調で来院する患者さんが少なくありません。私が休むと代わりに診察できる医師はいないため、私は「絶対に休めない」というわけです。

長年休まずに済んだのは、「科学的に正しい体調管理」を、ただひたすらに実践しているからでしょう。「1日3杯のコーヒー」も、そんな体調管理の一つです。

少し前まで、コーヒーは「飲み過ぎると胃を悪くする」「子どもの成長によくない」といったマイナスなイメージを抱かれていました。しかし近年、コーヒーの健康効果について、数多くの研究が報告されています。

例えば、2015年には、国立がん研究センター予防研究グループが、コーヒーを1日3~4杯飲んだ人の死亡リスクは、全く飲まない人に比べて24%低いと報告しています。

画像: コーヒー摂取と全死亡リスク(国立がん研究センター予防研究グループの発表より)

コーヒー摂取と全死亡リスク(国立がん研究センター予防研究グループの発表より)

これは、日本で行われた大規模コホート調査(ある集団を長期間追跡し、生活習慣などと病気の発症との関連を調べる調査)の結果で、心疾患や脳血管疾患、呼吸器疾患などによる死亡リスクも、コーヒーを1日3~4杯飲む人は低かったそうです。

画像: コーヒー摂取と死因別死亡リスク(国立がん研究センター予防研究グループの発表より)

コーヒー摂取と死因別死亡リスク(国立がん研究センター予防研究グループの発表より)

この結果は、コーヒーに多く含まれているポリフェノールによるものでしょう。

ポリフェノールは植物の苦味や渋味、色素などに含まれる成分です。人間の体内では、病気や老化と関連がある活性酸素から体を守ってくれます(抗酸化作用)。赤ワインが生活習慣病の予防によいといわれているのは、このポリフェノールを多く含んでいるからです。

赤ワインのポリフェノールの含有量は100g中230mg。一方、コーヒーのポリフェノール含有量は100g中200mgで、赤ワインに引けを取りません。

コーヒーに含まれるポリフェノールは「クロロゲン酸」です。このクロロゲン酸も、赤ワインなどに含まれるポリフェノールと同様に、優れた抗酸化作用を持っています。

コーヒーに含まれているカフェインも、気管支を広げて炎症を抑え、呼吸をらくにする効果が期待できます。

インドの一部の地域では、昔からひどいセキにはコーヒーを治療に用いていたそうです。少し前の話になりますが、1980年代のイタリアでは、1日に3杯以上のコーヒーを飲む人は、全く飲まない人よりも、ぜんそく発症リスクが28%低いという研究報告がありました。

インスタントでも抗酸化作用は期待できる

こうした報告を知ってから、私はもともと好きだったコーヒーを、体調管理のためにも意識して飲むようになりました。

私の場合、コーヒーは朝食の際に1杯、昼食後に1杯、午後に1杯を飲んでいます。普段は、ドリップコーヒーをブラックで飲んでいますが、ときにはそこへハチミツを加えたり、夏はアイスコーヒーにしたりするなどして、楽しんでいます。

仕事の前にコーヒーを飲むと、カフェインの覚醒効果で仕事の効率が上がるのも、うれしい点です。

健康維持のためにコーヒーを飲むのであれば、1日に3~5杯がお勧めです。ミルクは好みで加えてください。砂糖は、生活習慣病の予防としてはあまりお勧めしません。

抗酸化作用のあるクロロゲン酸は、インスタントやノンカフェインのコーヒーにも含まれているそうです。カフェインが気になる人は、ノンカフェインコーヒーを試すとよいでしょう。

夕方より前に飲むのがおすすめ

なお、コーヒーは夜遅い時間に飲むと、カフェインの覚醒作用によって睡眠が妨げられます。夕方よりも前に飲むのがお勧めです。

これに加えて、コロナ禍の今は、免疫力(病気に対する抵抗力)を高める生活習慣も心がけるようにしましょう。

免疫力を高める基本は、十分な睡眠と、規則正しい食事、軽度の運動習慣です。睡眠時間が6時間を切ると、カゼの発症リスクが4.2倍になるといわれています。食事は、朝食を抜く生活を続けていると、死亡リスクが高まるという報告があります。運動は、体力に負担のない範囲で続けてください。

画像: この記事は『安心』2022年4月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年4月号に掲載されています。

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