解説者のプロフィール

市野さおり(いちの・さおり)
コンフィアンサせき鍼灸院セラピスト・看護師、国際茶藝会薬膳・中国茶課程修了士。英国ITEC認定アロマセラピスト・リフレクソロジスト。看護師としての経験を活かし、自然代替療法との組み合わせによる健康改善を推奨指導。統合医療ナースとして、臨床現場から講演など広く活動。『カラダの不調を整えるスパイス白湯』(宝島社)など著書多数。
▼コンフィアンサせき鍼灸院
ガス腹を解消する「黒コショウ白湯」とは
ウサギのフンのようなコロコロ便を一掃
おなかにガスがたまって張った感じがしたり、やたらとおならが出たりして、悩んでいる方は少なくないと思います。そんな方に試していただきたいのが、ここでご紹介する「黒コショウ白湯」です。
胃腸の働きが悪くて食欲不振や胃もたれがある方や、過敏性腸症候群などのストレスが関係して便通に問題がある方にもお勧めです。
作り方はとても簡単です。カップに粗びきの黒コショウを2振り、ローリエの葉を1枚入れて、熱湯100mlを注いでからかき混ぜます。さらに、小皿などでふたをして5分蒸らしたら出来上がりです。なお、ローリエの葉には料理バサミで切れ目を入れておくと、成分が抽出されやすくなります。
ローリエのほんのりと甘い香りと黒コショウのピリッとした風味が漂い、スープのような感覚で意外とおいしく飲めると思います。
まず、実際に飲んだ方の例をご紹介しましょう。
80代の女性Aさんは食欲が湧かず、あまり食べていないのに、おなかがポッコリ張り出して、周りの人から「太った?」と聞かれることが増えたと言います。試しに腹部を軽くたたいてみると、ポンポンと鼓を打つような音がします。これは病院の診察でも行う方法ですが、おなかにたくさんガスがたまっている証拠です。
そこで、黒コショウ白湯をお勧めしたところ、すぐにおなかにガスがたまらなくなり、その後、ストンとおなかもやせられたそうです。
50代の女性Bさんは、便がコロコロとウサギのフンのようで、排便後も出切らない不快感がありました。また、おなかも張って、ガスがたまっている感じがするとお悩みでした。彼女は精神的に不安感が強く、少し拒食症気味のようでもありました。
もともと食べていないから便が出ないのですが、無理に食べるようにと言っても抵抗感が強いと考え、まず黒コショウ白湯を飲んでもらうようにしました。すると、便通が改善し、おなかの不快感も一掃したのです。夜もよく眠れるようになったと言います。次第に食欲も回復し、その後とても元気になっていたのが印象的です。
黒コショウ白湯をおすすめする理由
白湯の温め効果とスパイスの作用が効く
さて、こうした効果があるのはなぜでしょうか。
まず、白湯を飲んでおなかを温めること自体に、よい効果があります。特に、冬場は気温の低下によって体の「冷え」を招き、腸の働きが停滞しやすくなります。
体が冷えると自律神経の交感神経(心拍数や血圧を上げるなど全身の活動力を高める神経)が優位になり、腸の運動が抑えられるとともに、血管が収縮して腸に向かう血液量も少なくなるため、腸の働きが悪くなるのです。
また、小腸の粘膜には栄養素を効率よく吸収するために、「絨毛(じゅうもう)」という無数の細かな突起があります。絨毛の細胞は活発に新陳代謝しており、通常は24時間くらいで生え変わっています。この腸からはがれ落ちた絨毛の細胞は、便の固形成分の3分の1くらいを占めます。
ところが、体が冷えるとこの代謝が悪くなり、最大で48時間ほどかかるようになってしまうのです。その結果、栄養の吸収や便を作る働きも低下すると考えられます。
白湯を飲んで腸を温めることで、こうした問題を解消できます。また、水分をとると大腸で吸収しようとするため、腸の蠕動(ぜんどう)運動(腸が内容物を肛門の方へ送る動き)も活発になります。
そこに、スパイスの効果が加わります。黒コショウに含まれる「ピペリン」には、血行をよくしたり、消化吸収の働きを高めたりする作業があり、体を温めて、エネルギー代謝を促進する効果があります。
ローリエに含まれる「シネオール」や「リナロール」といった香り成分も、血流や消化を促進してくれます。シネオールは肺の機能を高めます。
こうしたスパイスの作用が、気持ちを落ち着けるとともに、腸の働きを正常化させることにも役立つわけです。
黒コショウ白湯は1日に1~2杯、食間(食事と食事の間)の空腹時に飲んでいただくのがお勧めです。寝つきの悪さを感じている人は、寝る前に飲むのもいいでしょう。
なお、もしローリエがなければ、黒コショウだけでも一定の効果が期待できます。外食の際には、お湯と黒コショウだけ用意し、食前に飲んでおけば食後のおなかの張りや不快感を予防するのに役立ちます。
黒コショウ白湯の作り方

用意するもの(4人分)
・ローリエ…1枚
・お湯…100ml
・黒コショウ…2振り
❶ローリエにハサミで4ヵ所ほど切り込みを入れる。切り込み位置や長さは自由。
❷コップに全ての材料を入れ、小皿などでふたをして5分ほど蒸らす。色がほんのり黄色味を帯びていれば出来上がり。
飲み方
1日1~2杯、食間などの空腹時に飲むと効果的。寝つきが悪い人は、寝る前にのものむよい。
もしローリエがなければ、黒コショウだけで作る。

この記事は『安心』2022年4月号に掲載されています。
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